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儲けの構造を知り、目標実現する経営のコクピット

株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔

第2回儲けるための3つの手法

1.はじめに

京セラを創業、日本航空(JAL)を再建させた稲盛和夫さんは、会社経営にあたって、(1)フィロソフィー(経営哲学)の浸透と(2)管理会計システムの導入による、数字を見える化と採算管理の徹底が大事であるとおっしゃっております。儲けるためには、前回からお話している、この管理会計を使いこなすことが重要です。

前回は、費用を変動費と固定費に分け、面積図を使って、儲けの構造をご説明しました。
今回は、さらに、ビジネスの業界ごとに儲けの構造をみて、儲けるための手法について考えてみたいと思います。

2.業種による固定費・変動費の違い

(問題1)産業当てクイズ
A社は、変動費中心の業界、B社は、固定費中心の業界、C社は、変動費も固定費も少なくない業界です。A社、B社、C社は、それぞれどれに当てはまりますでしょうか?

(1)家電、(2)自動車、(3)ソフトウエア、(4)IT企業(ポータルサイトのプロバイダーなど)、(5)ホテル、(6)製薬、

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(回答)
A社・・・(1)家電、(2)自動車
B社・・・(3)ソフトウエア、(5)ホテル、(6)製薬業界
C社・・・(4)IT企業

変動費中心の業界(A社)は、モノを扱う業界で例えば、家電、自動車など材料費が多い業界が当てはまります。固定費中心の業界(B社)は、サービス業やソフトウエア業界など人件費、場所代、研究開発費にお金をかける業界が当てはまります。
変動費も固定費も低い業界(C社)は、ポータルサイトのプロバイダーや、ASPサービスなどのIT企業が当てはまります。

次に、A社、B社、C社のコスト構造の違いから、売上が変動した場合に利益がどのように変化するか考えてみたいと思います。

(問題2)A社、B社、C社それぞれ損益がトントンとなる損益分岐点売上高と安全余裕率はどのようになるでしょうか?

(答)
・損益分岐点売上高(A社:1,200、B社:1,600、C社:250)
・安全余裕率(A社:40%、B社:20% 、C社:87.5% )
A社:(2,000-1,200)÷2,000=40%
B社:(2,000-1,600)÷2,000=20%
C社:(2,000-250)÷2,000=87.5%

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固定費が小さいほど、安全余裕率は高まることが分かります。特に、C社は、現状よりも87.5%売上が下落しても、損益がトントンと非常に安全度が高いといえます。

(問題3)
売上が好景気で、3,000まで伸びた場合、不況で、1,000まで落ちた時の、利益はどのように変化するでしょうか?

(答え)
・売上3,000 →利益(A社:450、B社:700、C社:2,200)
・売上1,000 →利益(A社:▲50、B社:▲300 、C社:600 )

image_11.jpg

A社は、変動費が大きく、固定費が小さいため、損益分岐点売上高が低いところにあります。このため、大きな売上を上げても、利益がそれほど、大きくでない一方で、景気が悪くなって、売上が目標に達しなかったとしても、大きな赤字にはなりません。

B社は、固定費が大きく、変動費が小さいため、損益分岐点売上高が高いところにあります。このため、大きな売上を上げると、利益が大きくでますが、景気が悪くなって、売上が目標に達しなかったとしても、大きな赤字となってしまいます。

C社は、売上の変動に関係なく安定して一定の利益を出しつづけています。

3.利益を拡大するための3つの手法

では、次に、利益を拡大するための手法についてお話したいと思います。
面積図からもわかるように、分解すると次の3つ手法があることが分かります。

  • (1)売上を増やす:売価UP、販売数量UP、新商品の開発
  • (2)変動費を下げる:変動費の引き下げ、販売ミックスの改善、集中購買や部品共通化による調達コスト削減
  • (3)固定費を下げる:不要業務なくす、使用量の節約、金利カット、無駄な設備投資を節約

A社、B社、C社のように固定費と変動費の構造が違いから、売上高の増減が利益に与えるインパクトが異なるため、(1)~(3)の採るべき手法の優先順位は業種ごとに異なりますが、とくに、最近のように、売上予測が難しい時代には、売上が減少することのリスクにいかに対応することがポイントになると思われます。

例えば、B社のように、売上が大きく減少した時には、固定費が大きいと大きな赤字となってしまいます。このため、売上が減少傾向にあるときには、まずは、人件費、家賃、減価償却費などの固定費削減を優先させる必要があります。C社にように、粗利さえ出ていれば、極端な話、費用をすべて変動費化できれば、売上に関係なく利益を稼ぐことができようになります。

一方、売上が増加するときには、固定費はすでに回収されているので、売上に連動する変動費を削減することが効果的といえます。たとえば、小売業だと、現金による大量仕入れ、決済を現金にすることでの値引き交渉、仕入先の見直しでの仕入単価見直し。製造業では、製造工程の変更、物流コストの見直しなどが上げられます。大手の電機メーカーは、部品の共通化、集中購買等により変動費削減を実現してます。

このように、昨今の環境の変化が激しい中、ポイントとなるのは、予期せぬ売上の下落が起きたとしても、利益を出す損益構造を創りだすことだと言えます。

固定費・変動費の観点からは、売上落ち込んだ時にだけ減らすだけでなく、たとえ、売上が増えた場合でも、増えてしまいがちな、固定費・変動費をしっかりモニタリングし、生産性を高める。つまり、どんなにお金が入ってきても、生活水準は変えないということが、財務体質を強化する上で、経営者が、意識しないといけないポイントと思います。

それでは、次回は、利益を拡大する手法の①売上増大のための戦略を掘り下げてみたいと思います。

プロフィール

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
[略歴]
朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
[著書・訳書など]
『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
[URL]
http://ownersbrain.com/

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