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人事評価制度構築・再考のポイント!

社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 特定社会保険労務士 金子 浩

第1回どの企業にも人事評価制度は必要なのか?

「人事評価制度」は多くの企業に取り入れられており、その制度の種類は、「目標管理制度」や「職能資格制度」など様々です。よく『どの人事評価制度がいいですか?』と、聞かれることがあります。しかし、すべての会社に普遍的に当てはまるベストな人事評価制度などないのです。ただ、よりその会社に合った制度をつくり、有効に活用するためのポイントはあるのではないかと思います。そこで、新たに制度をつくる、或いは、既にある制度を見直すといった際に考慮すべきポイントについて考えてみたいと思います。

(1) 人事評価制度の現状と最近の動向

日本人事行政研究所の調査(「将来あるべき人事管理を考えるための基礎調査」)によると、「人事評価制度」を取り入れている企業は96.9%にのぼり、1000人未満の中堅・中小企業においても92.5%【図1】と大多数の企業で取り入れられています。

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その「人事評価制度」の在り方は、ここ数十年で大きく変貌をとげています。かつて、右肩上がりの経済成長が当たり前であった時代に、終身雇用を前提としてつくられた、年功序列制度はすでに崩壊しました。それを放置してきた企業は、人件費が経営を圧迫し、一方で若年層の社員と年功序列制度によって高止まりした高い賃金を得る高齢社員との間に賃金水準に格差が生じるといった問題も生じています。そして、各業界・分野において専門性が進み、年功と能力の相関関係が薄くなってきており、一律昇給や定期昇給の制度に、若く能力の高い社員が不満を抱き、価値の高い人材が流出してしまう事態も数多く目にします。

従って、最低限度の生活ができる賃金水準を確保しながらも、一律昇給や定期昇給制度から脱却し、今後は、業績や職務内容に見合った処遇が可能な人事評価制度の構築をしなければならなくなってきたのです。

(2) 中小企業にも人事評価制度は必要か?

先述の通り、大多数の企業で取り入れている「人事評価制度」ですが、中小企業においても必要なのでしょうか。小規模企業の経営者からは、『私が、全社員の働きぶりを見ているから評価制度なんか必要ない。』とか、『当社の規模では、コストと労力をかけて人事評価制度を導入するほど余裕はない。』といったことを言われます。確かに、社員が10~20人であれば、社長1人で全員の評価も可能でしょう。目的が、評価に見合った賃金配分だけであればそれでよいかもしれませんが、「人事評価制度」導入の目的や効果はそれだけなのでしょうか。

「人事担当者の仕事に関するアンケート」(労務行政研究所)【図表2】によれば、人事管理に関して、社員300人未満の「会社が直面している課題」の第1位は「従業員のモチベーション向上」となっています。続いて、「優秀な人材の確保・定着」、「従業員の能力開発・キャリア開発」が第2位、第3位となっています。

後に述べますが、「人事評価制度」を有効に活用することによって、これらの課題を解決できる機能を持たせることができるとすれば、むしろ中小企業において人事評価制度が大きな役割を果たし、生産性の向上と企業の発展をもたらすものとなり得るのではないでしょうか。

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(3) 上手くいかない人事評価制度導入の例

中小企業経営者の中には、「人事評価制度」と聞いて、眉をひそめる人もおります。その理由を伺ってみると、『知り合いの社長にいいよと言われて、高い費用を払って導入した人事評価制度だけど、複雑すぎてやり方がよくわからなくて全く使っていない。』とか、『1次評価に2次評価、更に部門間の評価調整にフィードバックの面談、時間ばかりとられて、そんな時間があるなら、その分もっと本来の業務をやってほしい。』と言うのです。

こういった人事評価制度を導入したが上手くいかなかったというケースには、いくつかの共通点がありますので参考までにご紹介します。【図表3】

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まず、経営者が「人事評価制度」の導入意義や効果を理解し、その会社の方向性にあった人事評価制度を構築することが非常に重要です。そして、導入することよりも運用することに労力を割いている会社の方が上手くいっているようです。また、経済情勢の変化や法改正、会社の方向性の変化に合わせた制度改定も忘れてはなりません。

(4) “究極の人材マネジメントツール”

企業が「人事評価制度」を導入する際、「賃金を公平に支給したい」、「仕事の内容や成果に見合った給与を支払いたい」といったことがきっかけになることが多く、その導入目的として、昇給や賞与の金額と昇格対象者を決定することだけがクローズアップされることが少なくありません。ところが、どのような評価の指標を用いるか、どのような評価基準を設定するかなどにより、経営理念や行動指針をより浸透させることができたり、目標や目指すゴールを共通認識させることにより、モチベーションの維持向上が実現し、生産性の向上につながったりするのです。

実は、「人事評価制度」というのは、どのように設計し運用するかによって、人材マネジメントの根幹とも言うべき様々な機能を果たすことができる“究極の人材マネジメントツール”となり得るのです。

是非、上手に「人事評価制度」を活用して、事業の発展に繋げていただきたいと思います。

次回は、1年半程前に「労働契約法」が改正されたことによって非常に高まっている人事評価制度の重要性についてお話ししたいと思います。

プロフィール

社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 特定社会保険労務士 金子 浩
[所属・役職]
社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 法人社員
[略歴]
1997年3月 筑波大学卒
1998年3月 財閥系不動産グループに入社。約2年半、各事業部での業務に従事。
2000年10月 総務・人事部門にて労務管理業務、採用業務、人事制度の企画・立案等に従事。
2004年10月 総務・人事課長に就任。
2005年1月 「人材募集センター(グループ会社5社の採用部門を統括)」を立ち上げ、チームリーダーとして統括業務に従事。
2005年12月 社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所に入所。
労務リスクを回避する社内規程の作成。解雇や希望退職のサポート、賃金制度や人事評価制度の構築など人事・労務のコンサルティング業務に従事。
2013年8月 社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 法人社員に就任。
[書籍]
「退職金切り下げの理論と実務 –つまずかない労務管理-」 信山社
第二東京弁護士会 労務社会保険法研究会 共著(2010.3)
「企業のうつ病対策ハンドブック -つまずかない労務管理2-」 信山社
第二東京弁護士会 労務社会保険法研究会 共著(2011.7)
[講師]
「企業のためのうつ病対策」 第二東京弁護士会 研修会(2011.11)
「経営者・社員をリスクから守る!!企業のうつ病対策」
東京中小企業投資育成株式会社 主催 (2011.12)
「突如会社を襲う!労務トラブルの回避策」(経営者・人事責任者向けセミナー)
開東社会保険労務事務所 (2012.10~多数開催)
[URL]
社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所

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