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今、注目が集まる 小口の資金を集める新しい金融手法「クラウドファンディング」

株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔

第4回今後の日本のクラウドファンディングの方向性

最終回となる今回は、米国における規制緩和の流れを踏まえ、日本のクラウドファンディングにおける規制緩和の方向性についてお話したいと思います。

1.背景

2013年6月、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」を構成する3本目の矢である成長戦略の概要が明らかになりました。この成長戦略を検討する政府の産業競争力会議では、その核の一つとして、ベンチャーの育成もテーマに掲げられております。そして、それに加え、金融審議会(首相の諮問機関)でも協議されているのが、「新規・成長産業等へのリスクマネー供給に関する議論の状況について」です。

金融審議会では、「経済の持続的成長を実現していくためには新規・成長企業に対するリスクマネーの供給の促進を図っていくことが不可欠だ」という議論のもと、以下のことが検討事項に挙げられております。

「新規・成長産業等へのリスクマネー供給に関する議論の状況について」
  • (1)新興・成長企業へのリスクマネー供給策
    ・金融仲介業者の活用(クラウドファンディング)
    ・地域における資金調達を促す仕組み
  • (2)新規上場(IPO)の推進策
    ・事務負担の軽減
    ・新興市場における株主数基準の見直し
  • (3)上場企業の資金調達の円滑化
    ・上場企業の資金調達に係る期間の短縮
    ・届出前勧誘に係る整理
  • (4)その他
    ・大量保有報告制度の見直し
    ・虚偽記載等に係る賠償責任

議事録をみてみると、次のような議論が進行中であることがわかります。

上記のとおり、米国のJOB法の影響を受け、規模が小さい会社の新規上場を容易にするための株式上場(IPO)する規制緩和(上記2,3,4参照)、そして、起業・新規ビジネスの創出の活性化につながるような「投資型」クラウドファンディング(上記1参照)の枠組みの整備に関する議論がされています。

2.日本の現行制度のもとでの「投資型」クラウドファンディング

今までのところ、日本では、「投資型」クラウドファンディングの実例はありませんが、現行制度のもとでは、「投資型」クラウドファンディングを行うにあたって次のような課題があります。

(1)発行会社に関する規制

現在の日本の制度では、未公開株に関しては、上場株式よりも情報開示が乏しく、不特定多数の一般投資家への募集や販売に対して厳しく制限されております。一般投資家への募集人数が50名を超える場合や、株式の募集総額が1億円以上の場合、発行会社は、原則として有価証券届出書の提出が必要となり、この作成にはかなりの労力を要します。一方、1億円未満であれば少額の募集として有価証券通知書という簡易な書類を提出することで取得勧誘することが認められております。とくに、発行価額が1000万円以下であれば、この有価証券通知書さえも不要となっております。よって、現行制度において、「投資型」のクラウドファンディングを行うとすると、募集総額と募集人数に応じて、発行会社の負担は大きく異なってくることになります。

(2)投資家と発行会社の仲介会社に関する規制

現在の日本の制度で、クラウドファインディング運営会社(仲介会社)が、「投資型」のクラウドファインディングを取り扱おうとすると、有価証券の募集に該当するため、証券会社のように、第1種金融商品取引業者としての登録、いわゆる証券会社としての登録が必要になってきます。そして、証券会社は原則、日本証券業協会が運営する未公開株取引制度(グリーンシート)の銘柄しか広く売ることができず、証券会社以外の金融商品取引業者は原則、未公開株を扱えないこととなっております。

(3)今後の規制緩和の方向性

現在、金融庁において、検討されているのは、仲介会社に関する規制緩和です。「投資型」のクラウドファンディングに対して、証券会社や証券以外の会社でも仲介できるよう金融商品取引法を改正する検討作業に入っているようです。早ければ、年内中に結論が出て、2014年にも、「投資型」クラウドファンディングがスタートすると見込まれております。

3.最後に

金融機関が仲介せずに、個人と個人が結びづける新たな資金が集まる仕組みであるクラウドファンディングは、世界規模が、51億ドルと年々拡大しております。4回にわたってみてきたように、日本ではまだまだ、慈善事業などの社会貢献型の寄付に使われる例が多いといえますが、今後の枠組みの整備と、規制緩和が行われることで、「投資型」のクラウドファンディングが成長する余地は大きいと考えられます。リスクマネーが供給され、お金の流れが変われば、地方も含めて、日本全体が元気になってくる可能性もあり、大変すばらしい仕組みといえます。

ただ、このようなクラウドファンディングの議論を進める中で、いくつか注意しないといけない点があります。まず、米国と日本の投資環境の違いです。米国に比べると、日本は、まだまだ個人投資家のリスクマネーに対する意識が浸透していないように思えます。単純に、米国で導入された枠組みや法制度を用いてもそのままでは根付かないと考えられます。また、インターネット経由で、不特定多数の投資家から小口の資金を集める以上、個人が詐欺などの被害にあわないようにすることも大切です。投資家の保護や悪質な業者の排除するためには、サイトを運営する事業者を絞り込む、さらには、投資家ごとに年間投資額の上限を設けるなどの検討も必要になります。

一方、過度に投資家保護を意識して、規制で縛りすぎると、クラウドファンディングが広がらないという問題もあります。そのためには、資金を調達する発行企業側の積極的な開示とそれを担保する仕組み、そして、投資家のクラウドファンディングに対するマインドの醸成が必要になってくるかと思います。

投資家を配慮しつつ、新規・成長企業へのリスクマネーの供給が促進されるためには、米国との投資環境の違いを念頭に置いたうえで、それらが広く利用されるものとなるよう、発行会社、投資家、仲介会社のニーズを的確に把握し、それを踏まえた枠組みを検討していくことが重要です。

プロフィール

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
[略歴]
朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
[著書・訳書など]
『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
[URL]
http://ownersbrain.com/

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