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自社の企業価値を知る、高める

株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔

第4回M&Aと企業価値~選択肢を広げて考える

1.M&Aと企業価値

最終回となる今回は、企業価値を高めるための手段としてのM&Aについて考えてみたいと思います。 M&Aは、(1)選択と集中により、生産性や効率が上がる~シナジー効果、(2)早くて確実に事業を手にすることができる~時間を買える点で、企業価値を高めるための有効な手段といえます。1973年創業の日本電産は、これまでに30件の企業買収を行い、20年間で時価総額を約8倍にも増加させました。このように、M&Aを活用することで、企業価値を高めることができ、また、企業価値を高めることで、買収の選択の幅も広げ、有利にM&Aを進めているといえます。

2.最近の事例

また、最近では、CCCや幻冬舎に見られるように、企業価値向上を目的とした、経営陣が参加する買収である(上場廃止型の)MBO (マネジメント・バイ・アウト)が増えてます。これらのケースは、企業価値が正しく反映されていないために、経営者がプレミアムを払っても買収するという場合に行われるMBOです。その結果として、短期的な株価変動や株主の利益配分などのプレッシャーから解放され、長期的な視点での経営に専念することにより、企業価値を向上させることができるのです。例えば、2005年に160億円でMBOを成功させたポッカに対して、2011年2月には、220億円でサッポロが買収するという報道がありましたが、こちらも、企業価値を向上させた例といえます。

図1:最近の主なMBO案件

その一方、企業価値の評価をめぐって、M&Aが破談になってしまうケースもありました。 たとえば、サントリーとキリンの統合。実現したら、シナジーによる企業価値の向上がかなり見込まれたかもしれませんが、残念ながら破談となってしまいました。サントリーは、創業一族が9割保有する未公開企業です。当時、サントリー側は、自社のブランド価値を考慮して欲しいとの考えから、サントリー株1:キリン株0.9を主張。一方のキリン側は、キリン株1:サントリー株0.5を主張し、両者はかみ合いません。ここでポイントとなったのは、サントリーの89.33%を保有するサントリーの創業家の資産管理会社の寿不動産です。

3分の1超の株式を握ることになれば、寿不動産が株主総会で重要事項を拒否できることになります。仮に、キリン株1:サントリー株0.5で計算すると、寿不動産が89.33%×0.5/(1+0.5)=29.7%で、ギリギリ重要事項を否決できないことになります。このため、新会社の3分の1超の株式をサントリー創業一族が保有することを許すのか、許さないのか、企業価値の評価とともに、争点になりました。

3.真の企業価値の向上

企業価値をめぐってM&Aが暗礁に乗り上げることは枚挙にいとまがありません。そのような中で、M&Aを数多くの成功させ、企業価値を向上させ続ける日本電産の永守社長によれば、企業価値が下がってしまう原因は、経営者と労働者との対話がなく、労働意欲が下がってところにあるいいます。すなわち、社員に意識改革を促し、理解が得られるまで膝を突き合わし、無駄を徹底的に排除すれば企業価値は高めることができるということです。 企業価値を高めるためのM&A。しかし、実際には、失敗するケースが多いのは、短期的な企業価値の向上という目的にとどまっているからだとも思えます。では、企業価値を真の意味で向上させるためには、どのようにしたらよいでしょうか。それには、長期的視点に立ち、未来への投資を行うとともに、社員、そしてグループ企業が一体となり、お客様の方向を向いて、継続的にキャッシュ・フローを生みだす。このような健全な経営こそが、株主をはじめとする利害関係者にとって多くのプラスをもたらし、企業価値を向上させることになるのではないでしょうか。

プロフィール

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
[略歴]
朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
[著書・訳書など]
『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
[URL]
http://ownersbrain.com/

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