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今、注目が集まる、個人情報保護法改正の動き

弁護士(小笠原六川国際総合法律事務所)
東海大学法科大学院教授
六川 浩明

第2回個人情報保護法の改正動向(2)

ビッグデータとして個人データを利用し活用することが経済活性化のために叫ばれていますが、その一方、個人データに含まれているプライバシーを保護することも重要です。本連載第1回において平成26年6月頃個人情報保護法の改正案が公表される予定であると述べ、そのなかの中心トピックが、本人Aに関する個人データを保有しているB社が、その個人データをC社に提供する場合の要件であることを述べました。

B社が保有する個人データにAのプライバシーが含まれている場合、B社がAの個人データをC社に提供するときにプライバシー侵害の問題が発生することとなります。そうだとすれば、B社からC社に提供しようとする個人データから、プライバシー性を減少させ又は取り去ることができれば、B社はその個人データをC社に対して、Aの承諾なく、提供する可能性が生まれてきます。

それでは、B社が保有しているAの個人データから、Aのプライバシー性を減少させ又は取り去る方法として、いかなる方法があるのでしょうか?

(1)個人データの3段階論
個人データをみると、そのデータが、[1]個人Aのものであることが特定される場合、[2]誰のものであるかは特定できないが、およそ一人の人間の個人データであることがわかる場合、[3]誰のものであるかを特定できないし、およそ一人の人間の個人データであることさえわからない場合、に区別できると言われています。これらのうち、[2]と[3]ではプライバシー性が減少しているといえます。そうだとすると、個人データを、[2]や[3]のように加工すればよいこととなります。
(2)加工の方法
加工の方法としては多くの方法があると言われていますが、個人を特定し得る情報(例:氏名)を削除する(属性削除)、氏名や生年月日等を符号や記号に変換する(仮名化)、住所などを広いエリアに置き換える(あいまい化)、希少な情報の削除等の方法が存在していると言われています。

人間の行動データの加工

個人データの収集は様々な目的で行われます。純粋なビジネス目的の場合もあれば、広く公益に資する目的である場合もあります。とくに東日本大震災後、震災が発生した場合の、市民の避難方法等や誘導方法等に関心が高まっています。
大勢の市民が出入りをする公共の場所、とくにターミナル駅での市民の避難や誘導のためには、そのターミナル駅での時間帯別の、市民の方々の歩行方向、速度、年齢、改札口での滞留時間、通行平均人数、バスやタクシーの稼働・停車台数等をあらかじめ算出しておけば、震災発生時においてそのターミナル駅の係員は市民の方々を適切に誘導し避難させることが可能になると思われます。
そのためには、カメラ設置の利用目的並びにカメラ設置場所を広く事前に公表したうえで、そのターミナル駅を利用する市民の歩行や行動を、様々な角度から設置したカメラをもって記録しデータ化して把握しておく必要があります。たしかにそのカメラに写された映像には市民の顔や姿が映りますが、このカメラは、個々人の顔を撮影することが目的ではなく市民の行動を把握することが目的なのですから、カメラでは市民の顔をアップで撮影することはしませんし、カメラに写された歩行者の姿画像を直ちに特徴量データに置き換え、その直後に歩行者の姿画像は破棄されることとなります。そうすると、結果として作成されるデータは、分毎の歩行者の人数、速度、歩行方向、出現頻度等となります。そのためには、認証技術として、認証のために顔写真をそのまま保有する必要がないなど、個人情報を非識別化され非特定化することが可能な技術かどうかを検証・選択することが必要です。

考えられ得る措置

さて、それでは、本人Aの個人データを取得した事業者Bが、本人Aの個別の承諾なく、外部のC社に提供するための措置として、今後、どのような措置が考えられていくのでしょうか。この点、総務省が平成21年に制定した「匿名データの作成・提供に係るガイドライン」(平成23年3月28日改訂)、米国連邦取引委員会(FTC)が2013年3月に公表した報告書(Protecting Consumer Privacy in an Era of Rapid Change)、IT総合戦略本部のパーソナルデータに関する検討会が平成25年12月に公表した技術検討ワーキンググループ報告書等が参考になります。

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(1)Bが行うべき措置
[1]事業者Bが、Aの個人データを、外部のCに提供しようとする場合、本人Aの同意を得ないで提供しようとする場合には、Aの個人データを閲覧した方が、そのデータがAのものであることを認識できないように加工する必要があります。即ち、Aの個人データから、Aの識別性と特定性を低減させるデータに加工します。
[2]事業者Bは、Cに送信した加工データを、特定化・識別化しないことを約束し公表します。
(2)Cが行うべき措置
[1]受領者Cは、BC間の契約又は法制度に基づき、受領した加工データを、Cにおいて特定化・識別化することを禁止されるべきです。
[2]Cが、加工済みデータを、さらにDに提供する場合においても、BC間と同様の措置がとられるべきです。

プロフィール

弁護士(小笠原六川国際総合法律事務所)
東海大学法科大学院教授(企業法務2,商法演習1,破産法等)
六川 浩明
[所属・役職]
弁護士(小笠原六川国際総合法律事務所)
東海大学法科大学院教授(企業法務2,商法演習1,破産法等)
[略歴]
一橋大学法学部卒。上場会社4社の社外監査役・社外取締役。
首都大学東京・産業技術大学院大学非常勤講師,早稲田大学文化構想学部非常勤講師を兼任。
[最近の共著書]
『裁判例にみる 特別受益・寄与分の実務』(共著、ぎょうせい、2014年2月)
『財務報告実務検定 公式テキスト 2014年版』(共著、TAC出版、2013年6月)
『IPO実務検定 公式テキスト 第4版』(共著、中央経済社、2013年4月)
『ディスクロージャーの業務がわかる』(共著、税務経理協会、2013年1月)
『金融商品取引法 課徴金事例の分析 インサイダー取引編』(共著、商事法務、2012年1月)
『金融商品取引法 課徴金事例の分析 虚偽記載編』(共著、商事法務、2012年1月)
『諸外国等における個人情報保護制度の監督機関に関する検討委員会・報告書』(共著、消費者庁企画課個人情報保護推進室、2011年7月)
[URL]
小笠原六川国際総合法律事務所

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