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First step アジア進出の税務

グラントソントン太陽ASG税理士法人 国際税務担当パートナー 宮島 久美子

第3回アジア子会社からの配当に係る税務

海外に子会社を設立した場合には、配当という形で日本親会社に資金還元されます。平成21年度の法人税法改正で外国子会社配当の95%が免税とされたことにより、海外に進出し易い環境になったといえます。しかし一方で、子会社所在地国では配当に対して源泉税が課されることがあるため、依然として資金還元時の税コストの検討は重要です。そこで第3回では、海外子会社からの配当に係る税務上の取り扱いを解説することとします。

1.アジア各国の制度

(1)シンガポール

配当には期末配当と中間配当があります。期末配当は株主総会の承認が必要ですが、中間配当は取締役会の決議のみで実施が可能です。
日本親会社への配当の送金に対する規制はなく、源泉税の課税もありません。

(2)インド

配当には期末配当と中間配当があります。期末配当は株主総会の普通決議が必要ですが、中間配当は取締役会の決議のみで実施が可能です。
資本金の10%を超える金額の配当を行う場合には、その利益のうち一定額(2.5%から10%)を準備金として積み立てることが義務付けられています。
配当に対する源泉税は不要ですが、支払者であるインド子法人に対して、15%(*1)の配当分配税が課されます。この配当分配税は配当受領者に課される源泉税とは異なるため、租税条約の減免対象にはなりません。

  • (*1)ここのほか教育目的税とサーチャージが課されるため実効税率は16.2225%になります。
(3)タイ

配当の実施には株主総会の承認が必要です。
配当を行う場合には、資本金の10%に達するまで、配当金額の5%以上を準備金として積み立てることが義務付けられています。
配当に係る源泉税は、国内法・租税条約とも10%です。

(4)ベトナム

配当を行うには株主総会の承認が必要です。
ベトナムドンによる海外送金は禁止されており、円換算後に日本に送金しなければならないため、ベトナムで通貨換算手数料が発生することになります。
配当時の源泉徴収は不要です。

(5)インドネシア

配当は株主総会の普通決議事項とされています。また、定款で定めることにより、監査役会の承認及び取締役会の決議に基づき中間配当を行うことができます。
会社が累積黒字である場合のみ、配当を実施することができます。会社法上、毎期一定額の利益準備金を、払込資本金の20%に達するまで積み立てることが義務付けられているため、純利益から利益準備金の積立額を控除した残額が配当の対象とな ります。
配当に係る現地の源泉税率は20%ですが、租税条約により10%または15%に軽減されます(*2)

  • (*2)株式保有割合および保有期間による。

2.日本の法人税制-外国子会社配当益金不算入制度

(1)制度の概要

下記(2)の要件を満たした外国子会社から受ける配当については、その9%が免税となります。5%部分は、その配当に係る費用の額に相当するものとして課税対象となります。二重課税が発生しないため、配当に係る源泉税は税務上の費用として認められません。

(2)適用要件等

この規定の適用対象となる外国子会社とは、日本親会社がその発行済株式等のうち25%以上を、剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日以前6か月以上継続して保有している場合の、その外国子会社です。ただし、租税条約の二重課税排除条項の規定により25%、6か月という条件が軽減されている場合には租税条約の規定が優先されますので、子会社所在地国ごとに租税条約を確認する必要があります。

また、規定の適用を受けるためには、申告書への明細書の添付および書類等の保存が必要です。

(3)外国子会社配当に係る税コスト

日本の法人税額の計算上、配当の額の5%は免税にはならず課税所得に含まれますので、日本国内における税負担は5%×40%(実効税率を40%とします)=2%となります。また、現地で課税された源泉税は日本の法人税額の計算において費用として認められません。したがって、外国子会社配当に係る税コストは、「配当の額×2%+現地で課される源泉税」となります。第2 回でご紹介したとおり、アジア諸国では配当を免税としている国が比較的多いですが、租税条約を適用しても10%以上の源泉税が課される場合がありますので、長期的なコストとして把握しておく必要があります。

プロフィール

グラントソントン太陽ASG税理士法人 国際税務担当パートナー 宮島 久美子
[所属・役職]
グラントソントン太陽ASG税理士法人 国際税務担当パートナー
[略歴]
Big4国際税務部門、外資系大手企業のコントローラーを経験後、グラント・ソントン太陽ASG税理士法人にて、外資系企業や国際展開企業を中心に税務コンプライアンスおよび税務コンサルティングに従事。外国税額控除、タックスヘイブン対策税制、租税条約と国内法、国際源泉課税などをテーマに多数のセミナーおよび執筆を行っている。
[URL]
http://www.foresight-law.gr.jp/

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