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今、注目が集まる 小口の資金を集める新しい金融手法「クラウドファンディング」

株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔

第3回米国のクラウドファンディング法

今回と次回で、米国で成立したクラウドファンディング法の動向と、それを踏まえて日本で議論されている規制緩和の方向性について考えてみたいと思います。

まず最初に、米国のクラウドファンディングに関する法規制についてみてみましょう。

1.JOBS法

2012年4月、米国にて「Jumpstart Our Business Startups Act(いわゆるJOBS法)が成立しました。JOBS法の主たる目的は、インターネットの活用を通じ小規模の成長企業が資金調達を容易に行えるよう規制緩和することで、起業や株式上場(IPO)しやすい環境を作り、雇用創出を生み、経済成長を高めることにあります。

その背景には、2001年以降、株式上場(IPO)件数が激減したことが挙げられます。複雑化している証券規制、そして、エンロン破綻などの反省から導入された内部統制監査(通称SOX)導入による企業に強いられたコスト負担などがその問題点として指摘されておりました。そこで、この米国JOBS法には、ベンチャー企業の資金調達を簡便化する方策として、

  • (1)株式上場(IPO)に関する規制緩和
  • (2)クラウドファンディングに関する規制緩和

が盛り込まれました。

(1)株式上場(IPO)の規制緩和

規模が小さい会社の新規上場を容易にするため、株式上場(IPO)に関しては、以下のような規制が緩和されました。

[1]IPO手続き費用・情報開示負担への対応
直近の売上高が10億ドル未満の会社は、株式上場(IPO)の手続費用負担の軽減とその後の情報開示の規制緩和、内部統制監査(SOX)が5年間適用除外
[2]登録義務負担への対応
資金調達額が500万ドルから5000万ドルの会社は、アメリカ証券取引委員会(SEC)への登録義務が免除
[3]登録義務株主数基準の緩和
アメリカ証券取引委員会(SEC)への株式の登録を義務付けられる株主数の下限が500名から2000名に引き上げ
(2)クラウドファンディングに関する規制緩和

第1回目で述べたように、投下資本に対するリターンを目的としない「寄付型」「購入型」のクラウドファンディングは、従来より、規制の対象にはなっておらず、規制されていたのは、投下資本に対するリターンが分配される「投資型」についてでした。
クラウドファンディングに関する規制緩和は、具体的には、[1]発行企業側と、[2]投資家と発行企業の仲介会社に関する規制緩和となっています。

[1]発行企業に関する規制緩和
SEC登録なしの募集・売出し:プロの投資家(適格機関投資家)のみ → 不特定多数の投資家へ拡大
[2]投資家と発行企業の仲介会社に関する規制緩和
仲介会社:証券会社 → 証券会社以外へ間口の拡大
[1]発行会社に関する規制緩和
今までは、企業がSECへの登録なしに証券の募集・売出しができるのは適格機関投資家とよばれるプロの投資家のみとされおり、起業後間もない企業の資金調達手段は、身内、親戚、エンジェルなどに限られておりました。
それが、クラウドファンディング法によって、不特定多数の投資家に対しする少額の募集が可能になりました。企業は、12か月の間に総額100万ドルを上限とした募集が可能となりました。一方で、投資家保護の観点から、投資家個人の出資に関しては、年収に応じて、年間投資額に上限が設けられております(たとえば、年収10万ドル未満であれば、2000ドル又は年収の5%のいずれか大きいことを超えないこと等)。今回の規制緩和により、一般投資家が非公開企業に投資できる機会や手段を拡大され、起業間もない企業の資金調達の円滑化を図り、次の資金調達手段への橋渡しとなることが期待されています。
[2]ファンディングポータル (仲介する金融業者)に関する規制緩和
クラウドファンディングでは、個人と企業を仲介する金融業者(ファンディングポータル)が登場しますが、証券会社以外にもSEC及び自主規制機関へ登録を条件に認められることになりました。ただし、ファンディングポータルは、SEC及び自主規制機関に登録し、SECの定める規制に従わなければならず、投資に伴うリスクその他、投資家のための理解のために必要となる情報開示を行わなければならないとされています。

なお、JOBS法は、2012年4月に成立しましたが、クラウドファンディングに関係するSEC詳細な規制は策定中であり、未施工となっております。

2.最後に

このような「投資型」のクラウドファンディングに対する規制緩和によって、資金調達の道が広がり、資金調達の円滑が期待されていますが、その一方で、個人投資家に対する詐欺的行為が横行するという懸念の声も聞こえてきます。

米国において成立したクラウドファンディング法は、米国と日本の投資環境が異なることから、そのままの導入は難しいとしても、日本のリスクマネー供給の議論を進めるにあたって、共通の課題を抱えていることから、非常に参考になると考えられます。

次回は、米国を踏まえて、日本で議論されている規制緩和の方向性について考えてみたいと思います。

プロフィール

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
[略歴]
朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
[著書・訳書など]
『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
[URL]
http://ownersbrain.com/

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