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事業承継の第三の道 分かち合いの資本主義 ~従業員所有会社へのいざない~

株式会社コア・ドライビング・フォース 代表取締役
よいコトnet合同会社 コーファウンダー 代表社員 細川あつし

第3回従業員所有会社化を段階的に進めるメリット

前回は事業承継の第三の道としての従業員所有会社化についてお示ししました。従業員所有会社化は1~2回の株式移動でスパッと実施することも可能ですが、一般には持株比率10%程度の共同所有会社から始めて段階的に持株比率を上げて行く方法を推奨します。

この段階的移行はオーナーにも会社にも多大なメリットをもたらしてくれます。以下に解説いたします。

(1) 低ストレスの資金計画を設計できる。
オーナー所有株式の全株をいきなり移動すると会社や社員に多大な資金負担を強いることになります。またオーナーにとっては株式売却益の全額がある年の所得として計算されるので、多額の所得税が課されます。
従業員所有会社化では、基本的に10年前後をかけて段階的に株式の移動を行って行きますので、上述のストレスは大幅に軽減され、節税も着実に計画することが可能になります。
(2) オーナーの相続対策に有効。
相続の際、順調に経営されている会社の株式はたいへん高額に評価されます。相続税納税の際に手持ち現金が少ないと物納などの手段に頼らざるを得ず、相続人があらぬ苦労を背負い込むことになります。
ここで従業員所有会社化がメリットを発揮してくれます。オーナーがお元気なうちから会社を段階的に従業員所有会社化して行くことで、株式の順次現金化が可能になります。所有株式を減らし現金を増やすことで、個人資産のバランスを適正化することができ、会社の所有権、経営権を保持したまま、無理のない相続対策が可能になるのです。
(3) 二世代にまたがる事業承継が可能。かつ第二世代の意志決定を繰り延べられる。
たとえば、会社が30%従業員所有の共同所有会社となった時点でオーナーが残念ながら亡くなられたとします。第二世代の息子さんは70%の株式を相続し、現金化されていた株式30%相当額を使って相続税を納税します。問題はこの後です。息子さんは事業を引き継いで会社の経営に乗り出すのか、それとも会社は社員の皆さんに任せて自分は自分の道を行くのか、深く悩むところですね。
従業員所有会社モデルでは「事業承継のモラトリアム化」が可能です。つまり息子さんはお父上が亡くなられた時点で事業承継のイエス・ノーを即決しなくて良いのです。息子さんは会社の新経営陣と時間をかけて話し合いを進め、70%の株式を保有したまま会社の経営に乗り出すのか、自分の株式を売り進めて社員の皆さんに会社を委ねつつ創業家株主として見守って行くのか、さらに売り進めて100%従業員所有会社として新たなスタートを切ってもらうのかという選択肢について、時間をかけて意志を固めることができます。

このように、従業員所有会社は事業承継の第三の道としてとても有効な選択肢を目の前に用意してくれるのです。

プロフィール

株式会社コア・ドライビング・フォース 代表取締役
よいコトnet合同会社 コーファウンダー・代表社員
細川あつし
[所属・役職]
株式会社コア・ドライビング・フォース 代表取締役
よいコトnet合同会社 コーファウンダー 代表社員

従業員所有会社化指導、エシカル・ビジネス、ブランディング経営戦略のコンサルティングを主たる業とするほか、よいコトnet合同会社にて都市型ソーシャル・ビジネス・モデル構築を実践。
その他、多くのセミナー・講演活動を行っている。

社会デザイン学修士 (立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科)
[論文・学会発表]
論文:『ソーシャル・ビジネスのデュアル・ミッション性 - その概念、機会と挑戦、及び経営指標の分析と提案』(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科)

論文:『エシカル・ビジネス/ Ethical Value Exchange概念の提案』(21世紀社会デザイン研究学会学会誌「Social Design review Vol.3 2011」)

学会発表:『エシカル・ビジネスの概念とその組織形態に関する一考察 - ネットワーク型組織の倫理的価値交換・共有メカニズムに関するケース・スタディ』(第6回21世紀社会デザイン研究学会年次大会)

学会発表:『Employee-Owned Businessの制度的インフラストラクチャーの検討』(2012年12月:21世紀社会デザイン研究学会第7回年次大会 共同発表)
[URL]
株式会社コア・ドライビング・フォース
よいコトnet合同会社

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