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事業承継の第三の道 分かち合いの資本主義 ~従業員所有会社へのいざない~

株式会社コア・ドライビング・フォース 代表取締役
よいコトnet合同会社 コーファウンダー 代表社員 細川あつし

第4回従業員所有会社成功の3つのカギ

最終回では、強く、社員がしあわせで、永く受け継がれる会社にするための3つのコツをお示しし、従業員所有会社の本質に迫ろうと思います。

ここで重要なのはプロフィット・シェアと情報共有を制度化するということです。2つの制度化がオーナーシップ・カルチャーを促進します。成功している従業員所有会社では、オーナーシップ・カルチャーが2つの制度をさらに促進するという好循環が起きています。

日本に旧来からある従業員持株会は基本的にこの3つが機能していないので、従業員所有会社の要素を備えているとは言えません。

(1)プロフィット・シェア
成功している従業員所有会社はプロフィット・シェアを制度として数値化しています。これが徹底されると、社員は指示されなくてもイノベーションを起こし、仲間と助け合い、挑戦を分かち合うようになるのです。
「今年は奮発して4か月分支給するぞ」という旧来型の賞与では・・・社長のお気持ちはありがたいが「あてがい扶持」としか受け取られません。
(2)情報共有
100%従業員所有の米国メーカーS社では毎週金曜日に会社が3千人の全社員をランチに招き、情報共有の場としています。そこでは競合社に知られてはまずいホットな情報も共有されるそうです。私が情報漏洩リスクに言及したところS社の人は即答しました。「ここは私たちの会社です。利益も困難も共有しています。会社の利益は個人の利益にプロフィット・シェアの形で直結しています。会社も自分も損をする行為を誰がしますか?今まで情報漏洩事件は1件も起きていません。」
情報共有は社員への信頼の制度化なのですね。
(3)オーナーシップ・カルチャー
プロフィット・シェア制度を基盤として情報共有が相互信頼を生み、信頼がさらに共有の「場」を強化する。こうしてオーナーシップ・カルチャーが醸成されます。

S社担当者のお話をご紹介します。「広報の仕事は個人技なので同僚もライバルで、他部門には『余分な仕事を持ちこむ厄介者』と扱われるストレスフルな仕事です。しかしS社に来てその考えがくつがえりました。誰もがとにかく手を差し伸べてくれるのです。同じ部署の中だけではありません。技術部門に外部からの質問を投げかけても、顔も知らない電話口の人が仕事を中断して答えを探し出してくれます。その人は部門長であることも多いのです。部門も役職も関係なく助け合おう、共に会社を良くしようという気持ちが共有されているのです。」

オーナーシップ・カルチャーは別名「部族の文化」とも呼ばれます。わが事のように仲間を助ける。共に挑戦する。職場を清潔に保つ。皆に良い事を人知れず行う・・・もともと日本に息づいていた文化ではありませんか。私が従業員所有会社が日本にぴったりのモデルだと確信したのは、まさにこの文化性ゆえなのです。私たちが「競争」の名のもとにどこかに置き忘れてきてしまったもの、「宝物」がこのモデルには秘められています。

以上「分かち合いの資本主義」の世界をご紹介して参りました。強く、社員がしあわせで、永く継続する事業モデル。優位性の高い事業承継の第三の道。従業員所有会社は現行の日本の法律・税制度で無理なく実現可能です。ご検討なさってみてはいかがでしょうか。

プロフィール

株式会社コア・ドライビング・フォース 代表取締役
よいコトnet合同会社 コーファウンダー・代表社員
細川あつし
[所属・役職]
株式会社コア・ドライビング・フォース 代表取締役
よいコトnet合同会社 コーファウンダー 代表社員

従業員所有会社化指導、エシカル・ビジネス、ブランディング経営戦略のコンサルティングを主たる業とするほか、よいコトnet合同会社にて都市型ソーシャル・ビジネス・モデル構築を実践。
その他、多くのセミナー・講演活動を行っている。

社会デザイン学修士 (立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科)
[論文・学会発表]
論文:『ソーシャル・ビジネスのデュアル・ミッション性 - その概念、機会と挑戦、及び経営指標の分析と提案』(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科)

論文:『エシカル・ビジネス/ Ethical Value Exchange概念の提案』(21世紀社会デザイン研究学会学会誌「Social Design review Vol.3 2011」)

学会発表:『エシカル・ビジネスの概念とその組織形態に関する一考察 - ネットワーク型組織の倫理的価値交換・共有メカニズムに関するケース・スタディ』(第6回21世紀社会デザイン研究学会年次大会)

学会発表:『Employee-Owned Businessの制度的インフラストラクチャーの検討』(2012年12月:21世紀社会デザイン研究学会第7回年次大会 共同発表)
[URL]
株式会社コア・ドライビング・フォース
よいコトnet合同会社

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