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現場活性化のための「ブレークスループロジェクト」の進め方

株式会社ニューチャーネットワークス 福島彰一郎

第3回ブレークスルーゴールの「内面化」による自律性を高める

今回のコラムでは、ブレークスループロジェクトの進め方における「準備」「テーマ企画」段階を心理的側面から考えてみたい。このコラムで以前よりご紹介してきているように、ブレークスループロジェクトは、大きく「準備」「テーマ企画」「実行」「報告」の4つのステップで進んでいく。まずブレークスループロジェクトの立ち上げの段階における「準備」および「テーマ企画」段階では、理念・ビジョンおよび当面取り組むべきブレークスルーゴールを参画メンバーが受け入れて「内面化」されることがポイントとなる。テーマを自ら選ぶことで自律性という欲求が満たされ、内面化が起こり、積極的なコミットメントが期待される。

ポイントは2つ。対話による理念・ビジョンの「内面化」とブレークスルーゴールの「内面化」である。

まず1つ目のポイントである対話による理念・ビジョンの「内面化」について考えてみたい。プロジェクトを実施する前段階では、ブレークスループロジェクトは何のために行うのか、事業理念や行動指針、事業ビジョンについて明確にし、関係メンバーに説明し、理解してもらい、共感してもらうことが必要である。その理念・ビジョンが出てきた背景や歴史、トップの思いといった文脈を伝えることが大切であり、その際、論理面よりも「情熱」にウエイトを置いて訴えるほうが効果的といわれる。人は、1日の時間の90%を無意識で動いているという。意識レベルの共通言語は「言葉」だが、無意識レベルの共通言語は「感情」である。この無意識レベルの「感情」に響くように、リーダーは一人一人の価値観や考えに親身になって耳を傾け、一緒に未来について語り合い、「情熱」をもって訴え、メンバーの感情に火をつけることがポイントとなる。プロジェクトメンバーは本業と兼務でプロジェクトに参加するケースがほとんど。ただでさえ多忙なのに、さらにプロジェクト参加で相当忙しくなることにストレスをもっているケースが多い。そのため、メンバーを奮い立たせるためにはプロジェクトの目的となぜメンバーが選ばれたのかをトップ自らが説明して、その負荷の多さにも理解を示してもらうことが必要である。上から下への押しつけや丸投げは面従腹背になり、常に「やらされ感」が付きまとい能力以下の結果しか出すことができない。さらに、未来について語り合う一方、逆に何もしなかったときのダメージ・リスクについても話をすることで、リスク回避のための防御本能による動機付けも行う。

また理念・ビジョンの伝え方には、「感情」に響かせる以外にもう一つのポイントがある。理念・ビジョンの内容自体は真剣に考えつつも、それを表現する時に「おもしろさ」「ユニークさ」といった工夫を加えることである。一度聴いたら忘れない、メンバーの心にすっと入るワーディングが求められる。トップは「言葉」にこだわりを持ってほしい。その影響力は想像以上に大きい。

「感情」に響く対話と、コミュニケーションにおけるキーワードの工夫などを通じて、メンバー自身が事業の取り組みを自らのやりたいことと重ね、自ら行動を選択できるようになる。これが理念・ビジョンの「内面化」である。この内面化によりセルフコントロール力(自制心)が高まり、他の作業や先延ばしといった誘惑にも負けずに、行動を前倒しすることが期待される。

次に2つ目のポイント、ブレークスルーゴールの「内面化」。ブレークスルーゴールの設定は戦略視点から検討することも大切だが、メンバーの心理状態が「フロー状態」になるように、現実的な理想主義で、ストレッチ目標を設定することも大切である(図1)。自分の現状能力からすると少々高いが、なんとかクリアできなくもない、もし達成できたら非常に意義のある戦略的に重要な目標である。

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組織トップとしては、このストレッチ目標をメンバーに内面化させるプロセスにおいて、あまり過度な管理や抑圧を与えてはいけない。それは内面化のプロセスを妨害し、自律性が低下してしまう恐れがあるからだ。

もしメンバーが能力や工数に不安を抱えているようであれば、上司や周りがサポートすることが必要である。例えば、目標をもう少しブレークダウンし、目標レベルを一旦下げ、メンバーをリラックスさせる。とにかく行動をスタートさせ、まずは小さい成果を出し、自信をつけさせてから、次のレベルに挑戦させていくようにするのが効果的な方法である。また他の業務の負荷が大きく、工数が十分とれない、集中できないということであれば、上司や周りが協力して障害となる業務を除いてあげることも必要となる。

次回コラムでは、ブレークスループロジェクトの「実行段階」「報告段階」について心理的側面から考えてみたい。

プロフィール

株式会社ニューチャーネットワークス 取締役 シニアコンサルタント
福島彰一郎
[略歴]
1995年東京大学大学院工学系研究科材料学専攻修士課程修了
1996年同大学先端科学技術研究センター研究生
1998年米カーネギーメロン大学技術政策学部修士課程修了
1999年に経営コンサルティング会社ニューチャーネットワークスに入社、現在に至る。
[著書・訳書など]
「図解でわかる・技術マーケティング」(共著、JMAM、2005年)
[URL]
http://www.nuture.co.jp/

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