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経営に役立てる強い決算書入門

株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔

第2回決算書を実績的に読む~安全性

1.決算書を実践的に読むためのコツ

経営者にとって大事なのは、「決算書の作り方」でなく、「決算書の読み方・活かし方」です。とくに決算書は、何が重要か、どこから手を付けていけばよいかがわかっていないと、平たく読んでしまって、大事なメッセージが読み取れません。コツは読む順番です。前回お話した決算書を読むポイントと次のようにつながってます。

2.貸借対照表を理解する

(1)貸借対照表の見方のポイント

ステップ1の安全性を見るために、まずは、貸借対照表とはどのようなものかを理解しましょう!
貸借対照表は運用と調達を表します。

貸借対照表の右側は、左側の資産(財産)を購入するために必要な資金の調達手段を表しています。言い換えると、右側(負債、純資産)で会社を動かすための資金を調達し、調達した資金を左側で運用していると考えることができます。そして、利益は資産の運用の結果と言うことができます。

(2)「負債」と「純資産」の違い

「負債」と「純資産」の本質的な違いは、返済義務があるかないかです。返済する必要のない純資産が大きいほど安全性は高まります。

(3)「純資産」と良い貸借対照表

「純資産」の中身は、大きく2つにわけると「出資者からの払込」「利益の蓄積」で構成されています。業績がよければ、経営成果である利益が蓄積され、利益剰余金、その結果として、純資産が大きくなります。このように、過去から継続して利益を上げている会社は、利益剰余金が非常に厚くなります。返済する必要がない純資産が大きいこと、すなわち、自己資本比率が高いことは、安全性が高いといえます。

3.経営に活かす決算書の読み方:(ステップ1)安全性を見る

安全性は貸借対照表を中心にみます。
黒字倒産という言葉があるように、いくら会社が利益を上げていても、お金が回らないと会社は倒産してしまいます。貸借対照表から安全性を確認して、自社の返済能力を把握しましょう!そして、その見方でのポイントはどの順番で安全性を見るかです。

(1)手元流動性

「手元流動性」とは、すぐに取り崩せる資金から、会社の支払能力を表します。銀行も貸出先に対して重視している指標であり、「この先、○ヶ月は確実に支払能力がある」ということが把握できるため、短期的に見た安全性を確認するには一番重要と考えることができます。

手元流動性の目安としては、中小企業で1.5ヶ月、資本調達能力がある大企業で1ヶ月強くらいが安全だと言われています。
この際に特に注意したいのは、自社の資金がいつボトムになるタイミングを把握しておくということです。多くの場合、給料日から月末の支払時期がボトムになることが多く、資金ショートを避けるためにも、資金がボトムになる時でも1ヶ月分の手元流動性は確保したいです。

(2)流動比率

手元資金は、すぐに返済に回すことができるため最も流動性が高い資産ですが、1年以内という視点でみると、流動資産は換金性が高いといえます。ただ、一方で、1年以内に返済義務がある負債より多くないと、やはり、資金が回らなくなってしまいます。このように、「流動負債」をまかなうだけの「流動資産」が会社にあるかどうかという視点も大事です。

流動比率の業種によって目安となる数値は変わってきますが、入金サイトと支払サイトが近い会社に場合は、120%以上あるのが望ましいと言われています。現金商売であれば100%を下回っても問題ないでしょうし、売掛債権の現金化が極端に遅い業種の場合は120%でも資金繰りが厳しいと考えられます。

(3)自己資本比率

中長期的な安全性の指標として、「自己資本比率」をみます。先ほど、述べたように、「自己資本比率」は、調達した資金のうち、返済する必要のない資金の比率を表しています。よって、自己資本比率が高いほど、返済義務のある負債(他人資本)が少なく、より安全であると言えます。

自己資本比率の目安としては、上場会社、非上場によっても、また、業種によって目安となる数値は変わってきますが、一般的な目安としましては、50%を超えると優良、設備などの固定資産を多く必要とする業種では30%以上、棚卸資産などの流動資産が多い業種では15%以上が安全性の目安です。ただ、10%を下回ると過少資本と言わざるをえません。また、非上場会社では、自己資本比率はどんなに高くても問題にはなりませんが、上場会社では、自己資本利益率(ROE)を低めることになり、買収のリスクも高まります。

4.まとめ

安全性を見る上でのいくつかの経営指標をご紹介しましたが、そのポイントは優先順位です。資産をすぐに換金できるものに限定しており、月商という損益との比較をしている点で、「手元流動性」を一番最初に見る必要があります。その次に、「流動比率」と続きます。「自己資本比率」は、中長期的に見れば安全ですが、必ずしも短期的な安全性を表すものではないことに注意が必要です。
なぜなら、自己資本比率が高くても、短期的に資金が不足してしまうと、会社は倒産してしまう可能性があるからです。

次回は、貸借対照表と損益計算書から経営に活かす決算書の読み方:(ステップ2)収益性を見たいと思います。

プロフィール

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
[略歴]
朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
[著書・訳書など]
『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
[URL]
http://ownersbrain.com/

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