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適正な労務管理が会社を救う!(未払残業代請求と労務管理)

ノースブルー総合法律事務所
代表弁護士 國安 耕太

第2回法定時間外労働時間をどうやって算定するのか?

1.労働時間とは?

さて、前回、いわゆる未払残業代請求とは、「労基法上の、1日8時間、1週40時間の上限を超えた労働(時間外労働)を行った場合、割増賃金の支払義務が生じているにもかかわらず、これを支払っていない使用者に対し、この支払いを求めていくもの」であり、「法定時間外労働時間をどのように算定するのか、そもそもどこまでが労働時間に含まれるのか」が大きな問題となるとお伝えしました。
では、つぎの時間は、労働時間に含まれるでしょうか。

上記の時間が、労働時間に含まれるかどうかは、法定時間外労働時間の算定において、極めて重要な意味を持ちます。

[1]通勤時間を例に考えてみましょう。
たとえば、ある使用者が、午前9時から午後6時まで(内1時間休憩)の8時間、社内にて勤務しなければならないと定めているとします。
この場合、社内勤務の時間だけで、1日8時間という上限一杯ですから、仮に通勤時間が労働時間に含まれるのであれば、通勤時間すべてが法定時間外労働時間ということになります。

この点、判例は、「労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」としています(最高裁平成12年3月9日判決、民集54巻3号801頁、三菱重工長崎造船所事件)。
そして、通常、通勤時間は、従業員が自由に使うことができます。電車内での時間をどのようにして過ごそうが、従業員の自由です。読書をしてもいいし、寝ていても、携帯ゲームをしていてもいいのです。

そうすると、通勤時間は、通常、使用者の指揮命令下にはないと考えられます。 したがって、[1]通勤時間は、通常、労働時間に含まれません。同様に、出張の際の移動時間も、原則として労働時間に含まれません。

では、[2]お昼休みの電話番の場合はどうでしょうか。
実は、上記判例は、「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、または、これを余儀なくされたとき」は、「特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ」るとも判示しています。

つまり、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」場合には、原則として、労働時間に該当することになります。
したがって、お昼休みの電話番を、使用者に義務付けられたような場合には、その時間内に実際に電話がかかって来なかったとしても、労働時間に該当することになります。

同様に、[3]制服・作業着着用のための準備時間についても、使用者が、制服・作業着の着用を義務付けているような場合には、労働時間に該当することになります。

以上のとおり、使用者から「義務付けられた」または「余儀なくされた」場合には、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価され、労働時間に該当することになります。

そのため、強制参加の飲み会、業務終了後の研修や教育訓練等についても、労働時間に該当すると判断され、予想外に多額の未払残業代の支払を命じられてしまう危険があるので、注意が必要です。

さて、次回は、未払残業代を請求するため、法定時間外労働時間をどうやって立証するのか等について見ていきたいと思います。

では、最後にクイズです。

解答は、次回発表いたします。お楽しみに!

プロフィール

ノースブルー総合法律事務所 代表弁護士
國安 耕太
[所属・役職]
ノースブルー総合法律事務所 代表弁護士
[略歴]
2002年早稲田大学法学部卒業
2007年中央大学法科大学院修了
2008年弁護士登録(第一東京弁護士会)
2010年中央大学法科大学院実務講師(現任)
2011年中央大学法学部兼任講師(現任)
2013年ノースブルー総合法律事務所開設、代表弁護士

第一東京弁護士会民事介入暴力対策委員会委員、総合法律研究所(知的所有権法)委員
[URL]
ノースブルー総合法律事務所

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