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これからの企業戦略の中心を担う「人材開発」

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社 取締役
小笠原 隆夫

第3回「人材開発」で最近注目されるトレンドとキーワード

ここまで、「人材開発」を取り巻く環境、抱えている課題の現状を見てきましたが、今回はこれらの解決に向けたヒントとして、「人材開発」の分野で最近注目されているトレンドやキーワードを探ってみたいと思います。

1.「人材開発」のトレンド情報

「人材開発」に関するトレンドを見る上で注目する情報として、ATD(Association for Talent Development)という団体が主催するカンファレンスがあります。この団体は米国を本部として世界中に4万人の会員を持つ組織で、毎年行われるイベントでは、人材開発・組織開発に関する先駆的企業の実践事例や潮流など、最新の情報に触れることができ、世界80カ国以上から1万人近い専門家が集まるものです。

基調講演などとともに、以下のトラックに沿ったセッションが実施されています。

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毎年取り上げられるテーマを見ていく中でよく出てくるのは、やはり「グローバル」「タレントマネジメント」といったキーワードです。さらに、最近はこれらに合わせて「学習の機会」「効果的な研修方法と効果測定」というテーマが、比較的多く取り上げられている点が注目されます。

この二つのテーマについて、それぞれを少し詳しく見てみたいと思います。

2.「学習の機会」の捉え方

「学習の機会」を考えるガイドラインとして、「70:20:10フレームワーク」というものがあります。

これは、

  • 学習の70%は、「実際の仕事経験(Experiential learning)」によって起こる
  • 学習の20%は、「他者との社会的なかかわり(Social learning)」によって起こる
  • 学習の10%は、「公的な学習機会(Formal learning)」によって起こる

というものです。

こういうことから、10%しかない「公的な学習機会」(企業であれば研修やOFF-JTなど)を中心に考えるのではなく、「実際の仕事経験」と「他者との社会的なかかわり」を含めた統合的な枠組みとして、継続的なプロセスから学習機会を考えていく必要があるということが一般的になってきています。

日常の中でいかに学習機会を増やしていくか、仕事と学習をより近づけて、「仕事の中で学習する」という取り組みが重要とされてきています。

3.科学的知見を応用した研修カリキュラムと効果測定の新たな考え方

さらにもう一つ注目すべき点は、「効果的な研修方法と効果測定」というテーマです。

ここでは、主にニューロサイエンス(神経科学)など、近年の研究から得られた知見から、学習や人材開発を科学的な見地から見直し、効果的な学習の設計や、個人の意欲向上と能力開発を促すマネジメントなどに活用していこうという動きがあります。

また、研修効果を測定する方法として、1959年にアメリカの経営学者であるカークパトリック博士が提案したモデルが広く知られていますが、研修の効果を4段階に分けて測定するカークパトリック・モデルの各レベルにおいて、新たに調査すべきことを下記のように追加しています。

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このカークパトリック・モデルの変化も、効果測定という手法から、日常業務の中での学習機会の促進を意識したものとみられます。

前回のコラムで「育成機能の縦割り」と「継続的な取り組み不足」の問題を説明しましたが、今回ご紹介した世界的なトレンドにおいても、この問題につながる部分があります。

「人材開発」の組織体制上の問題から、統合的な取り組みが行いづらいという状況があり、また「人材開発」が景気動向に左右されがちなことには、研修効果が実感できないことにも一因があり、そのために後回しにされてしまう状況があります。適切な効果測定ができれば、継続的で安定した取り組みが可能になるでしょう。

次回はこれまで見てきた現状を踏まえ、「人材開発」を企業戦略の中心として考える上で、企業がこれから取り組んでいく必要がある課題を提示したいと思います。

プロフィール

小笠原隆夫
[所属・役職]
ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社 取締役
[略歴]
IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒および中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。
2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を基に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。
パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

2012年3月より「ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社」にパートナーコンサルタントとして参画し、2013年3月より同社取締役。
[URL]
ユニティ・サポート
ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社
ブログ:会社と社員を円満につなげる人事の話

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