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タイ進出に関する法務のポイント

三宅・山崎法律事務所 弁護士・国際化支援アドバイザー 中山 達樹

第3回タイの労働法

4回シリーズで、タイの法務について解説しております。今回第3回目はタイの労務につき、主に日本と異なる点をお伝えします。

1.総論

タイの労働法は、(日本と同様)解雇には正当事由が必要であったり、(日本と異なり)解雇手当の支払が法律で義務づけられていたりするという点で、アジアでは一般的であるということができます。

2.解雇手当

日本と異なり、会社側から雇用を終了した解雇のような場合、特別に退職金の支払規定を定めていなくても、会社は、その労働者に、法律により定められた解雇手当(離職手当)を支払わなければなりません。そのため、タイの雇用契約では、退職金の支払規程を設ける必要はありません。

また、日本と異なり、単なる「解雇」に留まらず、定年退職の場合にも解雇手当の支払が必要になる点に注意が必要です。

もっとも、120日未満の試用期間中の解雇や懲戒解雇などの例外的な場合は、解雇手当を支払う必要はありません。

解雇手当の支払が必要になる場合・不要になる場合をまとめると、以下のとおりとなります。

3.解雇手当の金額

解雇手当の金額は、以下のように法律で定められています。だいたい、1年働いたら1か月分の解雇手当が発生するというイメージです。

もっとも、労働者から無用な労務訴訟を提起されないために、実務的には、法定の解雇手当より少し上乗せして支払う場合も多いです。

4.労使紛争が少ない

インド、インドネシア、ベトナムでは労使紛争がしばしば問題になりますが、タイでは比較的労使紛争は少ないです。

その理由として、(1)労務訴訟の提訴が容易である(無料で、口頭で提訴できる)ため、不平の吸い上げ口があること、(2)労働組合が脆弱であること、(3)比較的穏健な女性労働者が多いこと、(4)なんでも「マイペンライ(気にするな)」と受け流す国民性、などが挙げられています。

労務問題への対処法

(1)配置転換の意味

例えば、ある労働者を人事から営業などに配置転換をすると、日本的に考えれば、癒着防止や多様な職種を経験させるというメリットがあるようにも思われます。

しかし、タイでは、その労働者のキャリアを切断するというマイナス評価をされることが多いので、注意が必要です。

(2)人材確保が困難

タイは東南アジアの中では先進国で、日本のような少子高齢化への道を歩みつつあり、労働者不足が深刻になっています。

また、日本の終身雇用のような考え方はなく、ジョブホッピングと言われる転職が盛んなため、優秀な労働者をどのように確保するかというのが、人事・労務における最大の問題となります。

そのため、これといった優秀な人材には、様々なインセンティブ(例えば、褒賞としての日本旅行など)を与えることが大事です。

(3)肩書社会・高いプライド

タイは日本以上の肩書社会であり、上級者の面子を立てることが特に重要です。

また、面子を重んじる国民性から、労働者を人前で叱責することがご法度とされています。

プロフィール

三宅・山崎法律事務所 弁護士・国際化支援アドバイザー 中山 達樹
[所属・役職]
三宅・山崎法律事務所 弁護士
[略歴]
平成10年 3月 東京大学法学部卒業
平成19年 4月 三宅・山崎法律事務所入所
平成22年 6月 Drew & Napier LLC(シンガポール法律事務所)勤務
平成22年 7月 シンガポール国立大学法学部大学院(アジア法学専攻)卒業
[弁護士会・公職等]
第一東京弁護士会
環太平洋法曹協会(Inter-Pacific Bar Association; IPBA(www.ipba.org))
日本プロ野球選手会公認選手代理人
中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
[著書・論文等]
シンガポールの紛争解決-『民事訴訟』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年2月号掲載)
シンガポールの紛争解決-『商事仲裁』(シンガポール日本商工会議所機関紙「月報」2011年3月号掲載)
『アジア労働法の実務Q&A』商事法務,2011年
『The Dispute Resolution Review (Fifth Edition)』 Law Business Research Ltd,2013年
[URL]
http://www.mylaw.co.jp/

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