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アジア進出に関する法務のポイント

三宅・山崎法律事務所 弁護士 中山 達樹

第1回アジア主要国の労働法の特徴

1.はじめに -解雇法制の重要性-

日系企業がアジア各国に進出する際、現地の法律に基づき、現地の人々を雇うことになります。その際に、言語や文化背景が異なる民族と関わる以上、各国の特徴を踏まえて慎重に労務管理をする必要があります。

もっとも、いくら慎重に労務管理をしても、会社の意に沿わない現地労働者の首を切らなければならない場合もあります。そのため、どのような場合に労働者を解雇できるか、つまり、その国がどのような解雇法制を有しているかが、アジアに進出する日系企業にとって大きな問題です。

東南アジア主要6か国における労働法の特徴を、解雇法制の観点からまとめると、以下のとおりです。

2.シンガポール

シンガポールの魅力は、マーライオン、マリーナベイサンズ、安い法人税(17%)だけではありません。日本と異なり、解雇に正当理由が不要なため、労働者を解雇しやすいというメリットがあります。これは、労務リスクを低くして外国企業を誘致しようとするシンガポールの国策に基づいています。

そのため、日本企業にとってみれば、気に食わない労働者を容易に解雇できるのですから、安心してシンガポールに進出することができます。また、シンガポールでは、退職金規定が別途あればそれに従った退職金の支払が行われるものの、日本と同様、法定の解雇手当という制度はありません。

3.タイ・マレーシア

タイやマレーシアには、日本と比べて、解雇法制に大きな特徴はありません。

まず、解雇をするためには、日本と同様、正当な理由が必要となります。また、解雇をする際に、政府や裁判所等の機関の承認が別途必要になるわけでもありません。この点でも日本と同様です。

このように、タイとマレーシアの解雇法制は、日本と同様に考えることができます。もっとも、マレーシアでは、日本と異なり、法定の解雇手当を支払う必要がありますし、新しい労働者から先に解雇するというLast in First Out 原則もあります。

4.インド・インドネシア・ベトナム

インド、インドネシア及びベトナムの解雇法制は、日本とは異なった特徴をもっています。

まず、インドでは、一定の労働者の解雇には政府機関の承認が必要となりますし、新しい労働者から先に解雇しなければならないという Last Come First Go原則もあります。

また、インドネシアでも、解雇のために裁判所の決定が必要となります。
さらに、ベトナムでは、解雇理由が法定されており、また、懲戒解雇のために労働組合の許可が必要となります。

これらの規定はいずれも日本になく、解雇を困難にしています。中でも、インドとインドネシアでは特に解雇が困難と考えられています。これらの国の裁判制度は信頼性が低いので、結局「お金」による紛争解決を余儀なくされることも多いです。

プロフィール

三宅・山崎法律事務所 弁護士 中山 達樹
[所属・役職]
三宅・山崎法律事務所 弁護士
[略歴]
平成10年 3月 東京大学法学部卒業
平成17年10月 第一東京弁護士会登録
平成19年 4月 三宅・山崎法律事務所入所
平成22年 6月 Drew & Napier LLC(シンガポール法律事務所)勤務
平成22年 7月 シンガポール国立大学法学部大学院(Asian Legal Studies)卒業
平成23年 6月 三宅・山崎法律事務所復帰
[弁護士会・公職等]
第一東京弁護士会
環太平洋法曹協会(Inter-Pacific Bar Association; IPBA(www.ipba.org))
日本プロ野球選手会公認選手代理人
[著書・論文等]
シンガポールの紛争解決-『民事訴訟』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年2月号掲載)
シンガポールの紛争解決-『商事仲裁』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年3月号掲載)
『アジア労働法の実務Q&A』商事法務,2011年
[URL]
http://www.mylaw.co.jp/

[バックナンバー]アジア進出に関する法務のポイント

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