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人事評価制度構築・再考のポイント!

社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 特定社会保険労務士 金子 浩

第4回中堅・中小企業の人事評価制度構築と運用のポイント

今回は、このテーマでの最終回となりますが、中堅・中小企業が人事評価制度を構築し、また運用する際のポイントについてお話していきたいと思います。

(1)シンプルな制度がよいか?緻密な制度がよいか?

「シンプルな制度を入れるのがよいですか。それとも、会社に合った人事評価制度を細かく作りこんだものを導入した方がよいのでしょうか?」初めて人事評価制度を導入するお客様にこのように聞かれることがあります。一般的に人事評価制度を構築するというと、コンサル会社に莫大な費用をかけて頼んでつくる、大掛かりなものといったイメージがある経営者が少なくないようです。
重要なのは、なぜ人事評価制度を導入するのかという目的の部分です。経営理念や事業計画、ビジョンといったところを踏まえて、どんな人材を求めるのか、どのように人材活用をするのかといった方針があって、初めて人事評価制度導入の目的が明確になるのだと考えます。

目的や方針に沿った制度であれば、シンプルなものでも緻密なものでも構わないと思いますが、目的が明確であれば自ずと構築すべき制度設計ができるのではないでしょうか。ただし、制度が複雑化、緻密化すれば、その分評価者となる管理職の方々の制度への理解とより高い評価スキルが必要となってくることも踏まえておかなければなりません。
したがって、特に初めて人事評価制度を導入する中小企業の経営者の方には、"小さく産んで大きく育てる"ことをお勧めしております。つまり、誰もが解りやすい比較的シンプルな制度を導入し、改良・改善を重ねながらその会社にあった制度を徐々に作り上げていっていただきたいと思います。

(2)人事評価制度の形骸化を防ぐ構築・再考のポイント

人事評価制度を導入する際、制度内容にばかり焦点がいき、導入後の運用のことや導その後の制度の見直しについては、あまり意識されていない経営者の方が少なくありません。そして、運用が上手くいかず、制度の一部分がその会社に合わないといった理由で、折角導入した人事評価制度を活用しなくなったり、長期間見直しをせず古い制度を使い続け、その会社の実態に合わない制度をそのまま運用している会社も散見されます。
大切なのは、「継続的」に「適切」な運用をするということです。確かに、上手く運用ができれば、人材育成や業績アップも期待できるものですが、導入すれば何もかも上手くいく"魔法の杖"ではないのです。

その会社に適した制度にすることは大切ですが、完璧なものをつくろうとし過ぎると、かえって上手くいかなくなってしまうことがあります。公平性のある制度を目指すことは必要ですが、完璧に公平な制度を構築することは非常に困難ですから、評価の結果や課題、会社の方向性などをきちんとフィードバックする仕組みをつくり、評価者のスキルアップをすることで、納得性を高めることが重要です。

継続的に制度の見直しを行い、一度導入したらそれで終わりではなく、より良い運用をするために常にマイナーチェンジをする意識を持つことも、形骸化を防ぎ継続的な制度にしていくポイントとなります。(【図表1】参考)

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(3)「意味のある評価」、「意味のある報酬」にするために

労働政策研究・研修機構の「従業員の意識と人材マネジメントの課題に関する調査」では、「働く意欲を高める施策(企業調査)」(【図表2】)としてトップに「社員の納得性を確保した評価制度」(60.4%)が挙げられております。人事評価制度を導入する際には、「より効果のある制度にしたい」と多くの経営者も考えるものですが、人事評価を実施することでモチベーションの維持向上につながることを期待されているといえます。

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一方、従業員調査による「仕事に対する意欲が低くなっている理由」(【図表3】)をみると、「賃金が低いから」(46.8%)がトップとにきておりますが、「仕事に対する意欲が高まっている理由」(【図表4】)として、「賃金が高いから」は、(5.3%)で14番目に挙げられております。このことから、賃金を上げることは、モチベーションの維持或いは低下の抑制に寄与すると考えられますが、それだけではモチベーションを向上させ、持続させることができないのではないかと考えられます。常に右肩上がりの業績を維持できる企業ばかりではありませんので、会社の状況によっては、いくら個人が頑張っても業績が上がらず賃金が上がらない時期もあると思います。そういった状況においても、モチベーションを維持向上させる仕組みが必要なのだと思います。

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これらのことを鑑みると、モチベーションを向上させるためには、昇給や賞与の金額の大小ではなく、適切な評価を行い、評価結果とその昇給・賞与の金額の意味を伝え、また、その会社のビジョンや方向性を共有し、どのような成果・行動によって、今後さらに評価がえられ、それによりどのような処遇が得られるのかというフィードバックを適切に実施することが重要であると考えられます。そして、一時的に良い評価が得られなくても、長所を伸ばし、弱みを改善する指導を行いながら、新たな目標設定と進捗管理をすることで、次により良い評価が得られる努力ができるような仕組みを作り、人材を育てていただきたいと思います。つまり、単に賃金を払うために評価をするのではなく、評価を通じて人材育成をしていくことが重要なのだと考えます。

(4)"社員と会社が成長する!"制度構築と運用のポイント

中小企業でも優秀な社員がいて、皆前向きに頑張っている会社も多くあります。しかし、必ずしも業績が伴っていないケースもあります。そういった会社では、個々の社員が優秀であるのにもかかわらず、思い思いの方向に向かって頑張っていて、個人ごとには成果をあげているのですが、会社全体として思うように業績が上がっていないことがあります。非常に“もったいない”と感じるのですが、そのようなケースで多いのは、経営者の考えや会社の方向性が社員にほとんど理解されていないということです。
経営者の方々に、「社員に経営理念や将来の方向性など会社のビジョンを伝えていますか。」と伺うと、大半の経営者は伝えていると言うのですが、実はなかなか伝わっていないということが多いのではないでしょうか。

企業理念やビジョンは、明文化するなどして公表することはもちろんですが、それだけではなかなか浸透しないものです。そこで、人事評価制度を構築・再考する際には、その企業理念やビジョンに沿った評価基準や評価要素を設定していくことが効果的だと思います。そして、その評価基準をオープンにすることで、社員一人ひとりが会社の方向性に沿った行動を促していくのです。

中小企業だからこそ、経営トップのビジョンを共有し、経営者と社員が同じ方向を向いて努力することが必要で、会社組織を強くし、その結果大手に負けない業績づくりも可能にしていくものと考えます。

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是非、適切な制度を導入し、また適切な運用をすることで、昇給・賞与で支払う賃金を意味のあるお金にするとともに、より多くの“人財”を育て強い会社組織をつくることで、業績アップを図ることができるのではないかと思います。そして、好循環の人材育成‐業績向上サイクル【図表5】を作り上げ、常に社員と会社が成長する会社にしていただきたいと思います。

プロフィール

社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 特定社会保険労務士 金子 浩
[所属・役職]
社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 法人社員
[略歴]
1997年3月 筑波大学卒
1998年3月 財閥系不動産グループに入社。約2年半、各事業部での業務に従事。
2000年10月 総務・人事部門にて労務管理業務、採用業務、人事制度の企画・立案等に従事。
2004年10月 総務・人事課長に就任。
2005年1月 「人材募集センター(グループ会社5社の採用部門を統括)」を立ち上げ、チームリーダーとして統括業務に従事。
2005年12月 社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所に入所。
労務リスクを回避する社内規程の作成。解雇や希望退職のサポート、賃金制度や人事評価制度の構築など人事・労務のコンサルティング業務に従事。
2013年8月 社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 法人社員に就任。
[書籍]
「退職金切り下げの理論と実務 –つまずかない労務管理-」 信山社
第二東京弁護士会 労務社会保険法研究会 共著(2010.3)
「企業のうつ病対策ハンドブック -つまずかない労務管理2-」 信山社
第二東京弁護士会 労務社会保険法研究会 共著(2011.7)
[講師]
「企業のためのうつ病対策」 第二東京弁護士会 研修会(2011.11)
「経営者・社員をリスクから守る!!企業のうつ病対策」
東京中小企業投資育成株式会社 主催 (2011.12)
「突如会社を襲う!労務トラブルの回避策」(経営者・人事責任者向けセミナー)
開東社会保険労務事務所 (2012.10~多数開催)
[URL]
社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所

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