NIKKEI

トップ>企業マネジメント最新トレンド>経営者が知っておきたい知的財産の知識

経営者が知っておきたい知的財産の知識

廣瀬国際特許事務所 代表弁理士 廣瀬 隆行

第4回ビジネスのグローバル化と知財戦略

1.外国特許なんていらない?

私の顧問先の一つに昨年上場したベンチャーがある。そのベンチャーの特許戦略は、上場までは日本にしか特許出願しないというものである。その理由は、競合他社が日本で製造できない製品を作るとは考えられないので、日本だけでしっかりした特許が存在すれば十分というものである。

勿論、この考え方は全ての業種には当てはまらない。しかし、外国で特許を取得して、有効に活用できている中小企業は決して多くない。そうであれば、外国出願をあえて行わず、その費用を生かして国内の特許網を盤石にすることも傾聴に値する知財戦略といえる。

2.国際特許出願の売り込み

一方、戦略的に海外で特許を取得する中小企業も存在する。国際特許出願(PCT出願)は、日本の特許庁に日本語で提出することができ、特許庁に支払う費用は、通常30万円弱である。国際出願は、最初の出願の日から30ヶ月以内に翻訳して、権利化したい国へ申請をする必要がある。この30ヶ月をただ待っている手はない。国際出願をすると比較的早い段階で特許が取れそうか否かを示す見解書が得られる。このため、事前に興味のありそうな企業や団体を調査しておいて、見解書を入手し次第、譲渡交渉を行うことは大変有益である。そうすると、ある国についての権利を売却することで、他の国の費用を賄える場合もある。

3.審査ハイウェイ注1

外国出願をする際に考慮しなければならないのは、出願の際の費用だけではなく、特許になるまでの費用と、特許になった後の費用である。審査ハイウェイを簡単に説明すると、国際出願の見解書が特許を取得できるものである場合や、日本で特許査定された場合に、すでになされた審査結果を考慮して早期に審査をしてもらえる制度である。この制度を利用した場合の特許化率は通常よりも高い。このため、特許になるまでの費用を軽減するためにも、審査ハイウェイを利用して早期に審査を進めることは有益といえる。

4.助成金注2

中小企業が外国出願することに対して、助成金を出している自治体は少なくない。たとえば、東京都は、国際特許出願の費用を含め、海外出願に対して最大300万円の助成を行っている。当所でも顧客の助成金申請書類の作成を行い、毎年助成金が認められている。この助成金を有効に活用すると、海外出願をしやすくなる場合がある。

5.ブティック事務所

海外出願といえば、大変費用がかかる場合が多い。その理由の一つは、日本企業や日本の特許事務所が、いわゆる高級ブティック事務所(規模の大きなローファーム)に出願を依頼する傾向が強いためである。実は海外の事務所の中には比較的リーズナブルでサービスの質が高い事務所も多い。案件ごとに適切な海外事務所を選ぶことは有益である。

6.商標の事前調査

特許と同様、商標も各国ごとに別々の権利として発生する。したがって、日本で商標権を取得できても、海外では他人が商標権を持っているという事態は多々起こる。商標権を侵害するか否かは容易に判断できるため、海外進出をする際には、事前に将来進出する可能性のあるすべての国について商標調査を行い、商標権を取得しておくことが望ましい。

注1審査ハイウェイについては、以下のURLを参照
http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/patent_highway.htm

注2たとえば、平成24年度第1回目の東京都の外国出願助成金の申し込みは、平成24年5月7日(月)~5月18日(金)までである。助成金の申請には、特許事務所の発行した見積り等が必要である。詳細は、下記URLを参照。
http://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/josei/3779.html

プロフィール

廣瀬国際特許事務所 代表弁理士 廣瀬 隆行
[所属・役職]
廣瀬国際特許事務所 代表弁理士 廣瀬 隆行
知的財産関係専門委員
[略歴]
東京大学大学院広域科学専攻 修士課程修了。大手企業の知的財産部勤務,阿部・井窪・片山法律事務所を経て現職。
多数の知的財産事件に関与する他,複数のベンチャー,上場企業の顧問に就任し,有益な知的財産戦略の立案や知的財産管理,技術移転を行っている。特許出願は,情報通信,光学,医薬・バイオ,医療機器,化学・食品,機械,画像処理など幅広い分野について行っている。また,多くの特許無効審判,審決取消訴訟,侵害訴訟,訴訟前交渉を行うほか,特許無効や特許権侵害の有無に関する鑑定書を作成している。出願実績国は50カ国を超えるなど世界中の代理人とも良好な提携関係を築き,クライアントにリーズナブルで的確な外国特許サービスを提供している。大企業や中小企業に対し,知的財産教育に関する講演を頻繁に行っている。
[著書]
企業人・大学人のための知的財産権入門-特許法を中心に-東京化学同人
不正競争防止法 東京リーガルマインド出版
著作権法 東京リーガルマインド出版(共著)
最新中小企業経営者必携ハンドブック 日本商工経済研究所(共著)
裁判所法等の一部を改正する法律の解説-発明協会(共著)
実務 審決取消訴訟入門 民事法研究会(共著)
実務家のための知財判例 70選 発明協会(共著)
[URL]
廣瀬国際特許事務所

[バックナンバー]経営者が知っておきたい知的財産の知識

企業マネジメント最新トレンド 一覧へ

日経産業新聞 ビジネス動画 動画で見る、話題の新製品・先端技術 詳しくはこちら

日本大学 通信教育部

月間アクセスランキング

  1. 企業マネジメント最新トレンド
    グローバルに対応しうる事業戦略とは
  2. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の具体的な改正内容とその対応のスケジュール
  3. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正を契機としたISOの活用方法
  4. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正における具体的な取組み方法
  5. 企業マネジメント最新トレンド
    企業価値とは何か。経営にどう影響するのか

日経産業新聞ピックアップ

2017年8月21日付
  • NCD、ネット広告枠、サイトで売買、好みのメディア選べる
  • 在庫管理、無人で安く PALが倉庫にロボ
  • バイオマス発電所新設 エフオン、20年メド2カ所
  • ダイセル・エボニック 自動車の軽量部品製造 コスト6割減
  • ペットのトイレ、12時間消臭 室内犬用 ユニ・チャーム

経営喝!力 ビジネスIT活用index