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中小・中堅企業に求められる人材マネジメント

株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO 大野順也

第4回組織活性化の方程式

これまで論述してきました通り、市場環境の変化等から、画一的な人材マネジメント施策は十分な機能を果たさなくなってきています。そのような中、具体的な効果や成果に結びつく人材マネジメント施策を設計・構築していくためには、事業規模、業種/業界、企業の成長ステージ、社歴等の様々な観点から、自社の現状や問題・課題を捉え、その施策を検討し、設計・構築していく必要があるわけです。つまり、どの企業においても通用するような絶対解となりえる人材マネジメント施策は、残念ながら存在せず、個社それぞれに合ったものを設計・構築するのが現状です。

しかし、第3回のコラムでお話したような、人材マネジメント施策を検討し、設計・構築していく上での基本となる考え方には、いくつか共通するポイントがあります。本コラムでは、私が人材マネジメント施策を設計・構築していく上で重要と考えているポイントを、ふたつご紹介します。ひとつは人材マネジメント施策の企業における在り方、もうひとつは施策そのものの打ち方です。

これまでの人材マネジメント施策は、その言葉の通り、企業が人材(=社員)をマネジメントするための仕組みであり、取組みでした。つまり、これまでは企業から一方通行のマネジメントであったとしても、ある程度は十分に機能していました。しかし昨今では、一方通行の人材マネジメントではなく、企業と社員の双方が実現したい事柄を達成できる人材マネジメントが、これまでよりも増して求められてきています。

そもそも人材マネジメント施策の在り方は、企業からの一方通行ではなく、企業と社員の間にあるということを理解しなければなりません。有効に機能する人材マネジメント施策は、企業からの一方通行ではなく、社員側から見ても有効な人材マネジメントでなくてはならないわけです。ここでもう少し理解を深めて頂くために、事例を紹介したいと思います。

ある企業A社は、人件費を削減することを目的として『早期退職優遇制度』を敷くと共に、退職金の上乗せなどを御旗に社員からの手上げを試みました。その主旨や意図は、制度の言葉の通り、退職を促進するための制度です。一方、ある企業B社は、早期退職優遇制度という言葉を使わずに、『創業チャレンジ支援金』として、前者と同じ退職金の上乗せ同等の金額を、創業支援金として支給することを社員に提示しました。

前後者共に、"一定の金額を社員に支払い社外に出す"状態に何ら変わりはありません。しかし前者は、社員に対してネガティブなメッセージとなる可能性が高く、逆に後者は社員に対してポジティブなメッセージとなる可能性が高いことは言うまでもないでしょう。また後者の場合においては、起業を志向する学生をリクルーティングする際のアピールポイントにすらなる可能性があります。

このように、実現したい状態に沿って、どのようなメッセージで施策を打ち出すのかによって、その効果には大きな差が出ます。つまり、人材マネジメント施策そのものの基本的な在り方を踏まえ、発信するメッセージに至っても、一方通行にならない施策を講じることが求められてくるわけです。

ふたつめは施策の打ち方です。人材マネジメント領域における施策には、人材戦略の策定から組織風土の改革に至るまで、様々な施策が存在します。

これらの施策に着目する際の観点はふたつあります。ひとつは『組織・環境に対して直接影響を与える』もの、もうひとつは『個人(社員)に対して直接影響を与える』ものです。例えば人事制度は組織や環境を整備する観点から、組織・環境に直接影響するのに対して、人材育成は個人(社員)のスキルや能力を向上する観点から、個人(社員)に直接影響を与える施策といえます。この『組織・環境に対して直接影響を与える』施策と『個人(社員)に対して直接影響を与える』施策は、何れか一方だけの施策を講じても、企業内に浸透・定着することは難しく、十分な効果を得ることはできません。この両方の施策をバランスよく講じることで、行動変革を促し、組織活性化を実現することができます。

例えば、新入社員に対して行うビジネスマナー研修の中で、"朝は大きな声で元気良く挨拶しましょう"と、新入社員は学び、そして、その新入社員は始めて配属される先で、学んだ通り元気良く挨拶をしました。すると、職場の先輩社員から"挨拶は分かったから、そこに座って待ってて"と言われたとします。このようなことが職場で起こったとたん、この新入社員が翌日から元気良く挨拶することは無くなるのは火を見るよりも明らかです。これは、新入社員のビジネスマナー研修だけに限ったものではなく、ロジカルシンキング研修や営業研修等で学んだ知識やスキル、また中途社員のやる気や意欲に至るまで、すべて同じことが言えます。つまり、個人のスキルや能力、また意欲等が、組織・環境で認められ評価されなければ、継続的に実施することはなく、成果に繋がることも難しくなるわけです。これは逆もまた然りです。組織・環境が施策を講じることで十分に整備されていたとしても、その組織・環境を活かして活躍できるだけのスキルや能力、またやる気や意欲が社員になければ、その効果は半減します。

このように、『組織・環境に対して直接影響を与える』施策と『個人(社員)に対して直接影響を与える』施策は、その一方ではなく、双方がそれぞれ機能するようにバランスよく実施する必要があるわけです。

これまで4回に分けて、昨今の市場環境や人材マネジメントの現状に沿って、組織活性化のポイントを論述してきました。本コラムの内容が少しでも企業各社様のこれからの成長や発展に寄与すれば幸いです。

プロフィール

株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO 大野順也
[所属・役職]
株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO
[略歴]
株式会社パソナ(現パソナグループ)の営業を経て、営業推進、営業企画部門を歴任し、同社の関連会社の立ち上げも手掛ける。
後に、トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト・トーマツ コンサルティング株式会社)にて、組織・人事戦略コンサルティング業務に従事し、2006年1月に『株式会社アクティブ アンド カンパニー』を設立。
代表取締役に就任。現在に至る。
[URL]
http://www.aand.co.jp/

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