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成果に繋がるタレントマネジメントの進め方

株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO 大野順也

第2回タレントマネジメントの目的と進め方

1. タレントマネジメント実現に向けた取り組み

タレントマネジメントとは、カタチの決まった人事制度のようなモノを指すわけではありません。また特別な仕掛けや仕組みでもありません。ましてや、タレントマネジメントシステムと名の付くシステムを導入することが、タレントマネジメントを実現し、経営戦略にひもづく人材マネジメントの成功に導くわけでもありません。タレントマネジメントを正しく理解する上では、まずこの点は抑えておいてほしいと考えています。

そもそもタレントマネジメントとは、人材のタレントに着眼した、比較的新しい人材マネジメントの概念です。つまり、会社組織でタレントマネジメントに取り組むということは、特別な仕掛けや仕組み、また新しいシステムを導入することなく、既存の人材マネジメント施策にタレントマネジメントの考え方に沿った取り組み要素を練り込んでいくことになります。既存の人材マネジメント施策をタレントマネジメントの考え方で見直す作業と言っても過言ではありません。そして、会社全体で個人のタレントに着眼する文化や風土を醸成し、浸透させていくわけです。

これらの協会や機構の定義からみると、「タレントマネジメント」は総花的な人材マネジメントに感じられることが否めません。この一見すると総花的に見える「タレントマネジメント」を正しく理解するために、人材マネジメントのこれまでの変遷から整理してみます。

タレントマネジメントは、「設計」「活用」「開発」「運用」の4つフェーズを実行していくことで実現させていきます。

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<設計>
「設計」とは、人材マネジメント施策全体をタレントマネジメントの観点から設計し、場合によっては市場環境の変化や長期的なビジョン、企業が進む方向性等の変化に伴って、その施策全体を微調整します。従業員に求めるタレント を、タレントマネジメントを推進する各社の目的と照らし合わせながら定義し、活用方法を具体化していく過程といえます。
<活用>
「活用」とは、その名の通り、タレントを実際の仕事の場で活用・育成することを指します。設計段階で定義されたタレントを、企業の目的が達成できるように活用・育成するわけです。このフェーズで重要な役割を担うのが、 現場のタレントマネジャーです。社員ひとりひとりに対して、日常的に接し、その人たちのタレントを把握し、評価する役割です。多くの場合、組織の責任者が兼務することになります。
<開発>
タレントは活用していく中で、新しいものが発見・発掘されたりします。それらがタレントの「開発」です。開発は、日常の仕事の中からだけでなく、日常に無い新しい機会を提供することでも実現します。これらの取り組みは、個人の中に潜在的にあるタレントを発掘するだけでなく、日常、今の事業機会ではフォーカスされていない個人の存在そのものを発見する機会にも繋がります。
<運用>
「運用」とは、タレントマネジメントの要素が落とし込まれた人材マネジメントの仕組みや取り組みを実行することです。タレントは変化します。日常の活動を通してタレントが伸びることもあれば、現状のまま維持される場合、また逆に減退していくこともあります。日常の活動を通して、タレントの変化を見ていくのは、タレントマネジャーの仕事です。

このように、タレントマネジメントは、「設計」「活用」「開発」「運用」の4つのフェーズを経て、またこれらを恒常的に回すことで実現するのです。この中で、最も重要なのは「設計」のフェーズです。そもそもタレントマネジメントは人材マネジメントの考え方であって、昨今、各社が導入しているタレントマネジメントに特化したITツールのことを指すわけではありません。ましてやITツールを導入して実現するものでもありません。

つまり、真のタレントマネジメントを実現するためには、会社の経営戦略を念頭に置き、タレントマネジメントを推進する目的を定義して、人材マネジメト施策を構築・運用する必要があるといえるでしょう。

2. タレントマネジメントを推進する目的

では、タレントマネジメントを推進する目的にはどのようなものがあるのでしょうか。前述の通り、タレントマネジメントは会社の経営戦略実現を前提に推進するものであるがゆえ、経営戦略が百社百様であると同様、タレントマネジメント推進の目的も百社百様です。しかし、それらの目的はいくつかに分類することができます。

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2-1. 短期の目線-人材の適正配置・社内コラボレーション

会社規模が大きくなると、従業員個々を見ることは難しくなり、また組織間の情報の行き来も難しくなります。場合によっては、セクショナリズムが発生することもあるでしょう。さらに組織内に職種や役割が増えれば増えるほど、従業員個々の意思に沿わない異動や配置も少なからず発生します。タレントマネジメントを推進することで、従業員個々のタレントを明らかにすると共に、キャリアビジョンやキャリアプランを可視化し、人材の適正配置を通して、これらの不具合を解消していきます。つまり、タレントマネジメントが人材の適正配置に関する課題解決の一助を担うでしょう。

次に、社内コラボレーションの観点から考えてみます。ある職務経験を持った人の話を聞きたい、その経験を参考にしたいというニーズが社内にはあります。社内で部署の枠を超えて、経験や知識といったタレントを持つ人を探し出して、過去の経験を聞き出すことができれば、現在の目の前の仕事を進める一助となるでしょう。仕事の質もスピードも大きく改善され、過去の失敗を繰り返さずに、事前に最善の対策を講じることに繋がります。新しい商品やサービスを開発するためのプロジェクトチームをつくる際も、関連知識・経験を持つ人はメンバーとして欠かせません。しかし、せっかく有用なタレントを持つ人材が社内にいても、社内で知られていなければ、その人材は社内に存在しないに等しいのです。タレントマネジメントによって各人のタレントが可視化できれば、より効率的・効果的に仕事を進めることが可能になるでしょう。

2-2. 中長期の目線-キャリアデザイン・サクセッションプラン

タレントマネジメントは、5年後、10年後の人材育成を目的に取り組む場合もあります。中長期の視点に基づくタレントマネジメントです。一般の従業員に対しては、どのようなキャリアを描かせるのか。数年後にどの分野で、どのような役割に就いて活躍させるのか。そのためは今、どういう知識を習得させ、どのような経験を積ませておく必要があるのか。個々人のキャリアデザインに沿って育成・配置することは、中長期の視点に基づくタレントマネジメントの代表例といえます。

次世代の経営者を育成することも、タレントマネジメントの重要な取り組みのひとつです。優秀な人材を選び、特別な研修プログラムを受講させ、あらゆる部門を経験させていく次世代の経営者候補の育成。つまり、サクセッションプランもまた、重要な中長期の視点に基づくタレントマネジメントのあり方です。

このようにタレントマネジメントは、会社の経営戦略に沿って、人材のタレントをどのように育て、活用していくのかといった目的があって初めて成り立ちます。つまり、会社の経営戦略に沿った人材マネジメントの仕組みや取組みを、どのように整備するのかが極めて重要であり、タレントマネジメントを推進・実現していく上での本質といえます。

プロフィール

株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO 大野順也
[所属・役職]
株式会社アクティブ アンド カンパニー 代表取締役社長 兼 CEO
[略歴]
1974年生まれ。大学卒業後、パソナ(現パソナグループ)に入社。営業を経て、営業推進、営業企画部門を歴任し、同社の関連会社の立ち上げなども手掛ける。後に、トーマツコンサルティング(現デロイト・トーマツコンサルティング)にて、組織・人事戦略コンサルティングに従事。 2006年1月に「アクティブアンドカンパニー」を設立し、代表取締役に就任。現在に至る。
[URL]
株式会社アクティブアンドカンパニー

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