NIKKEI

トップ>企業マネジメント最新トレンド>ISO9001及びISO14001の2015年改正において、企業が取組むべきこと

ISO9001及びISO14001の2015年改正において、企業が取組むべきこと

ISOマネジメント研究所 所長 人見 隆之

第4回ISO9001及びISO14001の2015年改正を契機としたISOの活用方法

1.審査のためのISOはやってはいけない

ある企業では、審査の度に、マニュアルや様式の見直しを指摘され、毎年、改訂作業を行うのだそうです。これは、来る審査員が毎年異なり、毎年、審査員の観点の違いによって、その変更が要求されるからだといいます。結局、この会社のISOの活動は、審査員の気に入る様式や文書にすること、書類の体裁を整えることが主な活動になってしまっているといいます。ISOのユーザーは誰かというと、審査員や審査機関、コンサルタントではありません。ISOを活用するのは、自分たちの組織なのですから、ISOは自分たちの組織のために行うものとしなければならないと思います。審査機関によって、審査費用や審査の行い方など異なっているのが、現状です。2014年の3月末現在で、日本国内で活動している審査機関の数は、59あります。どんな審査機関があるかは、公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)のホームページで一部公開されています。今回の2015年改正を契機に、今まで行われてきた審査や審査で出された報告書の内容は、ちゃんと審査費用に見合ったものなのか、そもそも審査機関が自社にあっているのかという検証が必要です。また、考えてみますと、審査受審はISOを効果的に運用するための手段であり、目的ではありません。審査の日がISOの本番ではなく、日常業務の毎日の日々に本番があるのですから、審査自体役に立っていないのであれば、ISO認証を返上して、ISO規格適合の自己宣言で済ますというのも一つの選択肢だと思います。

2.ISOは目的ではなく、ツールである

ISOは目的ではなく、仕事をうまくやるためのツールです。どのようにISOを使うかは企業に委ねられています。ISOでは、何をするかは要求事項の中で、規定していますが、具体的にどうするかは規定していません。それは、2015年版の規格においても同様です。さらに、ISOは、構築する仕組みの画一化又は文書の画一化を意図していません。つまり、そのやり方は、すでに取得した企業のマネをすることではなく、また、大企業のマネをすることでもないということです。ISOの仕組みは、自分たちの仕事の特性や会社独自の事情を考慮して、決めていくことに本来の姿があります。ツールとしてのISOを考えますと、たとえば、会社として行うべきことに、経営方針の確立があります。これは、ISOの仕組みでいいますと、「組織の状況、リーダーシップ、計画」が該当します。さらに、最近より重要性を増していますリスク管理体制の確立は、「リスク及び機会への取組み」に該当しますし、組織として必要なチェック体制の確立は、「内部監査」が該当します。このように、ISOが経営のツールとして活用できる、このことがISOを運用する根拠となります。

images_09.jpg

3.人を活かす仕組み作り

結局、どんなに立派な仕組みを作ったとしてもその仕組みを動かすのは、人です。P・F・ドラッカーは、『マネジメント(上)』(ダイヤモンド社)という本の中で、「マネジメントは仕組みによってではなく、人によってしか実現できない」と述べています。今回の2015年改正において、本質を考えれば、見直すべきものは、ツールであるマニュアルなどの文書や様式というよりは、人のあり方を見直すことだと思います。たとえば、我が社は、大局的な視点を持って、リスクや機会を敏感に感じ取れる社員を育てているのか、各々の社員はどれだけ主体性を発揮しているのか、また、我が社は、どれだけ、人を活かしているのか、ということを検証してみることです。人を中心に考え、管理という手法よりも、現場に任せて、信頼し、皆が各人を認めてあげる、皆で一緒に答えを作る、このことが、組織においてより大事だと実感します。具体的に行うべきことは、上司と部下がお互い信頼できる、同じ会社の一員として皆が信頼できる、自分と会社が信頼できる組織を作ることです。これを作るには、組織の価値観の質を向上させることにあります。たとえば、問題があってはならないとするのではなく、問題があるのは当たり前であると考える、失敗した人を責めるのではなく、失敗したコトを追求していく、社員同士、建前で接するのではなく、本音で接するというような価値観にバージョンアップしていくことです。組織におけるすべての行動は、結局、その組織の価値観に基づいています。最後になりますが、今回のISOの2015年改正を契機として、自社における仕組みは有効なものなのか、そして、どう自社はあるべきなのか、といったことを考えるきっかけになり、企業のさらなる発展につながることができれば幸いに存じます。

images_10.jpg

プロフィール

ISOマネジメント研究所 所長 人見 隆之
[所属・役職]
ISOマネジメント研究所 所長
[略歴]
中央大学法学部卒業。マーケティングリサーチ会社やIT企業などを経て、2001年9月に独立し、中堅・中小企業の経営の仕組み構築を支援するISOマネジメント研究所を設立。ISOコンサルティングサービスに特化し、製造業、印刷業、IT、介護施設、物流業など、様々な業界を支援し、支援企業は300社以上。気軽に、気安く、わかりやすくをモットーに、約8割の企業が継続契約している。
[著書・訳書など]
『「自分から教わる!」技術』日本実業出版社
『納税通信』エヌピー通信社:コラム掲載
[URL]
ISOマネジメント研究所

[バックナンバー]ISO9001及びISO14001の2015年改正において、企業が取組むべきこと

企業マネジメント最新トレンド 一覧へ

日経産業新聞 ビジネス動画 動画で見る、話題の新製品・先端技術 詳しくはこちら

日本大学 通信教育部

月間アクセスランキング

  1. 企業マネジメント最新トレンド
    グローバルに対応しうる事業戦略とは
  2. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の具体的な改正内容とその対応のスケジュール
  3. 企業マネジメント最新トレンド
    正しい売上・利益計画の立て方
  4. 企業マネジメント最新トレンド
    企業価値とは何か。経営にどう影響するのか
  5. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正における具体的な取組み方法

経営喝!力 ビジネスIT活用index