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First step アジア進出の税務

グラントソントン太陽ASG税理士法人 国際税務担当パートナー 宮島 久美子

第1回アジア諸国への進出形態とその特徴

今や海外進出は大企業だけの話ではありません。海外と取引を行い、海外に支店や子会社といったビジネス拠点を設置している中小企業は年々増加しており、特に物価や税率の低いアジア諸国への関心は高くなっています。

そこで、12月は4回にわたって中小企業のアジア進出に必要な税務について解説します。第1回は、代表的な進出形態である、駐在員事務所・支店・子会社について、それぞれの長所と短所を比較、検討し、さらにアジア諸国における各形態の特徴をご紹介します。

1.駐在員事務所vs支店vs子会社

(1)駐在員事務所

駐在員事務所は、支店や子会社に比べて設置や撤退の手続きが簡易であることがその特徴の一つです。また、駐在員事務所の業務は、海外進出の準備、市場調査、情報収集などの補助的活動のみに限定されており、収益獲得に繋がる業務を行わないものとされています。駐在員事務所の活動からは所得が発生しないため、進出国において法人税等の税金が課されることはありません。ただし、その活動が補助的な活動を超えているとみなされた場合には法人税等を課される可能性があるので注意が必要です。

(2)支店

一般的に支店の業務は駐在員事務所よりも広く、収益獲得に繋がる営業活動などを行うことが可能です。したがって、支店に帰属する所得は進出国で法人税等の課税対象となり、申告・納税義務が発生します。また、日本では日本本店と海外支店の利益を合算した所得に対して法人税等が課されますので、為替差損益の影響や二重課税の問題(外国税額控除により排除)なども考慮すべき点といえます。支店設立当初など、支店で損失発生が見込まれる段階においては、日本における課税所得を圧縮するという節税効果が期待できます。

(3)子会社

子会社は支店や駐在員事務所と異なり、親会社から独立した別法人格であるため、親会社の法的責任はその出資額に限定されるという利点がありますが、親子間取引に係る契約書の整備、株主総会等の開催や議事録作成などが必要になります。課税関係においては、子会社の損益は親会社に合算されることなく現地法令に基づいて課税されるのみであるため、支店のように為替の影響や二重課税の問題は大きくないものの、一方で利子やロイヤルティ、配当の支払い等の親子間取引に係る源泉税や移転価格税制、タックスヘイブン税制などに対する検討が必要になります。

また、アジア諸国には外資の100%出資を認めていない国もあり、形式的に合弁の形をとらなければならない場合があります。合弁会社の場合、子会社運営上のリスクを合弁相手と分散することができ、また合弁相手の持つ現地情報や販売網、ノウハウなどを利用することができるという利点がありますが、一方で事業運営の柔軟性や意思決定の迅速化に対する障害、合弁解消時の紛争などの問題が生じる可能性があるので注意が必要です。

2.アジア各国の制度

上記1では駐在員事務所、支店、子会社の特長について説明しましたが、各国によってその制度は様々です。以下では、シンガポール・タイ・インド・ベトナム・インドネシアの5カ国について、各形態の特徴を比較可能な一覧にしてご紹介すると共に、各国制度の特徴的な部分について解説します。

(1)シンガポール

駐在員事務所、支店、子会社とも外資規制はありません。更に法人税率は他のアジア諸国と比較しても低く、シンガポールから日本への配当に対する源泉税も免税であるため、進出しやすい国といえます。

(2)タイ

駐在員事務所であっても財務諸表の提出が必要です。支店設立には最低300万バーツの資金が必要とされ、さらに本店への利益送金に対して10%の源泉税が課されます。100%出資による外資算入に対しては業種規制がありますが、製造業については規制が緩く、比較的進出が容易です。

(3)インド

駐在員事務所設置には、過去3年間本国で利益を上げているなどの要件があります。支店の設立条件はありませんが、支店に認められている業務範囲が限定されているため、支店形態での進出は一般的ではありません。外資直接出資には業種・形態・出資比率などの規制があり、詳細はネガティブ・リストに記載されています。

(4)ベトナム

駐在員事務所を設置するためには、本国で1年以上事業活動を行っていることが必要です。支店設置についても、本国で5年以上の事業活動行っていることが要件とされています。外資100%子会社の設立は一部の業種に限定されています。

(5)インドネシア

駐在員事務所は、その目的や業務内容により3種類に分類され、それぞれ申請官庁が異なります。また、インドネシア労働者の雇用義務などの要件があります。支店の設置は銀行や保険業などの特定業種に限定されており、さらに支店から本店への利益送金について10%の源泉税が課されます。外資100%子会社の設立については業種等の制限があります。

プロフィール

グラントソントン太陽ASG税理士法人 国際税務担当パートナー 宮島 久美子
[所属・役職]
グラントソントン太陽ASG税理士法人 国際税務担当パートナー
[略歴]
Big4国際税務部門、外資系大手企業のコントローラーを経験後、グラント・ソントン太陽ASG税理士法人にて、外資系企業や国際展開企業を中心に税務コンプライアンスおよび税務コンサルティングに従事。外国税額控除、タックスヘイブン対策税制、租税条約と国内法、国際源泉課税などをテーマに多数のセミナーおよび執筆を行っている。
[URL]
http://www.foresight-law.gr.jp/

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