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人事評価制度構築・再考のポイント!

社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 特定社会保険労務士 金子 浩

第3回"雇用の多様化"に対応する人事評価制度

近年、法律の改正や社会情勢の変化、働く人の価値観の多様化とともに、働き方が多様化してきています。総務省の労働力調査では、1987年に16.4%だった非正規雇用の労働者比率は2013年には36.7%にまで達しました。今後、中堅・中小企業においても、限られた労働力から人材を確保するために、"雇用の多様化"が求められ、その人材を活性化させ、生産性向上を図るために、非正規社員における人事評価制度の重要性が高まるものと考えられます。

(1)高年齢者の雇用実態と課題

高年齢者雇用安定法の改正により、本人が希望する場合、65歳まで継続雇用する措置を導入しなければならなくなりました。また、この法律では、65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるよう義務付けております。

法改正後の高年齢者雇用確保措置の実施状況(H25年「高年齢者の雇用状況」2013年6月1日現在)としては、「実施済み」の企業は92.1%(中小企業は91.9%)となっており、実施企業における措置の内容は【図表1】に示す通り、継続雇用制度の導入が81.2%(全企業)と大多数を占めております。

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定年後再雇用(フルタイム勤務)における定年到達前との年収比率【図表2】をみると、最頻値が「40~50%未満」(300人未満は、「60~70%未満」)、平均値が54.2%と、定年を境に再雇用後大幅に年収ダウンしていることが分かります。また、再雇用者対して、昇給やベースアップはないとしている企業が約76%【図表3】と大きな割合を占めております。

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定年後再雇用者に人事考課を実施している企業は、65.7%(300人未満の企業では54.9%)となっておりますが、およそ3分の1にあたる32.4%(300人未満の企業では41.2%)の企業では、人事評価を実施していないという状況になっております。【図表4】

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そして、各企業においては、定年後再雇用した高年齢者の「モチベーションアップ策」、継続雇用実施に伴う「総人件費増加の抑制」などが主な課題として挙げられています。

(2)高年齢者の人材活用と人事評価制度

中堅・中小企業にとって、経験豊富な高年齢者という人材をどのように有効活用するかによって、今後の生産性向上の大きな要因になると考えられます。

労務行政研究所の「中・高年齢層の処遇に関する実態調査」によれば、「中高年層の雇用施策を展開する上での課題」としては、「定年後のモチベーションアップ策」がトップ(63.8%)にあがっており、次いで、「職務や役割、働きぶりを反映した処遇を可能とする給与・評価制度の整備」(38.6%)となっております。また、モチベーションアップの具体的な対策として、「人事評価を行い、処遇にメリハリをつける」(54.1%)が最も多くなっていることを鑑みると、高年齢者の人材活用の観点からも人事評価制度が重要な役割を担うことが推察されます。従って、定年後再雇用者に対しても人事評価制度を導入し、人事評価を効果的に活用することで、改めて高年齢者を人材として活性化させることが求められています。

(3)"雇用の多様化"に求められる人事評価制度の多様化

近年、働く人の価値観の多様化による多様な働き方は容認される方向にあり、各企業においては、"雇用の多様化"を促進することが求められております。特に「多様な正社員」の普及を図ることで、かねてより指摘されていた正社員と非正規社員の「雇用の二極化」の問題を解消することが期待されております。

この「多様な正社員」を活用する際には、【図表5】のように「職種(職務)限定の有無」、「勤務地限定の有無」の観点から分類できると考えられ、職務内容や他の雇用区分との関係性、会社の方針を鑑みて、必要な雇用区分を設定することとなります。

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ここで、労働時間限定の有無の観点から、正社員と異なる待遇で雇用区分を分類する場合には、パートタイム労働法(第9条)による「パートタイム労働者の公正な待遇確保」の規定に基づき、差別的取扱いとならないよう注意が必要です。

これらの雇用区分については、会社の方針、若しくは、各雇用区分に求められる役割等によって、その社員に求められる結果や行動が異なってくると考えられます。従って、雇用の多様化に伴い、多様化した雇用区分ごとに、企業内での位置づけ・役割を明確にし、各雇用区分に合った人事評価方法と評価要素の選択・設計が重要になります。

(4)非正規社員を活かす人事制度のトータルシステム化

今後10年、20年・・・の視点で企業経営を考えると、単に人材確保ということだけではなく、社員のキャリアアップや会社を発展させ引っ張っていく次世代のリーダーを育てることも考えなくてはなりません。

例えば、1人の社員が、20代で新入社員として入社してから、数年経って結婚をすると勤務地限定で働くととなり、出産し子育て期に入ると、しばらくの間短い時間でしか働けなくなります。子供が少し大きくなると、労働時間の制限が必要なくなり、再びフルタイムでの勤務ができるようになります。そのとき、スキルアップのために専門職を希望して勤務するようにな40代で親の介護が必要になり、1次的に勤務地限定・時間限定の社員となって勤務することもあります。その後、50代で管理職となり、やがて60歳の定年を迎えると再雇用で嘱託社員となって65歳まで勤務する。といったように、ライフステージごとに家庭環境が変化し、その時々で働ける条件が異なってきます。

このように、多様な雇用区分を設定だけではなく、それらの雇用区分を相互に「転換」できる"トータルシステム"を構築することが、有能な人材の流出を防ぎ、また将来管理職や経営層になる人材の育成につながるものと考えられます。

これからの時代、限られた人材を活性化させ、有能な社員が育つ環境をつくることが、中堅・中小企業がこの競争社会の中で勝ち残っていくために必要なのではないでしょうか。

次回は、人事評価制度構築と運用のポイントについてお話ししたいと思います。

プロフィール

社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 特定社会保険労務士 金子 浩
[所属・役職]
社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 法人社員
[略歴]
1997年3月 筑波大学卒
1998年3月 財閥系不動産グループに入社。約2年半、各事業部での業務に従事。
2000年10月 総務・人事部門にて労務管理業務、採用業務、人事制度の企画・立案等に従事。
2004年10月 総務・人事課長に就任。
2005年1月 「人材募集センター(グループ会社5社の採用部門を統括)」を立ち上げ、チームリーダーとして統括業務に従事。
2005年12月 社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所に入所。
労務リスクを回避する社内規程の作成。解雇や希望退職のサポート、賃金制度や人事評価制度の構築など人事・労務のコンサルティング業務に従事。
2013年8月 社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 法人社員に就任。
[書籍]
「退職金切り下げの理論と実務 –つまずかない労務管理-」 信山社
第二東京弁護士会 労務社会保険法研究会 共著(2010.3)
「企業のうつ病対策ハンドブック -つまずかない労務管理2-」 信山社
第二東京弁護士会 労務社会保険法研究会 共著(2011.7)
[講師]
「企業のためのうつ病対策」 第二東京弁護士会 研修会(2011.11)
「経営者・社員をリスクから守る!!企業のうつ病対策」
東京中小企業投資育成株式会社 主催 (2011.12)
「突如会社を襲う!労務トラブルの回避策」(経営者・人事責任者向けセミナー)
開東社会保険労務事務所 (2012.10~多数開催)
[URL]
社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所

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