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現場活性化のための「ブレークスループロジェクト」の進め方

株式会社ニューチャーネットワークス 福島彰一郎

第1回現場モチベーションの低下と現場の動機付けの考え方

グローバル化が進む今日においては、海外市場も視野に含めてチャレンジングな戦略・計画を立案しているケースも多い。しかし、それらの進捗は果たして順調であろうか。

もし順調でないとすれば、そこにはひとつの原因が考えられる。それはモチベーションの低下という問題だ。戦略・計画は論理的には良いが、戦略実行の担い手である肝心の現場がイマイチ活性化していない。地頭は良く基本的に真面目な人材が多いのだが、どうも組織全体となると元気がない。そんな壁にぶつかっている会社も少なくはないだろう。

社内でアンケートやヒアリングをしてみると、以下のような声が聞かれることがある。

「目の前の膨大な仕事量のため休みがとれない」
「他メンバーは皆忙しそうで相談できない。人間関係がうまくいっていない」
「上司は批判ばかりで相談しにくい。何も言えなくなってしまう」
「自分の範囲でやろうとするが知識が足りず、かえって時間がかかってしまう」

このような状況では、モチベーションも上がりようがない。モチベーションが上がらなければ、当然計画もうまく進捗しない。

弊社の提唱する「ブレークスループロジェクト」は成果を出す中で人と組織を変革・モチベートするために有効な手法である。営業や製品開発、海外の現地法人など、様々な組織において多くの成果を出してきている。今回から4回にわたり、ブレークスループロジェクトが沈滞した現場をどのように活性化できるのかについて紹介する。

最初に、そもそもなぜ企業の現場は冒頭に紹介したような状態になってしまったのかを整理する。原因として考えられるのは、(1)成果主義の導入、(2)社内コミュニケーションの減少、(3)長期雇用制度の崩壊である。

90年代後半に成果主義が導入される前は、業務範囲が「あいまい」であったため、無駄やフリーライダーという弊害はあったものの、業務同士の横方向の連携は自然と取れており組織全体としての一体感があった。成果主義が導入されてからは、従業員は担当業務の成果を意識するようになったのはよいが、一方「それは私の仕事ではない」といって他業務への意識は希薄となってしまった。その中で、個人にとっては関係なくとも組織全体にとっては必要な仕事が消滅していった。

並行して、コスト低減のために社内コミュニケーション促進に役立っていたインフォーマルなイベントは減少。それによって部署が違うメンバーと知り合いになる機会も失われていった。

そして景気低迷期におけるリストラである。長期雇用という会社と個人との信頼関係は崩れ、個人は「会社は最後まで面倒をみてくれるわけではない」「自分の身は自分で守るしかない」と考えるようになる。その中で個人の能力開発ブームも起こり、個人は以前より自分の利益が第一と判断するようになった。「この仕事は自分にとって何かいいことありますか?」と上司の指示に質問する若手も登場してきている。

では昔の仕事のやり方に戻る方が良いのか?というと、その選択肢も考えられない。日本人同士ならまだしも、グローバル化の中で非日本人メンバーとの仕事が当然となるビジネス環境では、成果主義でないと海外の優秀な人材を採用できない。

ではどうするのか。組織の力とは、「個の力」と「個と個とのチーム力」のかけ算の結果である(図1)。

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今の多くの日本の製造業は「個の力」があったとしても、「個と個とのチーム力」が弱まっている状態にあるのではないか。そのため組織全体としてのパフォーマンスがイマイチ振るわない状態になっていると考えられる。さらには、現場における他メンバーとの議論や協働作業の中の学びと啓発を受けて伸びるはずの「個の力」の成長も、自助努力のみでは大きな結果は期待できないだろう。

一般的にモチベーション理論においては、動機付けには「外発的要因」と「内発的要因」の2種類がある。賃金や賞与、福利厚生といった「外発的要因」によって動機付けをすることもできるが、高い賃金をもらうとそれが当たり前になってしまい、もっと行動させようとするとより高い賃金を与える必要があり、際限がなくなり、企業として採算がとれなくなってしまう。

では「内発的要因」によってどのように個の力を引き出し、個と個のチーム力を引き出すべきだろうか。社会心理学において注目されている「自己決定理論」(Self-Determination Theory:SDT)が参考になる。この理論によれば「(1)自律性」「(2)有能感」「(3)関係性」の3つの基本的欲求が満たされるときに内発的に動機付けが起こるという。目の前の行動を自分で積極的に行おうと「内面化」が起こるのである。

次回コラムでは、この3つの欲求について詳細に説明をして、現場活性化のポイントを紹介していきたい。

プロフィール

株式会社ニューチャーネットワークス 取締役 シニアコンサルタント
福島彰一郎
[略歴]
1995年東京大学大学院工学系研究科材料学専攻修士課程修了
1996年同大学先端科学技術研究センター研究生
1998年米カーネギーメロン大学技術政策学部修士課程修了
1999年に経営コンサルティング会社ニューチャーネットワークスに入社、現在に至る。
[著書・訳書など]
「図解でわかる・技術マーケティング」(共著、JMAM、2005年)
[URL]
http://www.nuture.co.jp/

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