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中堅・中小企業のための企業法務

安藤匡士司法書士事務所 代表 司法書士 安藤 匡士

第3回債権回収と契約書

企業を経営していく上で多種多様な契約を締結することになりますが、何も知らずに不利益を被ることがないよう、基本的なことは押さえておきましょう。今回は主に売掛金の焦げ付きなど債権回収の場面で知っていると便利な知識を取り上げます。

債権回収のためにしておくこと

1.まずは書面化

問屋が物品を小売店に卸すケースを例に取ると、下記が取引の1サイクルとなります。

(2)はあまり意識しないかもしれませんが、注文どおりに出荷するか、在庫がなく注文をキャンセルしてもらうかといった連絡のことです。

左側のプロセスを文書化したものが右側の書類です。注文書を送ってもらうことをせず、電話のやりとりだけで済ませている会社を見かけますが、いざ支払いが滞ったときにリスクを抱えることになります。

注文書がないと、注文金額・注文個数で双方に見解の相違があった場合に立証するのが難しくなり、代金の取りっぱぐれにつながりますので、注文を受けるときはぜひ書面化しておきたいところです。他のプロセスも確実な履行、後日の紛争防止に役立ちますので文書で残すようにしましょう。

注文書・注文請書に条件をすべて盛り込むと長くなってしまいますので、定期的に取引のある会社であれば各注文に共通の部分を基本契約書にまとめておきます。

2.支払いが滞ったら

取引先からの支払いが遅れ、督促してもなかなか支払ってもらえない場合、準消費貸借契約書を締結することを提案してみましょう。

準消費貸借契約とは、この場合売買代金債権を貸金債権に切り替える契約のことをいいます。準消費貸借に切り替えるメリットとしては、

  • (1)あいまいだった金額、支払い条件を明確化。
  • (2)時効期間の延長(売買代金債権は2年で消滅しますが、準消費貸借(貸金)の場合は5年)。

という点が挙げられます。

基本契約書のポイント

基本契約書を見たことがある方はなぜあんなに長いのかと思ったことがあるかもしれませんが、きちんと理由があります。必要なことを盛り込んでいくと多少長くなってしまいます。問屋と小売店の取引基本契約書であれば問屋側の意向が強い契約書になると思いますが、例えば次のような事を盛り込んであります。

・取引条件

(例)

  • (1)注文の承諾期間(注文があったら○日以内に返事をし、返事がなければ注文書どおり注文が成立したことにします)。
  • (2)検収期間(例えば、商品を届けたら○日以内に検収、と記載します。いつまで経っても検収されず支払いもされない事態を防ぎます)。
  • (3)支払いサイト
  • (4)所有権留保(支払いがあるまで商品の所有権は問屋側にあるとすることで、支払いが滞ったとき商品を回収して代金に充てます)。

・機密保持
商売上の秘密が漏れるのを防ぎます。

・有効期限、更新条件
自分にとってよい取引先でなくなったときに契約を円満に終了できるようにするためです。

・裁判管轄
支払いが滞り取り立てのために裁判を起こさなければならないとき、買主の所在地で裁判を起こすのは面倒なので、通常売主の所在地の裁判所の管轄になる旨の規定が入っています。

興味が湧いてきた方はぜひ市販の契約書に関する本を手にとってみてください。

プロフィール

安藤匡士司法書士事務所 代表 司法書士 安藤 匡士
[所属・役職]
安藤匡士司法書士事務所 代表 司法書士 安藤 匡士
[略歴]
司法書士事務所、法律事務所勤務などを経て現職。
商業登記中心に不動産登記、債権譲渡登記等各種司法書士業務に携わり、M&Aや株主総会対応などで企業法務に関するアドバイスを行っている。
[執筆活動]
「注目を集める日本版LLP『日本版LLP・LLC』」電気協会報 2005年9月号
「有限責任事業組合(LLP)等の概要と銀行取引上のポイント」銀行実務 2006年1月号
「『連帯保証人』を頼まれたとき&引き受けてしまったときの心得帳」月刊経理ウーマン 2011年6月号
[URL]
安藤匡士司法書士事務所

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