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経営に役立てる強い決算書入門
株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔
第4回決算書を実績的に読む~効率性
1.経営に活かす決算書の読み方:(ステップ3)効率性
経営に活かす決算書を読む大事なポイントとして、「安全性」、「収益性」についてお話してきました。最終回は、「効率性」のお話をしたいと思います。
効率性の指標は、会社がいかに効率よく資産を回転させて収益を生み出しているかということで、収益性の分解の要素「売上高利益率」×「資産回転率」の「資産回転率」に相当します。
1.総資産回転率
総資産回転率は、会社が総資産を1年に何回転させて、売上高をあげたかを示します。
貸借対照表の左側に売上高を並べると非常にわかりやすいと思います。
回転率が高ければ高いほど、総資産は効率的に活用されて、売上に結びついていると判断することができます。
回転率は、業種業態によって変わります。
「小売業」「商社」などは利益率は低く、総資産回転率が高い特徴があります。一方、「不動産業」「鉄道」「通信」「電力」など、固定資産が多く、総資産が大きい業種は、総資産回転率は低いが、利益率が高いという特徴があります。
2.売上債権回転率、棚卸資産回転率、仕入債務回転率
資産回転率は、それぞれ資産・負債項目ごとに、さらに以下のように分解できます。また、資産回転率の分母と分子を入れ替えることで、回転期間としてとらえることもできます。
1.売上債権回転率
会社の売上債権の回収が、どの程度効率的に行われているか、売上債権がどのくらいの期間で回収されているかを示します。回転率が低いほど、債権の回収に時間がかかること、債権の現金化に時間がかかることを意味しております。
2.棚卸資産回転率
会社の主たる営業活動である、商品・製品の販売がどの程度効率的に行われているかを示します。
売上高を一定とした場合、回転率が高いほど在庫が効率よく売上に結びついていることを意味します。逆に回転率が著しく悪い場合は不良在庫を抱えている可能性があると考えることができます。
3.仕入債務回転率
会社が仕入債務の支払をどの程度効率的に行っているか、また、仕入債務の支払に何日分の売上原価が必要かを示します。
回転率が低いほど、支払に時間をかけていることを意味し、資金面から有利ですが、著しく低い場合、資金繰りの悪化により、支払を延ばしている等の理由が考えられます。
3.キャッシュ・コンバージョン・サイクル
商品を購入して、販売し、代金を回収するという企業活動のプロセスにおいて、売上の入金よりも先に、商品の購入代金を支払う場合、そのタイムラグを埋め合わせるために、一定のキャッシュが必要になります。これを運転資本といいます。運転資本が増える場合には、新たにキャッシュが必要になってきますし、逆に、運転資本が減る場合には、その分のキャッシュを用意する必要がなくなります。この企業が資金を回収する効率性・スピードを示す財務指標として、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)があります。売上債権回転期間、棚卸資産回転期間の和から、仕入債務回転期間を差し引いて計算できます。 CCCが短いほど、経営に有利と言えます。
上記のような前提条件においては、CCCは、30.4日と計算されます。
以下は、2011年度のソニーとアップルのCCCの比較です。アップルのCCCの値は、マイナスとなっており、資金を回収するスピードの早さかがわかります。年々CCCの値をマイナスの方向に改善させ、運転資金を有効運用できる状態にしていることがわかります。
4.最後に
このように、会計数字の意味が分かれば、経営に活かすことができます。数多くの中小企業を育成・応援されている、稲盛和夫さんは、経理が準備する決算書を見て、たとえば伸び悩む収益のうめき声ややせた自己資本が泣いている声を聞きとれる経営者にならなければならないとおっしゃいます。
経営者が会社経営に会計を役立たせるようにするためには、経営者自身が会計を十分よく理解し、自社の経営の状況、問題点が浮き彫りとなるように決算書を読めるようになければならなりません。そのためも、会計数字と経営を結び付け、計器盤に表示される数字の意味を理解するとともに、自社にあった判断基準を持つことが大切です。
プロフィール
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
- [所属・役職]
- 株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
- [略歴]
- 朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
- [著書・訳書など]
- 『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
- [URL]
- http://ownersbrain.com/
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