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グローバル化に対応する日本企業となるために

株式会社ニューチャーネットワークス 高橋透 福島彰一郎

第4回人・組織のグローバル化

"グローバル社会"での企業の原動力とは何か

"グローバル社会"の中で、企業は何を原動力に成長発展するのか?この問いに対し、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏は近著『流れを経営する―持続的イノベーション企業の動態理論』(東洋経済新報社)の中で、企業を「知識創造の主体と捉え、知識の創造・活用により主体的に変化しつつ持続可能な状態を創り出すもの」と捉え、「その人間の価値観や理想、信頼やコミットメント、他社との関係性など、人を動かす源を理解しなければ、知識や知識創造プロセスを理解することは出来ない」と、「人と組織の本質の理解」の重要性を強調されておられる。

常識を疑い、発想の転換が必要

それでは、多様な価値観や文化を背景とする国、企業・組織、そして人が複雑にネットワークされ、変化し続けるグローバル社会で、知識創造の仕組みとしての「企業の人・組織のマネジメント」とはどの様なものだろうか。

多くの経営コンサルタントや学者が、日本の人事制度や組織構造に関して「グローバル化からの遅れ」「グローバル社会に通用しない」ことを指摘し、「グローバル化」という標準テンプレートやシステムを勧める。しかしこの「型」を意識すること自体がそもそもグローバル化の本質に対して矛盾している可能性がある。つまり、グローバル化により発生し続ける多様性や複雑さを、管理統制するという発想自体が現実的ではないからだ。

ここで大きな発想の転換が必要である。すなわち、「多様性や変化をマネジメントする」のではなく「多様性や変化を活用することをマネジメントする」、つまり「創発型マネジメント」への発想転換である。「創発型マネジメント」とは、詳細な戦略計画やそれを実現するルールをトップダウン型で決め、きめ細かく実行管理するのではなく、経営トップが大ざっぱな、しかし戦略的意味のある「思い」を組織全体に投げかけ、現場に近いミドルやボトムが、その意を汲んで独自の発想をボトムアップし、ある程度合意出来たところで、試行錯誤を繰り返し、組織全体が学習しながら競争優位を勝ち取る方法である。

グローバルでの人・組織マネジメントにおける「創発」とは

「創発型マネジメント」は、それぞれ方法は全く異なるものの、P&G、ユニリーバ、IBM、ネスレ、アップルなどの欧米の企業だけでなく、コマツ、ダイキン工業、日産自動車、ホンダ、YKK、良品計画、ユニクロなど世界で活躍する日本企業でも共通するマネジメントスタイルのようである。

グローバルでの人・組織マネジメントに関して「創発」という概念で具体的に考えるならば、以下の様な原則的なことが挙げられる。

  • 1.組織は、出来るだけグローバルで「多様」な背景を持つ人、組織で構成される。
  • 2.それぞれの人、組織は「個々が尊重」され「自立した存在」であることが共通認識される。
  • 3.企業独自の社会的使命、理念、長期ビジョンがグローバル全社員に深く理解され、その「本質的な意味」の実行を意識している状態を創り出す。
  • 4.極めて明確でシンプルなルールがグローバルで共有され、厳格に運用されている。
  • 5.グローバルプレイヤーとして、常に挑戦的でストレッチな目標を掲げ、その成果が明確である。
  • 6.グローバルなビジョンのトップダウンと現場からのボトムアップを繰り返しながら、試行錯誤を通じて、組織全体が学習し「行動解」を見つけ成長する。
  • 7.「人間としての価値観」「感情、直感」「人と人、人と組織の関係性」などの人間的なことを重視する。

では現状をどう変革するべきか

日本の多くの企業はここ数年、成果主義、コンプライアンスのための管理強化、残業規制など制度が多くなり、管理を厳格化してきている傾向が強まっている。むしろ「創発型のマネジメント」からは遠ざかってはいないだろうか。その結果、国内ビジネスでさえ閉塞感に包まれ、「グローバルマネジメントなどほど遠い」と考えている人も多いだろう。

そこで「グローバルマネジメント」のために現状を変革する3つの提案をしたい。

提案1:海外の特定プロジェクトでの「創発的マネジメント」実践

既にいくつかある"海外プロジェクト"を"国際部門"だけが手がけるのではなく、国内外のメンバー、経営トップを巻き込み、組織横断的プロジェクトを通じて創発的にマネジメントし、成果を出す。小さなプロジェクトであっても成果が出れば、創発マネジメントは次第に普及して行くはずである。

提案2:"企業フィロソフィー"を見直しとグローバル拠点への理解活動

本格的にグローバルマネジメントを実践する企業へと変革するに当たって、その原点となる企業の基本的な思想からてこ入れする。"ミッション""理念""ビジョン"といった"企業フィロソフィー"を見直し、国内、海外拠点への普及展開を手がけるプロセスを通じて、自社独自のグローバルマネジメントを創発する。

提案3:国内プロジェクトでの創発型マネジメントの実践

たとえ海外プロジェクトがなくても、国内のマネジメントを創発型に変革し、グローバル化のベースを創っておくという方法もある。国内組織も活性化し、それが海外展開にも大きく貢献すると考えられる。

プロフィール

株式会社ニューチャーネットワークス 代表取締役 高橋透
[所属・役職]
株式会社ニューチャーネットワークス代表取締役
株式会社ニューチャーアジア代表取締役
上智大学経済学部非常勤講師
[略歴]
1987年上智大学経済学部経営学科卒業後、旭硝子株式会社入社、セラミックスのマーケティング、新規事業の消費財の商品企画、広告宣伝を担当。その後大手コンサルティング会社を経て、1996年に経営コンサルティング会社ニューチャーネットワークスを設立し、代表取締役を務める。2010年より上智大学非常勤講師。
[著書・訳書など]
「ネットワークアライアンス戦略」(共著、日経BP、2011年)
「事業戦略計画のつくりかた」(PHP研究所、2006年)
「図解でわかる・技術マーケティング」(共著、JMAM、2005年)
「GE式ワークアウト」(デーブ・ウルリヒ他著、共訳、日経BP、2003年)
[URL]
http://www.nuture.co.jp/

株式会社ニューチャーネットワークス 取締役 シニアコンサルタント
福島彰一郎
[略歴]
1995年東京大学大学院工学系研究科材料学専攻修士課程修了
1996年同大学先端科学技術研究センター研究生
1998年米カーネギーメロン大学技術政策学部修士課程修了
1999年に経営コンサルティング会社ニューチャーネットワークスに入社、現在に至る。
[著書・訳書など]
「図解でわかる・技術マーケティング」(共著、JMAM、2005年)
[URL]
http://www.nuture.co.jp/

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