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企業のグローバル化をサポートする国際税務の基礎知識

東京共同会計事務所 税理士 水谷 美奈子

第2回海外子会社等を設立する場合の検討事項(1)(タックス・ヘイブン対策税制)

1.タックス・ヘイブン対策税制とは

タックス・ヘイブン(Tax Haven)は租税回避地と訳すことができます。一般的には無税もしくは税負担が極めて低い国・地域のことを言います。例えば日本法人がタックス・ヘイブン国・地域に子会社を設立し、そこで稼得した利益を長期にわたり日本親法人に分配せず、留保しておくことにより税負担の回避を行うことが可能と考えられます。こういった租税回避行為に対処することを目的として日本でも昭和53年にタックス・ヘイブン対策税制が創設されました。

前回、海外進出形態として子会社をとった場合に、進出先がいわゆるタックス・ヘイブン国・地域に該当する場合には、日本法人での現地所得の合算課税が必要となるケースも多いので注意が必要ということに触れました。タックス・ヘイブン対策税制は「外国子会社合算税制」とも言われます。

具体的には「特定外国子会社等」(次項で説明します)の適用対象金額(簡単に言うと特定外国子会社の各事業年度の決算による所得金額に日本の税法上定めた計算・調整を加えた金額になります)のうち、株主である日本法人の保有する株式等に対応する部分の金額(課税対象金額)をその日本法人の収益の額とみなして、その日本法人の課税所得に合算するという税制です。(租税特別措置法第66条の6・1項)
(図1を参照ください)

例えばアジアですと、シンガポールや香港などに作った法人が合算課税の対象になる可能性がありますのでご留意いただければと思います。

2.特定外国子会社等とは

上記で触れたように日本の法人税法上は「特定外国子会社等」がタックス・ヘイブン対策税制の適用対象となりますが、特定外国子会社等を図で説明すると下記のようになります。

3.適用対象となる内国法人

特定外国子会社等の発行済株式数のうち、内国法人(日本法人)の有するその特定外国子会社等の直接及び間接に保有する株式数の占める割合が10%以上である内国法人となります。
よって特定外国子会社等の株式保有割合が10%未満である内国法人はタックス・ヘイブン税制の適用は受けないことになります。

4.適用除外について

図2にも示しましたが、特定外国子会社等に該当したとしても、下記の(1)~(4)の適用除外要件をすべて満たす場合は適用対象金額の合算課税は必要なくなります。(租税特別措置法第66条の6・3項)

タックス・ヘイブン国・地域に進出する際には、この適用除外要件を検討することも重要になると考えます。

【適用除外要件】

(1)事業基準 株式等の保有等を主たる事業とするものでない。
株式等の保有を主たる事業としても、2つ以上の他の外国法人の事業活動の総合的な管理調整を行う等の「統括業務」を行う場合は事業基準を満たします。
(2)実態基準 本店所在地に主たる事業を行うのに必要な事務所、店舗、工場その他の固定的施設を有していること。
(3)管理支配基準 事業の管理、支配及び運営を自らが行っている。
(4)-1 非関連者基準
(卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業)
主として特定外国子会社等の関連者以外の者と取引していること。
(4)-2 所在地国基準
(上記(4)-1以外の業種)
主として所在地国で主たる事業を行っていること。

5.資産性所得の合算課税

しかし上記のような適用除外の要件を満たす特定外国子会社等であっても、平成22年税制改正により、配当、利子、株式等の譲渡による所得、特許権等の使用料及び船舶・航空機の貸付等の資産を運用することにより生じる所得(「特定所得」といいます)がある場合には、株主である日本法人の保有する株式等に対応する部分の金額をその日本法人の収益の額とみなして、その日本法人の課税所得に合算することになりました。(租税特別措置法第66条の6・4項)

この資産性所得の合算課税に関しては、少額の場合の非課税措置もあります。(租税特別措置法第66条の6・5項)

6.特定外国子会社等からの受取配当の税務上の取扱

最後に特定外国子会社等からの受取配当金について触れておきます。株主である日本法人が発行済株式数または出資の25%以上保有している等の「外国子会社からの受取配当等の益金不算入」(法人税法23条の2)の要件を満たしていない場合は、「特定課税対象金額」として日本法人で既に合算課税された金額に達するまでの配当金は100%益金不算入となりますが、「特定課税対象金額」を超えた部分は100%益金算入となります。(租税特別措置法第66条の8)

表1は外国法人からの受取配当の法人税法上の取扱を簡単にまとめたものになります。

プロフィール

東京共同会計事務所 税理士 水谷 美奈子
[所属・役職]
東京共同会計事務所 税理士
[略歴]
清新税理士法人(旧石渡・西村・中根共同事務所)を経て現職。
企業再編関連業務(ストラクチャー構築に係る税務アドバイス、税務デュー・デリジェンス等)、国際取引に係る税務アドバイス、連結納税関連業務 等
[著書]
『役員報酬をめぐる法務・会計・税務』2008年10月(共著、清文社)
[URL]
東京共同会計事務所

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