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儲けの構造を知り、目標実現する経営のコクピット

株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔

第3回ブランド戦略 vs 低価格戦略

1.売価と販売量の変化が利益に与える影響

前回は、利益を拡大するための3つの手法、(1)売上を増やす、(2)変動費を下げる、(3)固定費を下げることの中から、(2)変動費を下げる、(3)固定費を下げることについてお話しました。今回は、(1)売上を増やす手法についてお話したいと思います。

売上を増やす手法は、大きく、(1)売価を上げる、(2)販売数量を上げる、の2つに分解できます。
戦略研究の第一人者であるハーバード大学のマイケル・E・ポーター教授は、企業が持続的に競争優位を確立するためのフレームワークを、(1)コストリーダーシップ戦略(低価格化戦略)(2)差別化戦略、(3)焦点集中化戦略(絞り込み戦略)の3つに分類されております。
(1)低価格戦略は、価格を低くして数量で勝負する戦略です。(2)差別化戦略は、ブランド戦略とも言い換えられ、数多く売るよりも、価格を高く維持することに重きを置く戦略といえます。
今まで、低価格戦略中心だった企業も、ここ最近になって、プレミアム商品を充実させるなど、ブランド戦略にシフトしてきたと感じます。

それでは、ブランド戦略と低価格戦略が与える利益の影響について面積図を使って考えてみたいと思います。

◆具体例

一つあたりの販売価格200、変動費100の商品を、10個販売します。固定費が800の場合は、以下の図のように、売上2,000、粗利益1,000、営業利益は200となります。

image_12.jpg

(問題1)つぎのようなケースで、利益はそれぞれどのように変化するでしょうか?

  • (1)10%単価UP
  • (2)10%数量UP
  • (3)10%単価DOWN
  • (4)10%数量DOWN

image_13.jpg

2.低価格戦略のリスク

(問題2)つぎに、10%単価下げて、10%数量上げるとどのようになるでしょうか?

image_14.jpg

もともと、200あった営業利益は、80に減ってしまっています。
つまり、10%の価格低下を数量10%増やすことで補おうと思っても補いきれないことが分かります。なぜかというと、数量を減らしても、1個当たりの粗利益100自体は変わらないのですが、価格を下げると、1個当たりの粗利益は100→80と少なくなり、その分固定費の回収が大変になるからです。

(問題3)価格を10%減少したら、数量を何%UPすれば営業利益がトントンになるでしょうか?

image_15.jpg

図のように、12.3個まで増やさないと元の200の営業利益を確保できないことが分かります。
このように、利益を稼ぐうえで、大事なことは、単に、売上を上げればよいのではなく、粗利益を増やさければならないということです。売上を増やすことにばかり集中して、安易に価格を下げることは、逆に、経営を悪化させかねません。大事なことは、粗利益を高める、つまりは、できるだけ、価格を維持するブランド戦略ことが利益を稼ぐ上でのポイントです。

3.プライシング~価格・サービスの値付けのポイント

では、低価格戦略がうまくいく場合とはどんな場合でしょうか?
以前、ブームになった、100円ハンバーガー、また、牛丼チェーンの価格競争が参考になります。ここでポイントになることは、上記のように、10%価格を下げても、23%数量が増えれば以前の利益を確保できるということから、低価格戦略によって、かなりのボリュームが増えることが予測される場合には、有効といえます。もちろん、粗利益がマイナスになってはいけませんが、粗利益が確保できるような変動費が低いビジネスでは、価格戦略によって、ボリュームが増えることで大きな利益を上げることができるといえます。

(低価格戦略の成功条件)
  • (1)変動費率が低いこと
  • (2)売上数量が増えること

ただ、昨今の状況をみていると、低価格戦略によっても、売上ボリュームを上げることができず、結果、厳しい現実にさらされてしまっている会社が多いことも否めません。稲盛和夫さんは、「値決めは経営」とおっしゃっています。標準的なコストに利益をプラスして値段を決めるのではなく、経営者が慎重に知恵を絞って値決めをすることが必要で、そのためには、「お客様が納得して、喜んで買って下さる最高の値段を見ぬき、その値段で売ることが重要である」とおっしゃいます。

安易な値引きは命取りになります。ここ数年の平均営業利益率のデータを見てみると、欧米企業が10%前後であるのに対し、日本企業は、5%前後となっており、まだまだ、日本企業は、高収益化が実現できていないことがうかがえます。原価低減、効率化などのコスト削減では、日本企業が成果を上げていることから考えると、プライシング(値決め)に問題があるとも考えられます。つまり、市場シェアや、売上を重視するあまり、値引きをして、その結果、利益を悪化させてしまっている可能性があるのです。

価格戦略にあたって、利益に及ぼす影響を考えずに、安易に価格設定をしてしまってないでしょうか?

プライシングに失敗しないためにも、経営のコクピットで、常に、商品やサービスの粗利益率をチェックしておくことが必要です。

最終回となる第4回は、正しい売上・利益計画の作り方についてお話したいと思います。

プロフィール

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
[略歴]
朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
[著書・訳書など]
『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
[URL]
http://ownersbrain.com/

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