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タイ進出に関する法務のポイント
三宅・山崎法律事務所 弁護士・国際化支援アドバイザー 中山 達樹
第1回タイの外資規制と投資形態
4回シリーズで、タイの法務について解説します。
今回1回目はタイの外資規制と投資形態について、次回はタイの会社法やM&A、3回目はタイの労働法、最終回の第4回はタイからの撤退や紛争解決について触れることを予定しています。
1.外資規制の概要
タイの外資規制を簡単にまとめると、製造業には外資規制はありませんが、サービス業や卸売・小売業には規制があります。
まず、外国人事業法により、「外国人」による事業につき外資制限があります。この「外国人」とは、外国人または外国企業がその資本の半分以上を所有する法人のことです。
例えば、日本の親会社から51%出資したタイ子会社は「外国人」扱いとなりますが、出資割合が49%で、残り51%をタイから出資してもらえば、「外国人」ではないことになります。
外資規制の内容は、以下の3分類に別れています。第1類と第2類については進出を検討する日系企業がほとんどないため、実務上問題となるのは、主に第3類です。
なお、第3類では当局の許可が得られるかが問題になりますが、別途、投資委員会(BOI)の奨励や工業団地公社(IEAT)の許可を得ることにより外資規制を免れるという方法もあります。
サービス業等の外資規制業種を行うために、実際は日系企業が出資するものの形式的にタイ人に出資してもらうという、いわゆる「名義借り」は違法であり、刑事罰が科せられるため、注意が必要です。
サービス業等の外資規制業種を日系企業が行うために、以下のような方法が模索されています。
(1)優先株式の利用
タイ企業に過半数を出資してもらって、外国企業(外国人事業法上の「外国人」)とはならないタイ企業を設立します。
一方、日系企業に優先株式を発行することで、日系企業が多くの株主総会の議決権を握り、このタイ企業をコントロールできるようにします。
ただし、どの程度の優先株式まで許されるか(1株あたり議決権をいくつまで与えてよいか)につき明確な定めはなく、場合によっては外資規制の潜脱とされるおそれがあります。
(2)株式持合い
株式を相互に持ち合うことで、外国企業ではなくタイ企業を設立することです。この方法を用いる場合も、外資規制の潜脱と評価されないような工夫が必要です。
(3)タイ持株会社(いわゆるサイレント・パートナー)の利用
議決権を行使しないタイ企業に、いわゆるサイレント・パートナーとして資本参加してもらい、タイ企業からの出資割合を過半数にするやり方です。タイでは比較的多く用いられています。
2.日本人のタイでの就労に関する労働許可の問題
あまり知られていませんが、いかなる形態であろうと、日本人がタイで就労する場合、それが短期間であっても、労働許可を取得しなければなりません。
また、日本人が労働許可を取得するためには、1人の日本人に対して、原則として4人のタイ人をそのタイの会社で雇用していることが必要となります。
3.投資形態
タイへの投資形態は、現地法人の設立が多いです。その理由として、(1)タイ企業が未成熟なため、買収(M&A)したいと思う企業が多くないこと、(2)支店の設立が手続的に面倒くさいこと、そして(3)駐在員事務所では営業活動ができないこと、が挙げられます。
プロフィール
三宅・山崎法律事務所 弁護士・国際化支援アドバイザー 中山 達樹
- [所属・役職]
- 三宅・山崎法律事務所 弁護士
- [略歴]
- 平成10年 3月 東京大学法学部卒業
平成19年 4月 三宅・山崎法律事務所入所
平成22年 6月 Drew & Napier LLC(シンガポール法律事務所)勤務
平成22年 7月 シンガポール国立大学法学部大学院(アジア法学専攻)卒業
- [弁護士会・公職等]
-
第一東京弁護士会
環太平洋法曹協会(Inter-Pacific Bar Association; IPBA(www.ipba.org))
日本プロ野球選手会公認選手代理人
中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
- [著書・論文等]
-
シンガポールの紛争解決-『民事訴訟』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年2月号掲載)
シンガポールの紛争解決-『商事仲裁』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年3月号掲載)
『アジア労働法の実務Q&A』商事法務,2011年
『The Dispute Resolution Review (Fifth Edition)』 Law Business Research Ltd,2013年
- [URL]
- http://www.mylaw.co.jp/
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