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強みを活かして成長する企業~事例から学ぶ差別化のヒント

株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔 山本信幸

第4回顧客をファン化する品質とメッセージ

事例紹介

今回の事例は愛媛県にある「池内タオル」です。タオル業界は中国、ベトナムなど、アジアからの廉価なタオルの影響で2000年には国内生産量と輸入量が逆転し衰退産業とされてきました。そのタオル業界において、自社ブランドタオルの徹底的なブランディングでファンを増やし続けている事例です。

池内タオルのブランドはコンセプトが明確で、「母親が自分の命より大切な赤ちゃんを包む安全なタオルを作りたい」との思いから、糸の原料となる綿には枯葉剤を使用しないオーガニックコットンを使っています。そしてこれらのタオルをすべて風力発電で動く工場で作っているため、「風で織るタオル」と呼ばれています。

他のタオルとの違いを分かりやすく表現すると、タオルの表面によく見ると見える1本1本の糸の長さが他のタオルの約2倍あり、非常に柔らかく吸水性が高いとのことです。2002年にはアメリカ最大の生活用品展示会で「ミラクルソフトネス!」と評判になり、日本の製品では初の"New Best Award"(最優秀賞)を獲得しています。

しかしこの頃はまだ売上の7割以上をOEM生産に依存しており、翌年の2003年にOEM取引先の倒産により民事再生の申請に追い込まれます。この時に、こだわりの品質が海外でも認められたこと、国内にも根強いファンがいたことから、OEM生産から脱却し、自社ブランドのみに絞り込み、現在でもファンを増やし続けています。

事例からの学び(抽象化)

顧客と一言にいっても様々な属性があり、この顧客をいろいろな切り口で棲み分け、それぞれに対して最適な製品開発、価格設定、流通、販促等の販売の仕組み作りを行うのがいわゆるマーケティングです。その顧客の棲み分け方の一つに、潜在顧客、新規顧客、リピーター、ファンという分け方があります。多くの企業は新規顧客をリピーターに、更にはリピーターをファンにすることを目指すわけですが、今回の事例はこの「ファン」と言われる顧客を増やしているものです。そして、既に紹介した池内タオルが行っている3つの取組みが顧客のファン化にどう機能しているのかを知ることが今回の事例の最大の学びです。

まず、何らかの機会をきっかけに商品を購入した新規顧客は、商品に期待した効果を実際の効果が上回った場合に、リピーターになります。池内タオルで言えば上述した「品質」への取組みがこの部分に当たり、最高の肌触りや抜群の吸水性といった品質面が顧客の期待を上回っていると言えます。そして、リピーターの次にはファンがいます。ファンは、品質が期待を上回っていることを前提として更に、企業の理念や商品コンセプトに共感して購入を続ける顧客であり、池内タオルの場合、「安全性」や「環境配慮」への取組みが顧客の共感を呼んでいると言えます。ファンにとっては池内タオルの商品を使うことがある種のステータスであったり、環境保全という社会貢献の一手段であったりするわけです。

ファンが、リピーターよりも企業に対して大きなリターンをもたらしてくれるのは言うまでもありません。顧客でいる期間がより長く、口コミや評判による広告宣伝、新規顧客の呼び込みなど、企業にとっての応援者です。SNSが普及した現代では、顧客がもたらす口コミや評判などの広告宣伝効果ばかりに目が向き、そのインフラを整えることを優先しがちですが、重要なのはファン化していない顧客は他にいいものがあれば簡単に乗り換えるという点です。つまり、顧客にとって品質面で期待を上回る体験がなければ、理念やコンセプトに共感する前に、離れて行ってしまうのです。顧客の期待を上回る品質と、顧客の共感を呼ぶ一貫したメッセージの2つが揃って初めて顧客はファンにまで昇華するというのが今回の事例からの学びです。

顧客接点で伝える一貫したメッセージ

品質は単に機能、性能が高いことが良いのではなく、顧客の要求に応えられている度合いで考えるべきです。顧客の要求が高いのであれば機能、性能を高めるべきですが、逆に求められていないのであれば削ることも必要です。ポイントは顧客の要求を十分に理解することです。また、多くの企業が、理念や商品に込めた想いをホームページや会社案内などに掲載されてはいるものの、顧客にあまり伝わっていない場合が多いように感じます。実はこれ以外にも看板、社内の掲示物、名刺、電話対応、来客時の社員の振る舞いなど、これらのメッセージを伝える機会は意外に多くあるものです。ポイントは「顧客接点」です。あらゆる顧客接点で一貫したメッセージを発信し続けることで、顧客に対してそれが伝わりやすくなりますし、これが長期的に自社のブランドを形成していくことになります。

最後に

全4回にわたって、強みを活かして成長している企業の事例を見てきました。事例としてご紹介させていただいた会社は、どこかで聞いたことがある、比較的馴染みのある会社だったかと思います。
最初に申し上げさせていただいたように、大事なことは、このような事例をヒントに、自社に活かすことです。すなわち、活用できるものを見つけるモノの見方をすることです。そのために、抽象化⇔具象化を意識することをお伝えしてきました。この不況下においても業績を伸ばされている経営者の方々にその秘訣を伺うと、共通してお話されるキーワードとして多い言葉は、以外にもシンプルで、「原点に戻る」「自社らしさをとりもどす」。このような抽象化されたメッセージから、自社に合わせてどのように具象化していくか。今までご紹介させていただいた事例と考え方を参考に、ご活用いただければと思います。

プロフィール

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
[略歴]
朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
[著書・訳書など]
『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
[URL]
http://ownersbrain.com/

株式会社オーナーズブレイン シニアコンサルタント 山本信幸
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン シニアコンサルタント
[略歴]
事業会社で財務・経理業務及び株式公開業務に従事した後現職。
株式公開支援、企業価値算定などの会計・財務のコンサルティングの他、中小企業の事業計画策定、組織活性化、業務改善コンサルティングを行っている。
[URL]
http://ownersbrain.com/

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