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アジア進出に関する法務のポイント

三宅・山崎法律事務所 弁護士 中山 達樹

第4回インド・インドネシア・ベトナムの労働法の特徴

1.はじめに

インド、インドネシア及びベトナムは、最近日系企業の投資先としてとても人気です。しかし、これらの国の労働法制・労働実務は、日系企業から見て非常に扱いにくいため、注意が必要です。

まず、これらの国は、(シンガポールと異なり)解雇のためには正当な理由が必要で、(日本と異なり)解雇手当の支払義務がある点で共通します。この点で、アジアでは比較的に厳しい労働法制をもっているといえます。それ以外に、以下のような特徴があります。

2.インド労働法の特徴

まず、インドは、28の州や連邦直轄地からなる連邦国家ですので、連邦法のみならず、各州の法律に配慮することが必要です。

また、以下のような特殊な規定があるため、一般にインドにおける労働者の解雇は困難と考えられています。

  • (1)大規模工場における単純労働をしている(経営者的立場にない)労働者を解雇するには、政府機関の承認が必要となります。
  • (2)同種部門においては、新しい労働者から先に解雇しなければなりません(Last Come First Go原則)。

さらに、会社が新規雇用を行う場合、解雇された労働者に対してまず再雇用の機会を提供しなければなりません。

3.インドネシア労働法の特徴

インドネシアは、アジアでも総じて解雇が最も困難な国ということができ、まず、解雇(懲戒解雇を含む)には裁判所の決定が必要となります。

また、解雇するには原則として事前に労働者に対して警告書を交付しておくことも必要になります。

さらに、懲戒解雇の場合でさえ労働者に解雇手当を支払わなければならないのみならず、厄介なのは、他国でも概ねそうですが、法定の解雇手当のみで満足する労働者が多くないということです。そのため、解雇をする場合は、法定の解雇手当を上回る金額を支払うことを覚悟せざるを得ないことが多いです。

また、インドネシア人は、植民地化された歴史が長いため国民性として面従腹背が習慣になっていると言われ、また、イスラム系の労働者はとても家庭を大事にします。この点で、会社に対する忠誠心が高く時にワーカホリックになる日本人とは価値観が大きく異なるため、日々の労務管理においては特別な配慮が必要となります。

4.ベトナム労働法の特徴

どのアジア諸国でも経済レベルの上昇に伴い人件費は上がっていますが、特にベトナムでは、人件費の高騰が他の国よりも大きな問題として取り上げられています。

ベトナム労働法は、改正が予定されておりますが、現行法の特徴としては、解雇のために労働組合の同意が必要となる点が挙げられます。このように労働組合に大きな役割が与えられているのは、ベトナムが社会主義国家であることが理由として挙げられます。

また、ベトナムでは近年、日系企業に対するスト(ほとんどは違法スト)が増えています。そのため、ストを抑止すべく、日ごろから労働者の不平不満を吸い上げて良好な労使関係を構築しておくことが特に望まれます。

5.まとめ

以上4回にわたり、アジアの主要6か国の労働法について簡単に解説しました。

進出・撤退及び日々の労務管理においては、安易に日本のやり方を踏襲することなく、現地の労働法・労働実務を尊重した上で、現地の法律の専門家に相談することが望ましいといえます。

プロフィール

三宅・山崎法律事務所 弁護士 中山 達樹
[所属・役職]
三宅・山崎法律事務所 弁護士
[略歴]
平成10年 3月 東京大学法学部卒業
平成17年10月 第一東京弁護士会登録
平成19年 4月 三宅・山崎法律事務所入所
平成22年 6月 Drew & Napier LLC(シンガポール法律事務所)勤務
平成22年 7月 シンガポール国立大学法学部大学院(Asian Legal Studies)卒業
平成23年 6月 三宅・山崎法律事務所復帰
[弁護士会・公職等]
第一東京弁護士会
環太平洋法曹協会(Inter-Pacific Bar Association; IPBA(www.ipba.org))
日本プロ野球選手会公認選手代理人
[著書・論文等]
シンガポールの紛争解決-『民事訴訟』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年2月号掲載)
シンガポールの紛争解決-『商事仲裁』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年3月号掲載)
『アジア労働法の実務Q&A』商事法務,2011年
[URL]
http://www.mylaw.co.jp/

[バックナンバー]アジア進出に関する法務のポイント

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