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現場活性化のための「ブレークスループロジェクト」の進め方

株式会社ニューチャーネットワークス 福島彰一郎

第4回「オン」と「オフ」のコミュニティをしかけ「有能感」「関係性」を充足する

最終回は、ブレークスループロジェクトの「実行段階」「報告段階」について心理的な側面から考えてみる。

まずは「実行段階」である。前回のコラムにおいて、理念やビジョン、ブレークスルーゴールを内面化し、メンバーはプロジェクトの意義を見いだした。また全体像をとらえることで、目の前の小さな一歩もその意味や重要さを認識できるようになった。とはいうものの、ブレークスループロジェクトの実行段階では、実際の活動は今まで自分の行ってきた仕事のやり方と違っているはずである。慣れていない部分も多く、いざ一歩踏み出そうとしても、具体的な行動レベルをどうしたらよいのかイメージできず、戸惑い、不安になる。

そのとき、リーダーはメンバーに「お前の責任なのだから考えてなんとかしろ」などと決して言ってはいけない。プロジェクト全体に関わるメンバーも一緒に考えるし、サポートもする、いざとなったらトップが責任を取るという姿勢を示すことが大切である。ブレークスループロジェクトという、一つの運命共同体、言い換えると「コミュニティ」があり、みんなでやっているのだという環境を見せる。それによって「関係性」の欲求が満たされる。

コミュニティでは、メンバー間やチーム間のコミュニケーションとコラボレーションについてルールをつくり、それをトップおよび事務局が促進する必要がある。例えば、以下のようなルールを徹底するとよい。

  • リーダーは日々メンバーに声をかける
  • メンバーは日々の活動を報告し、自分の活動でよい取り組みが発見されればそれをベストプラクティスとして他メンバーに紹介し、参考にしてもらったり、さらによいアイデアを追加してもらったりする
  • 困っていることがあったら、オープンに助けを求める
  • よい情報や人脈ができれば、他チームに助けを差し伸べる。その際に助けてくれた相手の申し出を断ることはタブーとする

このようなやりとりで、他者にとって有益な行為をとることで、メンバーの「有能感」の欲求が満たされるようになる。

オーナーやリーダーから、メンバーにフィードバックする方法にもポイントがある。メンバーのモチベーションを維持するには、褒める内容と批判する内容を3:1以上にすることが心理学的に重要といわれる。プロジェクトがなかなかうまくいかない初期段階において、出来ないことを「なぜ、なぜ、なぜ」と問い詰められれば、メンバーは「すいません」としかいいようがない。これではモチベーションはゼロになってしまう。

ポジティブなフィードバックのポイントは、フィードバック内容の第一は結果への評価ではない。行動したこと自体を評価し、その人が成長したことを称賛する。先天的なものでなく後天的なものを褒める。そのあと結果を評価する。フィードバックにおいては、評価の対象となる行動を自ら選んで動いていることを実感させることがポイントとなる。それによって自律性が維持される。プロジェクトの始めはなかなか成果が出なかったとしても、自律的に行動しつづければ、否が応でも知識・スキルはあがり、ある閾値を超えると自ずと成果が出る。

実行段階においてリーダーが仕掛けることのできる工夫として、「オン」と「オフ」のコミュニティの活用がある。コミュニティはブレークスループロジェクトというフォーマルな「オン」のコミュニティだけでなく、仕事を離れて違いのことをよく知るためのインフォーマルな「オフ」のコミュニティが存在する。飲み会、運動会、地域イベント、趣味のサークル、個人ブログ、メーリングリストなどがオフの場としてありうる。オフで相手の価値観や趣味を知り、「話をしてみると結構いいやつだ・・」と親近感をもつと、オンの場面で助けてあげたくなるもの。人は相手に対して親近感をもつと何かしてあげたいと思うものである。

コミュニティは、オンとオフのコミュニティを意図的につくり、連動されることが望ましい(図1)。

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最後にプロジェクトの「報告段階」である。誰しも成果をまず評価したいところであるが、すでに述べた実行段階でのフィードバックの方法と同様、まず行動面の評価を行うことが重要である。どれだけ行動し、気づきを得て、ノウハウをため、メンバーが成長し、他者に貢献したかを第一に評価する。その上で当然、成果も評価していく。成果が出て、評価されると、充足感・達成感といった快感を脳は覚え、さらにもっと高い快感を覚えて、次のテーマにチャレンジするようになる。

組織変革は初めの5~20%がしんどいという。20%を超えると参画者が増えやすくなり、50%を超えるとさらに新しいやり方が求められてくる。ブレークスループロジェクトを組織の一部からスタートし、これを継続・拡大し、組織全体を活性化させると、理念が現場で具現化され、文化・DNAとなる。それをリードしていくのが組織トップの役目であってほしい。

プロフィール

株式会社ニューチャーネットワークス 取締役 シニアコンサルタント
福島彰一郎
[略歴]
1995年東京大学大学院工学系研究科材料学専攻修士課程修了
1996年同大学先端科学技術研究センター研究生
1998年米カーネギーメロン大学技術政策学部修士課程修了
1999年に経営コンサルティング会社ニューチャーネットワークスに入社、現在に至る。
[著書・訳書など]
「図解でわかる・技術マーケティング」(共著、JMAM、2005年)
[URL]
http://www.nuture.co.jp/

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