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これからの企業戦略の中心を担う「人材開発」

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社 取締役
小笠原 隆夫

第2回「人材開発」の課題が解決されない背景

第1回のコラムで紹介したように、「人材開発」については多くの関係者が同様の問題意識を持ちながら、抜本的な取り組みがなかなか実行できていません。

今回は、その理由を考えてみたいと思います。

1.「人材開発部門」の活動はどう見られているか

産業能率大学が行った人材開発に関する調査の中で、「人材開発部門の活動に関する評価」を聞いたものがあります。その結果からは、人材開発部門の活動に対する満足度や期待は、必ずしも高いとはいえない状況が見られます。

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また、各部門が実施する教育で、人材開発部門との連携度合いを尋ねたところ、「当該部門が単独で企画・実施」との回答が、部門を問わずに半数以上となっています。各部門で実施する教育は、専門的な内容が多くなるということもあり、人材開発部門が関与しない企業が多いということでしょう。

さらに、他部門に対する人材開発部門からの働きかけについて尋ねると、間接的な支援に関する項目では肯定的な回答が半数を超えるものの、全社的に統合された人材開発活動や、人材開発のノウハウ提供といった項目ではこれが3割程度にとどまっており、連携が十分とはいえない状況が見られます。

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このように、人材開発部門の活動は、間接的な支援にとどまっていることが多く、人材開発部門以外が行う教育は、部門独自に実施する傾向が強いなど、人材開発部門があまり現場に深く関わることができていない様子が見受けられます。

2.「人材開発」を担う組織の位置づけの問題

このような距離感が生まれた理由には、様々な原因が考えられますが、その一つに人材開発部門の成り立ちによる組織上の問題があります。

そもそも人材開発部門のような育成機能は、特に大手企業では人事部の一部、例えば「人事部教育課」のような形で置かれていました。その後、徐々に人材育成の重要性が認識され、「教育部」「能力開発部」などの専門部署となっていきます。さらには人材開発部門を別会社化する動きもありましたが、これには、専門性を高めるといった理由とともに、事業化による経費節減、業務改善という側面もありました。

組織的な位置づけが、このような経緯をたどる中で進んでいったのは、「人材育成機能の縦割り化」でした。その過程で、人材開発部門の権限や関与する範囲は狭まり、他部門との関わりも希薄になっていきました。

組織が縦割りになることで、相応の専門性や知識、経験を持たない者が、ローテーションでたまたま人材開発を担当することも増えました。人材開発部門にコア人材を配置する優先度が低いと見られてきたこともあるでしょう。

組織改善の取り組みは一部で始められているものの、固定化した意識は簡単には変わりません。

今起こっている人材開発部門と現場の信頼関係不足には、このような組織の位置づけを巡る経緯に由来する問題があります。これがすべてではないにしろ、その一因であることは確かだと思います。

3.「人材開発」の特性による問題

もう一つは、「人材開発」という課題の特性による問題です。

企業戦略に合致し、業績貢献につながる人材開発を考えようとすれば、採用、配置・異動、OJT、研修など、「人」と「組織」につながるすべての要素が関わりますが、人材開発部門の主たる役割は、「研修を企画、実施すること」とされている場合がほとんどです。これが、「"人材開発"イコール〝研修"である」という狭い概念につながっており、活動範囲が広がらない一因でしょう。

また、人材育成で成果を得るには、長い目で見た継続的な取り組みが大切ですが、一方で、その活動は景気動向の影響を受けやすいという面があります。業績が厳しければ、人材開発関連の予算はまず初めに削減され、活動の見送りや後回しが増えていきます。実行する人員体制でも、専門性の不足や、中には「採用」など他の業務を兼務している者もいるとなれば、課題解決の取り組みが進まないのは当然でしょう。

「人材開発」を本来の事業戦略として機能させるには、これまでの概念を打破し、組織上の位置づけや責任、権限の見直しといった環境作りが必要になってきます。

この点を踏まえ、次回は「人材開発」の分野で最近注目されているトレンドについて見ていきたいと思います。

プロフィール

小笠原隆夫
[所属・役職]
ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社 取締役
[略歴]
IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒および中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。
2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を基に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。
パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

2012年3月より「ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社」にパートナーコンサルタントとして参画し、2013年3月より同社取締役。
[URL]
ユニティ・サポート
ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社
ブログ:会社と社員を円満につなげる人事の話

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