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儲けの構造を知り、目標実現する経営のコクピット

株式会社 オーナーズブレイン 小泉大輔

第4回正しい売上・利益計画の立て方

1.正しい売上・利益計画の立て方とは

4回の連載を通じて、儲けるための会計のお話をしてきました。最終回の今回は、正しい売上・利益計画の立て方についてお話したいと思います。これは、今後の行き先を決める経営のコックピットを活用する上でもっとも重要な考え方です。
計画が達成しないその原因の多くは、計画を立てる際に、正しい方法で計画が立てられていないことが考えられます。重要な考え方は、

最初に目指すべき売上を考えるのではなく、回収すべき固定費と必要な利益を考えた上で、それを稼ぐためにどれだけ売上が必要かを考える

ということです。

たとえば、来期の予想を立てる際、ここ数年間の売上の推移が以下のようだったとします。

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その際、来期の売上を予測する際、1年間の平均値を計算し、その平均値をベースにその○○%UP、あるいは、昨年の○○%UPなどと、計画を立てる方も多いのではないかと思います。

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しかし、このやり方では、数字が平均化され、算出される数字が曖昧となってしまい、意識された数字になりません。大事なことは、数字に対する意識を変えるということです。そこで、まず、今まで見てきたように、損益がトントンとなる、損益分岐点がどこかであるかを把握する。その上で、必要な利益を積み上げて、根拠ある数字を算出することは、経営上とても大切です。つまり、底を知った上で、+α分の底上げする。それによって、数字に対する意識も変わっていきます。

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つまり、計画を立てる大事なプロセスは、最初に、必要な利益を考えて、次に回収しなければならない固定費を加えて、稼がなければならない粗利益を算出して、それを基に、目標売上を立てる逆算思考です。逆算思考で計算される売上こそが、しっかりとした根拠をもった、意図をもった意識した売上です。このように、根拠があるからこそ、その数字を必ず達成しようという意識に変わっていくのです。

そして、もう一つ、回収すべき固定費の考え方が重要です。固定費には、人件費、未来投資、設備等の償却費、賃料などが挙げられますが、どれも、経営者の経営戦略に応じて決まってきます。ポイントになるのは、固定費を支出するための原資は、粗利益ということです。このため、人件費、未来投資、設備等の償却費、賃料などの固定費をいくら配分するかを決めるには、売上に応じた比率でなく、粗利益に応じた比率、すなわち粗利益を100%として、粗利益をどのように配分するかという観点で考えなければなりません。いくら売り上げが大きくても、粗利益という原資がなければ、配分できなくなってしまうからです。

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このように、粗利益を基礎として、未来投資や人件費などに配分していくこと、すなわち、その配分割合を考えることが経営で重要です。

◆重要なプロセス
  • (1)逆算アプローチ:目標利益を立て、必要固定費を加えて、必要粗利益を算出し、変動費率から、売上高を算出するアプローチで売上目標を立てるということ
  • (2)資源配分:粗利益を100%として、未来投資や、人件費などに資源配分する割合を考える

2.正しい目標売上・利益を立てる9つのステップ

では、具体的に面積図をつかって、計画を立ててみましょう。

  • (1)目標利益を決める:一人当たり経常利益などから、今期の達成したい目標利益をきめます
  • (2)固定費を見積もる:この1年間の人件費、未来投資、一般経費、減価償却費を計算します。経常利益をベースにする場合は、支払利息等の営業外損益も含めます
  • (3)目標利益に固定費を加えて必達の粗利益を算出。
  • (4)一つあたりの、商品・製品の売価を考えます。
  • (5)一つあたりの、商品・製品の変動費を計算します。
  • (6)一つあたりの粗利益を、売価-変動費で計算します。
  • (7)販売数量を決めます。
  • (8)そして、変動費に販売数量を乗じて、全体の変動費を計算します。
  • (9)最後に、全体の粗利益に変動費を加えて、売上高を計算します。

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以上のステップで、売上・利益目標を立てることが重要です。
ポイントは、まず、先に出ていく固定費を計画した上で(2)、稼がなければならない粗利益(3)、稼がなければならない売上(9)を知ることです。

3.最後に

経営の本質は、(1)企業の方向付け、(2)経営資源の最適配分、(3)人を動かす、3つといわれます。(1)企業の方向付け、(2)経営資源の最適配分を行うためには、粗利益をいかに増やすか、そして、その粗利益を100%として人件費、未来投資等へどのように配分するか考えることが重要です。

その際、自社の固定費、変動費の構造を把握した上で、逆算思考で必達の粗利益・売上を算出して目標を立てないと、会社を安定的に成長・発展させることは厳しいと思います。売上・粗利益の考え方が変わることで、安易な値下げは行わなくなり、最適な販売構成(プロダクトミックス)を考えようになります。また場合によって、固定費、変動費のコスト構造をドラスティックに見直しすることになるかもしれません。

経営で大事なことは、生きた数字を使うことです。
生きた数字を扱う経営のコクピットは、目標まで正しく到達させるためのインジケーターの役割となります。そのためには、経営のコクピットにあげる情報が、リアルタイムかつ、正確に数字を把握できる仕組みをつくること、そして、何よりも、まずは、経営者ご自身が、数字に対する意識を変えることがとても重要です。

プロフィール

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士 小泉 大輔
[所属・役職]
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役・公認会計士・税理士
[略歴]
朝日監査法人(現あずさ監査法人)、新日本監査法人を経て現職。
株式公開支援、M&A、企業価値算定をはじめ、会計・財務のコンサルティングを主たる業とするほか、数多くのセミナー・講演活動を行っている。
[著書・訳書など]
『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)
『要点解説 金融商品取引法』2007年10月(共著、中央経済社)
「財務スキル教室」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)
「金融商品取引法に向けた企業の対応」(「クオリティー・マネジメント」‐日科技連)等
[URL]
http://ownersbrain.com/

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