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中堅・中小企業のための企業法務

安藤匡士司法書士事務所 代表 司法書士 安藤 匡士

第4回一歩進んだ企業法務

最終回の今回は、株式会社なら毎年必ず作成する議事録についてのやや突っ込んだ話と、企業再編やストックオプションについて触れてみたいと思います。

1.議事録の作成義務・保管義務

株式会社は、決算から2ヶ月以内に株主総会を開催して決算の承認をしなければなりません(大企業などで、申告期限の延長申請をしている会社は3ヶ月以内)。決算の承認をする株主総会を定時株主総会といい、最低年1回は株主総会議事録を作成することになります。そして、作成した議事録は、10年間本店で保管します。

決算承認のほか、役員報酬の承認議案や役員選任議案も定番です。役員に報酬を支払う場合は、原則としてあらかじめ株主総会で金額を決めておかなければ経費として認められませんので、議案に盛り込みます。そして、役員の任期は定款で「選任後●年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」などと定められ、定時総会をもって任期が満了するように作られていますので、任期が満了する定時総会で新しい役員を選任します。

株主総会は株主が実際に集まって行うのが基本ですが、電話会議・テレビ会議システムにより複数の場所で開催することもできますし、全く会議を開くことなく書面決議によることもできます。

また、取締役会は、会社法下ではそもそも設置しないこともできますが、設置した場合は代表取締役の選定が重要な役割となります。そのほか、業務を執行する取締役は、3ヶ月に1回、取締役会に業務の執行状況について報告しなければならないとされていますので、報告のために取締役会の開催が必要です。少し規模が大きい会社になると、役員による月次試算表のチェックなどのため、毎月取締役会が開かれています。

取締役会議事録も、株主総会議事録と同様に10年間保管します。書面決議や電話・テレビ会議で行うことができるのも同じです。但し、書面決議を行うには定款に「書面決議ができる」旨の規定を置く必要があります。なお、3ヶ月に1回業務執行状況について報告する取締役会は書面決議で行うことはできず、実際に会議を開催しなければなりません。

2.企業再編・事業承継について

中小企業で合併を行うケースとしては、赤字のグループ会社を合併して税金を圧縮したり、会社や事業を売却する際に購入側の会社が売却側の会社を吸収合併したりするのをよく見かけます。

合併は、2つ以上の会社を合体させる手続で、債権者や取引先に対して、個別に同意を得る必要がないのがメリットです。同意がいらないとはいっても、債権者に通知は必要ですし、異議を出される可能性もあります。

会社分割は、会社を事業ごとに分割して、当該事業を行う新会社を設立するか(新設分割)、別の会社に吸収させます(吸収分割)。こちらも、合併と同様に事業に関する権利・義務が包括的に移転します。事業承継の場面で使う場合は、事業を2つに分割し、長男と次男に別々の会社を継がせたりすることが行われています。

合併も会社分割も、包括移転といって会社の債権・債務が包括的に引き継がれますので、関係者が多い場合に便利な手続です。他の手法としては事業譲渡もありますが、これは関係者から個別に同意を取り付ける必要があります。

3.ストックオプション

新株予約権は、会社に対して権利を行使することにより株式の交付を受けることができる権利であり、単独で役員や従業員等に付与されるものはよくストックオプションと呼ばれます。

色々な活用法が考えられるのですが、一例を挙げると次のような利用法があります。

  • 成長途中のベンチャー企業において、役職員へのインセンティブとしてストックオプションを発行。離職を防ぐ。
  • 社債と一緒に発行して新株予約権付社債とすることで、単なる社債より魅力的な資金調達手段となる。
  • ベンチャー企業の資本政策の一環として、オーナーが新株予約権を持ち、持株比率維持のために使われる。増資でも持株は増えるが、新株予約権は最初に資金がいらいないのがメリット。

4.最後に

本稿では4回に分け、中小企業における企業法務について書いてまいりました。企業経営において法律の知識は有効な武器になります。本稿が、皆様にとって企業法務に興味を持つきっかけになれば幸いです。

プロフィール

安藤匡士司法書士事務所 代表 司法書士 安藤 匡士
[所属・役職]
安藤匡士司法書士事務所 代表 司法書士 安藤 匡士
[略歴]
司法書士事務所、法律事務所勤務などを経て現職。
商業登記中心に不動産登記、債権譲渡登記等各種司法書士業務に携わり、M&Aや株主総会対応などで企業法務に関するアドバイスを行っている。
[執筆活動]
「注目を集める日本版LLP『日本版LLP・LLC』」電気協会報 2005年9月号
「有限責任事業組合(LLP)等の概要と銀行取引上のポイント」銀行実務 2006年1月号
「『連帯保証人』を頼まれたとき&引き受けてしまったときの心得帳」月刊経理ウーマン 2011年6月号
[URL]
安藤匡士司法書士事務所

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