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儲けの構造を知り、目標実現する経営のコクピット

株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔

第1回会社の儲けの構造をビジュアルで理解

1.利益が見える経営のコクピット

売上が上がっているのに、利益がなかなかでない。また、ちゃんと、計画を立て、目標の売上目標は達成したものの予想した利益はクリアーできなかった。。。
この状況のままでは、安心して、人材採用や未来に向けた投資ができません。

お話を伺うと、勘に頼って、アバウトな数字の把握(どんぶり勘定)になってしまっているようです。だからといって、高度な会計の知識や難しい算定式などの必要はありません。

大事なことは、

  • (1)「自社のお金の流れはどうなっているのか?」「なぜ儲かっているのか、どこが悪くて損をしているか」という儲けの仕組みを理解した上で、
  • (2)数字の判断基準を持ち
  • (3)正しい方法で、利益計画を立て、数字に対する意識を変えることです。

どんなに数字が苦手な人でも、イメージで理解できるような面積図を使うと、単純明快に理解できます。これこそ、儲けるための会計。

以前は、投資や株主のような外部のための人に報告するための会計というお話をしましたが、今回は、経営者が経営に活かすための会計を扱います。

京セラを創業、日本航空(JAL)を再建させた、稲盛和夫さんは、「経営を飛行機の操縦に例えるならば、会計データは経営のコクピットにある計器盤に表れる数字に相当する」とおっしゃいます。

  • 当社にとって人件費や、社長が受けとれる報酬の上限はいくらまでか
  • 来期、どれだけ未来に向けた投資を行えるか
  • 来期、必ず達成しなければならない売上高はいくらか

この4回を通じて、経営の状況をコックピットのように、面積や数字で把握して、後手後手にならず、的確な判断ができるような経営者のための管理会計を一緒に考えていきたいと思います。

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2.儲けの仕組み

第1回となる今回のテーマは、「儲けの仕組み」を理解する。
まずは、次の問題を考えてみましょう。

貴社では、来期の事業計画をどのように作成されてますでしょうか?
「売上を○%伸ばそう!」などと決めてませんか!?

(問)今期の決算が、以下のような場合、来期の売上を10%UPと計画した場合、来期の営業利益はいくらになると予測しますか?

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もしかすると、営業利益も10%伸びると考えませんでしたか?
実は、このような財務会計の情報からだけでは、答えられません。
なぜかというと、変動費と固定費に分けて考えていないからです。
売上原価、販売費及び一般管理費と呼ばれるコストは、売上に関係して発生する変動費と、売上に関係なく発生する固定費があるからです。例えば、変動費は、流通業でいうと、仕入原価。製造業でいうと、原材料です。固定費は、人件費、賃借料などです。

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変動費と固定費を分けて考えることによって、会社のお金と儲けの構造を知ることができるようになります。
もう一つ、計画を立てる際の重要な問題があります。それは、売上からスタートして、売上に応じた費用を引いて、結果として、残れば利益、残らなければ赤字という考えで計画を立てている点です。計画を立てる大事なプロセスは、最初に、必要な利益を考えて、次に回収しないといけない固定費を加えて、稼がないといけない粗利益を算出して、それを基に、目標売上を立てる逆算思考です。これこそ、ちゃんとした根拠をもった、意図した売上です。このように、根拠があるからこそ、その数字を必ず達成しようという意識に変わっていくのです。

計画の立て方については、最終回に詳しくお話するとして、ここでは、儲けの構造についてもう少し解説を加えます。

先ほどの変動費と固定費を図で表すと、下のようになります。

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さらに、この図に、売上を示す45%の線を表してみると、以下のようになります。
(45%の線上は、縦と横の値が同じになるため、横軸を縦軸に読み替えることができます。)
費用と売上が重なるところが、損益がトントンになる損益分岐点です。
つまり、売上が損益分岐点を下回れば赤字となり、上回れば黒字で利益がでます。
そして、損益分岐点が低いほど、売上額との差が出て利益が多くなります。

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この表をさらに、面積図で表してみたいと思います。
売上から変動費を引いたものを、管理会計の世界では、限界利益と呼びますが、ここでは、粗利益という表現で説明したいと思います。
そして、粗利益から固定費を引いたものが営業利益となります。

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先ほどの、10%売上が増えた場合の営業利益は、上記の面積を埋めることで計算できます。
この面積図の最も重要なポイントは、「粗利益」と「固定費」の2つの面積の関係です。

すなわち、

  • (1)粗利益=固定費 → 損益分岐点 → 損益トントン
  • (2)粗利益>固定費 → 採算が取れている
  • (3)粗利益<固定費 → 採算が取れていない

ということを表しているということです。

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3.安全余裕率とダム式経営

ここで、再び、全体の面積を見てみましょう

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左側は、売上2,000、経常利益200の状態で、右側は、粗利益=固定費=300で損益がトントンとなる損益分岐点の売上1,200の状態です。このように、売上が、2,000→1,200へ40%(=(2,000-1,200)÷2,000)下がると、損益トントンとなることから、安全余裕率が25%であるといいます。
これは、見方を変えると、売上が40%下がってもまだ、赤字にならないということです。

松下幸之助さんは、万が一に備えて、調子が良い時こそに水をためておく、ダム式経営、また、稲盛和夫さんは、"土俵の真ん中で相撲をとること"が大事であると表現されます。
安全余裕率が高いことは、まさに、それを示しています。

売上がどれぐらいで損益がトントンになるか、どれだけ売上が落ち込めば、赤字になってしまうか、目標利益をあげるためには、どれだけ売上が必要か、経営のコクピットで常に確認する必要があります。

このように、儲けるためには、採算ラインである損益分岐点を意識し、常に安全余裕率を高めておく、そのためには、固定費を回収できるような粗利益をあげることが重要であることがわかります。

次回は、儲けるための手法を掘り下げて考えてみたいと思います。

プロフィール

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
[略歴]
朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
[著書・訳書など]
『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
[URL]
http://ownersbrain.com/

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