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タイ進出に関する法務のポイント

三宅・山崎法律事務所 弁護士・国際化支援アドバイザー 中山 達樹

第2回タイの会社法やM&A

4回シリーズで、タイの法務について解説しております。今回第2回目はタイの会社法やM&Aについて、特に日本と異なる点を中心にお伝えします。

1.タイの会社法

(1)民商法

タイでは、民商法という法律が会社法の役割を果たしています。そのうち、最も一般的な非公開株式会社に関する規定はわずか177条しかなく、実務上運用が許されるか不明瞭なものも多いです。なお、タイには日本でいう「監査役」はなく、タイの公認会計士が会計監査をします。

(2)最小株主数と最低資本金

株主は最低3名必要です。国籍要件や居住要件はありません。設立時の発起人は、法人ではなく自然人であることが必要です。

最低資本金は、理論的には15バーツで足りますが、そのタイ会社に日本人が駐在する場合、その日本人が労働許可証を取得するためには、払込資本金が200万バーツ(約600万円)必要です。

(3)分割払込主義

日本と異なり、会社設立時に株主は全株式を引き受ける必要がありますが、払い込むべき資本金は、登録資本金の4分の1で足ります。設立手続は1か月程度で足ります。

2.株主総会

(1)招集通知

日本と異なり、招集通知を郵送するのみならず、新聞広告をすることも必要となります。

(2)決議方法

株主総会の決議方法は、余り知られていませんが、日本と異なり、定款で異なる定めを置かない限り、株主が保有する議決権の数ではなく、原則として頭数で決せられてしまうことに注意が必要です。

そのため、上記の例で言えば、日系企業Cが大多数の株式を保有していても、頭数でタイ人A・B(2名)に及ばないので、株主総会ではタイ人A・Bの意図通りの決議がなされてしまいます。

このような事態を避けるため、定款で、日本と同様に議決権の数で決定する旨定めておくことが一般です。なお、書面決議やテレビ会議決議を許容する明文はありません。

(3)決議要件

定款変更や増資等の特別決議事項は、日本の3分の2と異なり、出席株主の4分の3以上が必要です。

3.取締役会

(1)決議方法

取締役会でも、テレビ会議や書面決議または代理出席を許容する明文はありません。そのため、タイなどで現実に開催しなければいけないという建前になっています。

(2)サイン権者

タイでは、日本と異なり、Authorized Director(署名権を有する取締役。一般に「サイン権者」といわれる)という地位があり、これが日本の代表取締役と同様かそれ以上に重要です。

タイでは、会社の行為は基本的にカンパニーシール(会社印)とサイン権者の署名によって行われます。サイン権者が実際に手書きで署名しなければならず、日本のように秘書や他の取締役が代理で押印することなどで代替できません。したがって、誰をサイン権者にするかという点が、会社の組織を構成するにあたり、最も重要になります。

4.タイのM&A

(1)未熟な法制度

タイには、吸収合併や会社分割という制度はありません。また、第三者割当は禁止されており、常に株主に新株引受権があることになっています。さらに、独占禁止法もありますが、有名無実な状態で機能していません。

(2)簡易デューデリジェンス

タイでは、会社登記簿、株主名簿、定款、監査済み財務諸表などはだれでも入手可能です。M&Aの対象となる企業の情報を簡単に入手することができます。

(3)公開買付

上場会社の株式購入につき、保有割合25%、50%、75%がトリガーポイントとなり、公開買付をしなければなりません。

プロフィール

三宅・山崎法律事務所 弁護士・国際化支援アドバイザー 中山 達樹
[所属・役職]
三宅・山崎法律事務所 弁護士
[略歴]
平成10年 3月 東京大学法学部卒業
平成19年 4月 三宅・山崎法律事務所入所
平成22年 6月 Drew & Napier LLC(シンガポール法律事務所)勤務
平成22年 7月 シンガポール国立大学法学部大学院(アジア法学専攻)卒業
[弁護士会・公職等]
第一東京弁護士会
環太平洋法曹協会(Inter-Pacific Bar Association; IPBA(www.ipba.org))
日本プロ野球選手会公認選手代理人
中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
[著書・論文等]
シンガポールの紛争解決-『民事訴訟』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年2月号掲載)
シンガポールの紛争解決-『商事仲裁』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年3月号掲載)
『アジア労働法の実務Q&A』商事法務,2011年
『The Dispute Resolution Review (Fifth Edition)』 Law Business Research Ltd,2013年
[URL]
http://www.mylaw.co.jp/

[バックナンバー]タイ進出に関する法務のポイント

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