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グローバル化に対応する日本企業となるために

株式会社ニューチャーネットワークス 高橋透 福島彰一郎

第2回グローバル・マーケティングの攻略法

1.グローバル・マーケティングにおけるポイント

グローバル展開の大きなメリットは、規模の経済によるコストダウンと範囲の経済による売上の増大である。ターゲットの国や地域ごとに製品・事業を個別に構築していたのでは、現地に特化した企業と同じレベル以上の戦いはできない。また、共通化だけでは差別化できない場合には、事業環境に合わせて製品・事業をカスタマイズする必要がある。

グローバル・マーケティングでは、商品、価格、広告・プロモーション、販売チャネルごとに、「共通化戦略」と「カスタマイズ戦略」の組み合わせの工夫がポイントとなる。

2.共通化戦略とカスタマイズ戦略

共通化戦略は、複数の市場セグメントにおいて共通のマーケティング活動を行う。同じ戦略をとるために本国において中央集権的に戦略策定・意思決定が行われる。共通化戦略には、次のようなベネフィットがある。

  • 1.原材料の一括調達や同じ製品の大量生産、物流システムのシンプル化、同じ内容の広告・プロモーションなど規模の経済によるコストダウン
  • 2.マーケティング・ノウハウや技術などの無形資産の効率的な蓄積
  • 3.同一の製品を中長期的に扱うことによる製品品質の向上
  • 4.国境を越えた一貫性のある製品コンセプトによるグローバル・ブランドの確立

共通化戦略のデメリットとしては、各市場セグメントに細やかに対応しにくくなり、現地メーカーはじめ競合に差別化されてしまうということである。

カスタマイズ戦略は、それぞれの市場セグメントの顧客特性やニーズに合わせて、商品や価格、広告・プロモーション、チャネルの内容を変える。本国一極集中でなく現地法人に権限委譲する分権的な組織体制となる。カスタマイズ戦略は次のようなベネフィットが期待できる。

  • 1.顧客ニーズにカスタマイズされた製品による高い顧客満足度
  • 2.顧客の所得や購買特性に合わせた柔軟な価格設定、広告・プロモーション、チャネル戦略が可能

デメリットとしては、市場セグメントごとに適応していると、規模の経済が働かなくなる。大きなイノベーションのための大胆な投資もできない。顧客がグローバル企業である場合、世界の各拠点で発信している製品内容・広告内容が異なってしまい、顧客が矛盾を感じることになってしまう。これはコーポ-レートブランドの破壊となる。

3.サムスン電子のグローバル・マーケティング

共通化戦略とカスタマイズ戦略の組み合わせをグローバルレベルで行い、大きな事業成果を出している好例は、サムスン電子の携帯電話ビジネスである。

韓国および欧米市場においては、ハイエンドの携帯電話を供給している。そして携帯電話の基本部分は共通化しつつ、製品のブランド名や、バッテリー、カメラの画素数といった付加機能は、各国の文化的違いを考慮してカスタマイズ戦略をとった。新興国市場においてはミドルからローエンドの携帯電話によって市場を開拓した。

カスタマイズを行う際には、様々な切り口で市場セグメンテーションを行っている。例えば宗教という切り口から、イスラム圏においてはコーランを電子ファイルとして内蔵しいつでも再生できる携帯電話を販売した。さらにメッカの方向を示す電子コンパス機能と祈る時間を教えるアラーム機能を搭載した。電力供給がまだ不十分であるアフリカにおいては、非常用懐中電灯を装備した、大容量バッテリー携帯電話を販売した。インドでは太陽光パネル付きの携帯電話を販売した。

サムスン電子はプロモーションにおいても共通化とカスタマイズ化を工夫している。共通のコンセプトで同じような映像や音楽を用いたCMをつくったうえで、地域ごとにキーワードやカラートーンを切り替えている。もちろん起用する俳優も変える。そして販売する店舗も地域ごとの戦略によって異なるのである。

日本製造業は海外展開を加速させているが、国内市場はもう限界なのでとりあえず海外の成長市場に行くという傾向がみられる。しかし、それではグローバル規模のコンペティションを生き抜いていけない。

どのような市場セグメントをターゲットとするのか、そして共通化戦略とカスタマイズ戦略をどのように組み合わせていくのかという、差別性のあるマーケティング・シナリオをしっかり構想してから、海外展開のファーストステップを選んでほしい。

プロフィール

株式会社ニューチャーネットワークス 代表取締役 高橋透
[所属・役職]
株式会社ニューチャーネットワークス代表取締役
株式会社ニューチャーアジア代表取締役
上智大学経済学部非常勤講師
[略歴]
1987年上智大学経済学部経営学科卒業後、旭硝子株式会社入社、セラミックスのマーケティング、新規事業の消費財の商品企画、広告宣伝を担当。その後大手コンサルティング会社を経て、1996年に経営コンサルティング会社ニューチャーネットワークスを設立し、代表取締役を務める。2010年より上智大学非常勤講師。
[著書・訳書など]
「ネットワークアライアンス戦略」(共著、日経BP、2011年)
「事業戦略計画のつくりかた」(PHP研究所、2006年)
「図解でわかる・技術マーケティング」(共著、JMAM、2005年)
「GE式ワークアウト」(デーブ・ウルリヒ他著、共訳、日経BP、2003年)
[URL]
http://www.nuture.co.jp/

株式会社ニューチャーネットワークス 取締役 シニアコンサルタント
福島彰一郎
[略歴]
1995年東京大学大学院工学系研究科材料学専攻修士課程修了
1996年同大学先端科学技術研究センター研究生
1998年米カーネギーメロン大学技術政策学部修士課程修了
1999年に経営コンサルティング会社ニューチャーネットワークスに入社、現在に至る。
[著書・訳書など]
「図解でわかる・技術マーケティング」(共著、JMAM、2005年)
[URL]
http://www.nuture.co.jp/

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