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Credo Strategy~2025年のマネジメント新戦略~

日本クレド株式会社 代表 吉田誠一郎

第2回Globalでも通用する"強い価値観"を築く

1. Credoとは

最近、日本を代表する経営者としてメディアに取りあげられる人物に、松本晃(まつもとあきら)氏がいる。昨年、日経ビジネスの「経営教室」を執筆されたカルビー会長兼CEOである。カルビーの業績急伸の立役者として注目されている。松本氏はかつてジョンソン・エンド・ジョンソンの社長を歴任。その折にジョンソン・エンド・ジョンソンが事業経営の中核に据えるCredoと出会い積極的に実践の指揮をとってきた。松本氏は「Credoは世界で最も優れたビジネスのドキュメント(方針書)」とも語っている。このジョンソン・エンド・ジョンソンとはどんな企業で、そこに存在するCredoとは一体どんなものなのか?

2. Credoが持つ価値

1886年にアメリカで創業されたジョンソン・エンド・ジョンソンは医療品、医療機器の製造販売会社である。社員数は全世界11万人を超え、売上も713億ドル(2013年)を誇るグローバル企業である。米国の雑誌FORTUNEが毎年選ぶMost Admired Companyの上位に名を連ね続ける。同社はCredoと呼ばれる企業理念を今から約70年前の1943年にその原型を作成。全てのマネジャー、従業員が実践すべき価値基準として活用している。そしてマネジメントの根幹にCredoを据え長期に渡って高い業績を出し続けている。
その内容は、4つのパラグラフから成り、順番に「顧客への責任(一部、取引先への責任)」「従業員への責任」「地域社会への責任」「株主への責任」で構成されている。
一文一文は「ステークホルダーへの責任と貢献」を表明しているのだ。Credoの実践を従業員とコミットし、組織内に倫理的なビジネススピリットを生み出し、顧客価値の向上に貢献し、リスクに強いガバナンスが整った組織を作り出す。ステークホルダーもそんな組織を信頼し支える。このようなマネジメントを誠実に実践すれば、どんな難局にも勝ち進むことが出来るとジョンソン・エンド・ジョンソンという企業は強く信じている。

またCredoと言えばグローバルにホテル事業を展開するザ・リッツカールトンホテルが読者にはよく認知されているだろう。従業員に高いホスピタリティマインドを醸成し、顧客エンゲージメントを高めるツールとして多くのメディアが取り上げている。そのザ・リッツカールトンホテルのCredoを参考にして自社のCredoをつくる企業が後を絶たない。

3. Credoの定義

私たち日本クレドではCredoを2つのポイントで定義している。

  • (1)ジョンソン・エンド・ジョンソンのCredoの考え方を基に、ステークホルダーへの貢献、つまり彼らの"価値を向上させる"マネジメントツールと定義している。これにはやや意外な感覚を持たれるかもしれない。自分たちの価値を向上させるためのCredoではないのか?と。要するにまず自分たちのステークホルダーの価値を高めるというAltruism(利他心)的な行動をCredoが喚起し、それが自社の信頼を高め、価値を高めるスパイラルを引き起こすという考え方である。日本古来の商の信条である「三方よし」であったり、Pay It Forward(和訳、情けは人のためならず)であったりが近似の考えといえる。
  • (2)Credoはどの企業にも創業当初から存在する企業理念を実現するためのプロセスであると定義している。プロセスといっている通りマネジメントのPDCAサイクルの中核に落とし込まれ、向上と改善の活動に直結して活用されるものである。つまり文章や言葉を紡ぎ、朝礼で唱和をして納得するような抽象的で感覚的なものではない、ということだ。マネジメントプロセスに落とし込むことでマネジャーや従業員の行動に反映され、組織を活性化していくものなのだ。

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4. CredoはVisionary Exchangeツール

Credoはこうしてマネジメントにイノベーションを起こすツールとして認識されるべきである。しかし残念なことにホスピタリティや顧客満足を向上させるための近視眼的なツールとして捉えている企業が実は多い。前回(第1回)のコラムで述べたようにManagement Resourceを惹きつける役割を担っているのがCredoなのだ。

それはどういうことなのか?失敗事例が反面教師として参考になるので引用する。ある企業が商品開発のために外部のITベンダーと共同でプロジェクトをスタートさせることとなった。提案書を吟味し、相見積もりを取り、担当者と面談を重ね、好感触だった1社と契約した。しかしスタート後から商品開発のプロジェクトは徐々に行き詰まりを見せ始めた。仕様書や契約事項は遵守されているのに、お互いの意見が噛み合わなくなってしまったのである。原因は何か?この企業にとっては自社顧客の抱える課題解決をすることが今回のプロジェクトのミッションである。自社のCredoにも同様の文面が掲げられている。一方ITベンダーの方は、自社の商品サービスの優位性には絶対の自信を持っている。しかし課題解決を共に実行していくという想いは、そこにはなかった。まさに同床異夢であったという訳だ。要するにVisionary Exchange(理念の共感)をすることなく、お互いの価値観を共有できない中でプロジェクトをスタートさせた結果だといえる。これでは価値あるビジネスを実践し、高いパフォーマンスを顧客に提供することなど到底できないのだ。本コラムのテーマとして考えている2025年のビジネスシーンでは、このVisionary Exchangeが非常に重視されることとなるだろう。それは取引事業者だけではなく、ビジネスを共に成功に導く従業員、サポートしている外部専門家にも同様に言えることである。

5. Globalでも通用する価値観

欧米を含め海外の企業では、こういったビジネス取引の際、お互いの価値観や企業理念を語ることが不可欠だという。先日もビジネス視察で来日したアジア、アフリカ諸国の経営者と会談する機会があったが、彼らも企業理念に高い関心を持っていた。ビジネス上の取引の際には相手先の理念を非常に重要視していると述べていたし、従業員に自社の企業理念を実践・遵守させるための教育には重要な価値があるとも述べていた。私たち日本企業もグローバル化が不可欠な時代となり、企業理念を自社の内外に強く発信する必要があることへの認識を深めていきたい。

プロフィール

日本クレド株式会社 代表取締役 吉田誠一郎
[所属・役職]
日本クレド株式会社 代表取締役
[略歴]
企業理念、コーポレートブランディング開発を主たる業務とするコンサルティング会社代表。福岡県出身。明治学院大学卒業。2004年日本クレド株式会社設立。
[著書]
「クレドが考えて動く社員をつくる(日本実業出版)」など
[URL]
http://j-credo.com/

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