NIKKEI

トップ>企業マネジメント最新トレンド>これからの企業戦略の中心を担う「人材開発」

これからの企業戦略の中心を担う「人材開発」

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社 取締役
小笠原 隆夫

第4回これからの「人材開発」で企業が取り組むべきこと

今まで見てきたとおり、「人材開発」における課題は多岐に渡ります。それぞれ対応もされてきていますが、これからの「人材開発」を考える中で、特に取り組むことをお勧めしたいテーマを、今回は2つほど提示したいと思います。

1.「人材開発」の組織強化の観点から

まず、「人材開発」の“組織強化”という点では、多くの企業で取り組みがされていますが、ここで圧倒的に多いのは「組織構成の見直し」です。

専門部署化や部・課への格上げ、人事部門への再統合などがこれにあたりますが、この実態としては、あまりうまくいっていないように感じます。その理由で多いと思うのは、組織構成は変わっても、職務範囲(権限)と人員が変わっていないということです。

まず、職務範囲(権限)で見ると、組織構成を変えても、現場の業務タスクの組み合わせが変わるだけということがほとんどです。戦略立案は「人材開発」の職務範囲に含まれないので、全社的な人事戦略への視点を持てず、現場の業務実態はほとんど変わりません。

また、人員ということでは、組織構成の変更によって顔ぶれや人数が変わるということは、実際には非常に少ないと思います。誰かが異動してきても、多くは「人材開発」の専門家ではありませんので、まずは現状ありきの動きとなります。

間接部門に人手は割けないという面はありますが、人員が変わらなければ、発揮する能力レベルや行動は変わりません。

これはある企業でのことですが、関係者の説得や相応の手当てによって、経験豊富で人材育成への意識が高い現場マネージャーを人材開発部門に異動させたところ、現場との関係が一気に近くなり、連携した活動が効率よく進むようになりました。

このように、特に変革への入口では「誰に何をやらせるか」という人員と権限が重要になります。

組織強化という観点では、組織の構成、権限、人員をバランスよく見直すことが必要でしょう。

images_11.jpg

2.「人材開発」の情報管理の観点から

もう一つは、「人材開発」を取り巻く情報管理に関する問題です。

会社で一般的に管理する人事情報の多くは、属性や過去履歴などの画一データが中心で、キャリアや育成に関して有用な個別情報など、「人材開発」に重要なデータはあまり集められていない会社が多いです。

また、この個別情報の把握は、現場の上長任せになっていることが多いですが、上長経由の情報には、様々な偏りがあります。例えば、異動希望を直属の上司に相談することは難しかったり、上司がワークライフバランスに否定的だったりすれば、その人に子育てや育児の話はしづらいでしょう。

このように、「人材開発」の情報管理には、保有データ自体の問題と、その収集方法に関する問題があります。

この対策として、ある会社では、直属の上司以外とも面談できる制度を設けています。面談相手は現場責任者から人事担当者まで様々で、面談内容に応じて誰と面談するかを前もって決めるそうです。

また、強制ではないものの、結婚や子育ての計画、両親の介護、病気の状況など、本人のキャリアに影響する個人情報を、自由記入のシートなどを使って収集しています。

同じく情報収集ということでは、人材開発活動の評価があります。これまでのような研修後のアンケートやテストを用いた直後の評価だけでなく、継続的な効果測定をしていくことが必要でしょう。

これからは、個別のキャリアに関する情報を可能な範囲で幅広く収集すること、人材開発部門として、主体的な情報収集と蓄積を行っていくことが重要になってくるでしょう。情報が集まることで、「人材開発」の位置づけは高まっていくはずです。

images_12.jpg

3.最後に

厚生労働省が2014年に行った「能力開発基本調査」によると、OFF-JTと自己啓発支援それぞれの「過去3年間」の実績と、「今後3年間」の見込みの比較では、正社員と正社員以外ともに「増加傾向」とする企業の割合が高くなっています。

images_13.jpg

このように、企業における人材育成の重要性は、今後どんどん増していきます。これからの「人材開発」の役割は、研修運営中心のオペレーションから脱し、人と組織のパフォーマンス向上に貢献する専門機能を持つことです。“企業戦略に合致した人材像を定め、それに則った人材育成戦略を定めて実行する”ということです。

「人材開発」は“企業戦略の中心を担う”ということを、より強く認識していく必要があるだろうと思います。

プロフィール

小笠原隆夫
[所属・役職]
ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社 取締役
[略歴]
IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒および中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。
2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を基に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。
パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

2012年3月より「ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社」にパートナーコンサルタントとして参画し、2013年3月より同社取締役。
[URL]
ユニティ・サポート
ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社
ブログ:会社と社員を円満につなげる人事の話

[バックナンバー]これからの企業戦略の中心を担う「人材開発」

企業マネジメント最新トレンド 一覧へ

日経産業新聞 ビジネス動画 動画で見る、話題の新製品・先端技術 詳しくはこちら

日本大学 通信教育部

月間アクセスランキング

  1. 企業マネジメント最新トレンド
    グローバルに対応しうる事業戦略とは
  2. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の具体的な改正内容とその対応のスケジュール
  3. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正を契機としたISOの活用方法
  4. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正における具体的な取組み方法
  5. 企業マネジメント最新トレンド
    企業価値とは何か。経営にどう影響するのか

日経産業新聞ピックアップ

2017年8月21日付
  • NCD、ネット広告枠、サイトで売買、好みのメディア選べる
  • 在庫管理、無人で安く PALが倉庫にロボ
  • バイオマス発電所新設 エフオン、20年メド2カ所
  • ダイセル・エボニック 自動車の軽量部品製造 コスト6割減
  • ペットのトイレ、12時間消臭 室内犬用 ユニ・チャーム

経営喝!力 ビジネスIT活用index