NIKKEI

トップ>企業マネジメント最新トレンド>企業のグローバル化をサポートする国際税務の基礎知識

企業のグローバル化をサポートする国際税務の基礎知識

東京共同会計事務所 税理士 水谷 美奈子

第4回知っておくべき諸外国の税制度の特徴

1.進出国の選定における税制の位置づけ

これまでの3回で、日本企業が海外進出をするにあたり、知っておくべき日本における基本的な税務の概略を見てきました。実際に企業がどの国に進出するのかは、現地での納入先の有無や需要見込、良質で安価な労働力の確保の可能性、原材料調達・製造・物流コスト等の理由により必然的に決まってくることのほうが多いかもしれません。また日本と諸外国とのFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)により関税等の貿易障壁の撤廃・緩和がなされることが、海外進出の後押しとなることもあるでしょう。

これらに加えて諸外国の中には海外からの進出企業に対し税制の優遇を設ける国々も存在します。企業にとって効率的な海外投資を実現するに当たっては、そのような現地の税制を考慮して事業戦略を検討することも必要になってくるものと思います。

2.アジア諸外国の法人税率

経済産業省の平成24年5月公表の「海外事業活動基本調査」によれば、日本の中堅・中小企業が新たな進出先国として検討している地域は、中国を含めたアジアが大半となっています。
下記の表は主なアジア諸国の法人税率を簡単にまとめたものになります。あくまでも細かい規定は考慮外としています。また日本の税制上の取扱との関係においても細かい点において留意すべきことが多々あります。例えばタックスヘイブン対策税制の適用判定では、この表にあるような表面税率ではなく、実際の個々の企業の実効税率で判断することなどです。なお、この表によると法人税率が25%を超える国とそうでない国とで大別できることが分かります。

3.国外所得免除方式と外国税額控除方式

「国外所得免除方式」とは国外源泉所得は源泉地国のみで課税を受けることで完結し、その法人の居住地国では国内源泉所得のみが課税対象となり、国外源泉所得の合算申告が必要ないとするものです。例えばシンガポールやマレーシアなどは、国外源泉所得をその国内に送金した場合のみ課税するなどの措置を取り、基本的に国外所得免除方式により国際的な二重課税を排除する仕組みになっています。

これに対応する概念は全世界所得課税であり、この場合は所得の源泉が国内であるか国外であるかを問わず、居住地国で全て申告が必要となります。この場合の二重課税排除は「外国税額控除方式」によりなされます。

第1回で述べたように、日本は資本輸出中立の立場より全世界所得課税を採用していましたが、平成21年税制改正で、海外子会社からの配当金については益金不算入制度が採用されました。これにより海外子会社からの利子やロイヤルティなどは依然として日本の課税所得に合算が必要ですが、配当金については「国外所得免除方式」に移行した状況になっています。

一般に日本の中堅・中小企業がアジアに海外現地子会社を設立する場合、その国または地域で事業活動をすることが多いでしょうから、現地での国際的二重課税排除方式が上記いずれによるかはそれほど大きなインパクトを持たないことが多いかもしれません。しかしながら日本企業が以下に述べる地域統括会社を作る等の発展段階まで来たときには、統括会社設立地の選定にあたって、このことが重要な検討項目の一つとなってくることが予想されます。

4.統括会社の利用

企業の海外進出が複数の国々に進んでくると、親会社が海外子会社を直接管理するよりも、例えばアジア、ヨーロッパ、アメリカなどの地域をまとめる地域統括会社を設立し、経営管理機能を本社より移管させ、経営管理の効率化を図ることも考えられます。統括会社の設立国の選定では、金融取引や物流の利便性も重要になりますが、加えて効率的な資金運用の観点から、現地での税制、税率や二重課税排除方式、日本及び統括地域内諸国との租税条約もきわめて重要な検討要素になってきます。

一般的に投資資金効率を高めるためには、税務・法務・金融インフラが地域の中できわめて発達していて、かつ傘下の子会社群から還流してくる配当・利子・ロイヤルティ等に対して軽課税となる国に統括会社を設立することが考えられますが、この場合は日本におけるタックスヘイブン税制の検討も必要になってきます。

アジアですと、例えばシンガポール、タイは地域統括会社に優遇税率を設けています。地域統括会社の要件は各々細かく定められていますが、具体的には周辺地域国の統括拠点として事業企画の策定、経営管理、知的財産権管理、人事管理などの本部サービスを一部持たせることなどが要件となっていることが多いようです。

5.おわりに

以上、諸外国の税制傾向を概観いたしました。海外進出をする際に発生する税務は進出先の税制と日本での税制が複雑に関連し、またそれぞれの国・地域での税制改正も頻繁なことから、常に検討していくことも必要になると考えます。

プロフィール

東京共同会計事務所 税理士 水谷 美奈子
[所属・役職]
東京共同会計事務所 税理士
[略歴]
清新税理士法人(旧石渡・西村・中根共同事務所)を経て現職。
企業再編関連業務(ストラクチャー構築に係る税務アドバイス、税務デュー・デリジェンス等)、国際取引に係る税務アドバイス、連結納税関連業務 等
[著書]
『役員報酬をめぐる法務・会計・税務』2008年10月(共著、清文社)
[URL]
東京共同会計事務所

[バックナンバー]企業のグローバル化をサポートする国際税務の基礎知識

企業マネジメント最新トレンド 一覧へ

日経産業新聞 ビジネス動画 動画で見る、話題の新製品・先端技術 詳しくはこちら

日本大学 通信教育部

月間アクセスランキング

  1. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の具体的な改正内容とその対応のスケジュール
  2. 企業マネジメント最新トレンド
    グローバルに対応しうる事業戦略とは
  3. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正において、企業が取組むべきこと
  4. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正における具体的な取組み方法
  5. 企業マネジメント最新トレンド
    企業価値とは何か。経営にどう影響するのか

日経産業新聞ピックアップ

2017年6月23日付
  • ドローン・3D、セット貸し 中小の建設会社向け、オリックス系と国際航業
  • 日本工営、福島で小水力発電所
  • IDEC、ナノバブル測定サービス 応用研究を支援
  • 東レ・デュポン、設備投資50億円 フィルムやゴム用繊維で
  • ゴルフを手軽に楽しんで、ブリヂストンスポーツ 屋内施設を展開

経営喝!力 ビジネスIT活用index