NIKKEI

トップ>企業マネジメント最新トレンド>実例でわかる特許・意匠・商標

実例でわかる特許・意匠・商標

ノースブルー国際特許事務所 代表弁理士
駒津 啓佑

第3回デザイン保護は意匠?商標?

前回までは、「意匠権」と「特許権」のそれぞれの権利の違いを知って、ぜひ有効な活用方法を検討してみてください!というお話をしてきました。

モノ作りに関する保護といえば、「特許権」と「意匠権」であるとわかっていただけたと思いますが、今回はデザインについて考えていきたいと思います。

ということで、第3回目の今回は「商標権」についてお話ししていきたいと思います。

早速ですが、今回はデザインの話ですのでデザイナーの立場で考えていきましょう。

あなたはリンゴをモチーフにしたデザインしました。さて、どう保護しましょう?

実はこれだけだとどんな権利で保護することが適切かわからないのです。より具体的な内容でご説明します。

(1)リンゴをモチーフにした「ペーパーウェイト」をデザインした場合
このような「物品」のデザインのときは「意匠権」で保護を行います。参考に法律上の「意匠」の定義の簡略バージョンを載せてみます。

images_07.jpg

「意匠権」はデザインの保護に使うんです。と言ったりするわけですが、より具体的に言うと、「意匠権」は「物品」のデザインを保護するために使う権利だと言えるわけです。だから、ペーパーウェイトみたいな物品のデザインは「意匠権」で保護するんですね。

(2)リンゴをモチーフにした、「他の商品・サービスと区別するための」ロゴマークをデザインした場合
このような「他の商品・サービスと区別するための」ロゴマークのデザインのときは「商標権」で保護を行います。あえて「他の商品・サービスと区別するための」と書いたのは、「ロゴマーク」だけだと、「著作権」の問題になってくることがあるからなんです。「著作権」については話が複雑になるので別の機会にさせていただきます。

「他の商品・サービスと区別するための」ロゴマークというのは何かというと、たとえば友達が持っている携帯電話(商品)がどこのメーカーのモノかを知る方法ってどうしますか?携帯電話を見てどんなマークが付いてるかをみたりしますよね?

つまり、「ロゴマーク」や「ネーミング」は「他の商品・サービスと区別する」方法として使われるわけです。そこで「商標権」という権利を作ってその「ロゴマーク」や「ネーミング」を保護することにしたわけです。

この「商標権」で「ロゴマーク」や「ネーミング」が守られることによって、メーカーとしては自社製品を他社製品と勘違いされないですし、消費者としては勘違いしないで商品を買うことができるわけです。「商標権」ってメーカーにとっても、消費者にとっても大事な権利ですね。ありがとう!「商標権」!

「商標権」の権利範囲も、「意匠権」と似ていて、登録された商標と似ているかどうかで判断します。でも、同じ名前の「商標権」を別々の会社が持っているということがあり得るんです。

たとえば「プリウス」というネーミングの「商標権」は車とパソコンで別の会社が持っているんです。ご存じでしたか?車の「プリウス」は皆さんご存じの通りトヨタの車ですよね。当然に「自動車」の「プリウス」という商標はトヨタが持っています。でも、「パソコン」の「プリウス」という商標は実は日立が持っているんです。いまは売っていないようですがちょっと前まで日立は「プリウス」という名前のパソコンを売っていたので意図せずこういうことになっているんでしょうね。いいネーミングというのは誰でも使いたいモノだったりします。

ここで「商標権」の権利範囲に入るかの条件を簡単にまとめてみます。

images_08.jpg

上に書いた2つの条件を満たすとき「商標権」の権利範囲に入ると言えるのです。

では、「プリウス」という商標を車にもパソコンにも似ていない商品(たとえば携帯電話)に付けて販売することが可能になるということでしょうか?いまだとおそらく難しいのではないかと思います。トヨタの「プリウス」があまりに有名になってきたので似ていない商品についても商標権が取れないということが起きるんです。

最終的な判断基準は「消費者が勘違いするかどうか?」ということになります。「携帯電話」に「プリウス」と書いてあったらトヨタが関連しているのかな?と勘違いしちゃいそうですよね。上に書いた通り、「商標権」で「ロゴマーク」や「ネーミング」を守る理由は「他の商品・サービスと区別する」ためだからですね。

今回の最後に同一名称で複数社が「商標権」を持っている場合の例を挙げてみます。

images_09.jpg

よくよく考えるといろいろありますね。実は奥が深い「商標権」!!

今回の結論は、同じ名前でも「商標権」の侵害にならないことがあります。もし警告書が他人から来たときでもすぐに白旗をあげないで、ゆっくり考えて近くの弁理士に相談してみてくださいね。

それと、商標の出願の願書がぺらぺらだからといって簡単だと思わないで!軽く考えないで!けっこういろいろ状況を考えていかないと適切な権利範囲になっていないこともあるんですよ!というお話でした。

少しでも「商標権」の奥深さを体感していただけたでしょうか。

さて次回は最終回ということで、権利活用のまとめなどをお話しさせていただこうと思います。

それでは次回もまた見てくださいね。

プロフィール

ノースブルー国際特許事務所 代表弁理士
駒津 啓佑
[所属・役職]
ノースブルー国際特許事務所 代表弁理士
[略歴]
2000年~2001年 ネットワーク管理補助業務に従事
2003年 情報セキュリティアドミニストレータ試験合格
2004年 東京理科大学卒業
2004年~2006年 国内中規模特許事務所勤務
大手企業のIT、ネットワーク、画像処理、自動車、半導体関連特許の弁理士補助業務に従事
2006年~2012年 国内小規模特許事務所勤務
2009年 弁理士試験合格
大手企業から個人までの特許・意匠・商標の弁理士業務・補助業務に従事
2011年4月~2013年3月 日本弁理士会 知的財産価値評価推進センター
2012年~ 前所長弁理士から事務所を承継し、事務所経営
侵害事件・ライセンス交渉などを含めたコンサルティングまで業務拡充。
弁護士、税理士、会計士、コンサルタントなどの他業種専門家との提携を深める。
2013年 事務所移転より事務所名称変更。
ものづくりとブランディングについてどんな相談に対しても解決策を提示できる事務所を目指して活動中。

[バックナンバー]実例でわかる特許・意匠・商標

企業マネジメント最新トレンド 一覧へ

日経産業新聞 ビジネス動画 動画で見る、話題の新製品・先端技術 詳しくはこちら

日本大学 通信教育部

月間アクセスランキング

  1. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の具体的な改正内容とその対応のスケジュール
  2. 企業マネジメント最新トレンド
    グローバルに対応しうる事業戦略とは
  3. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正において、企業が取組むべきこと
  4. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正における具体的な取組み方法
  5. 企業マネジメント最新トレンド
    企業価値とは何か。経営にどう影響するのか

日経産業新聞ピックアップ

2017年6月23日付
  • ドローン・3D、セット貸し 中小の建設会社向け、オリックス系と国際航業
  • 日本工営、福島で小水力発電所
  • IDEC、ナノバブル測定サービス 応用研究を支援
  • 東レ・デュポン、設備投資50億円 フィルムやゴム用繊維で
  • ゴルフを手軽に楽しんで、ブリヂストンスポーツ 屋内施設を展開

経営喝!力 ビジネスIT活用index