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中小企業のマイナンバー対応のポイント!

社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 特定社会保険労務士 金子 浩

第4回マイナンバー制度導入における中堅・中小企業の留意点

今回は、マイナンバー制度の導入の対応にあたり、中堅・中小企業において特に留意が必要なポイントについてみてみたいと思います。

(1) いつまで保管?"廃棄ルール"の重要性

「マイナンバー法」に基づくマイナンバーの取り扱いとして、「個人情報保護法」に基づく個人情報の取り扱いと大きく異なる部分として、「保管~廃棄」があります。

法定保存期間が定められた書類について、その期間を過ぎて保管し続ける例は少なくありません。しかし、このマイナンバーは、保管できる場合が限定されており、法令で定められている保存期間を経過した場合には、速やかにマイナンバーを廃棄又は削除しなければならないのです。

ところが、【図表1】のように各書類の保存期間が異なるため、まとめて 廃棄や削除することができません。従って、各手続きにおいてどのようなフローで保存・廃棄を行うか、検討しなければなりません。そして、保管期限を経過した 書類やデータを速やかに、復元できない手段で廃棄又は削除をします。更に、マイナンバーを廃棄した事実を管理台帳等に記録し、保存しておかなければなりません。ただし、「中小規模事業者*1」においては、マイナンバー等を削除・廃棄したことを責任ある立場の者が確認することで対応が可能とされています。

*1『第3回 図表3 安全管理措置の対象となる「中小規模事業者」』参照

この「保管~廃棄」のプロセスにおいては、"廃棄漏れ"が生じないように、届出書類ごとに保管期限を明記し、当該年度に廃棄すべき書類を明確に判別できるようにしたり、電子データであれば自動で削除されるシステムを構築したりと、工夫して仕組みづくりをすることが重要であると考えられます。

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(2) 外注先との「委託契約書」見直しの必要性

給与計算業務、社会保険事務や税務申告業務などを外部に委託している企業は数多くあります。【図表2】そして、これらの業務の中で取り扱う社会保障及び税に関する手続書類には、マイナンバーの記載が求められています。このようなマイナンバー取り扱い業務を委託する委託者は、委託先においても委託者自らが果たすべき安全管理措置*2と同等の措置が講じられるよう「必要かつ適切な監督」【図表3】を行わなければなりません。

*2『第3回 (3)企業に求められる"4つの安全管理措置"とは?』参照

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また、マイナンバー取り扱い業務の委託を受けた委託先事業者は、委託者の許諾を得た場合に限り、再委託をすることができます。再々委託の場合も同様です。【図表4】このように、委託先事業者がさらに再委託、再々委託をする場合、委託者は委託先のみならず、再委託先、再々委託先の事業者にも上記同様「必要かつ適切な監督」を行わなければならないことを十分に留意しておく必要が あります。

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(3) 「Pマーク」取得企業の留意点

「プライバシーマーク(通称:Pマーク)」を取得している企業の方から、「うちの会社は、Pマークを取得しているから、マイナンバー対策は今さらやらなくても大丈夫だよね?」といった問い合わせをいただきます。しかし、実はこの考えには大きな誤解があるのです。Pマークの要求事項は、「マイナンバー法」や「特定個人情報保護ガイドライン」の要求事項とかなり異なるため、Pマーク取得企業は別に対応しなければならない事項がありますので留意が必要です。

今年5月にPマークの認定審査機関であるJIPTEC*4より「番号法および特定個人情報ガイドラインへの対応について」が公表されました。マイナンバー制度が始まると、「Pマーク」の審査では、マイナンバー法および特定個人情報の取り扱い等が確認されることになります。Pマーク取得企業は、「Pマーク」の維持・更新をするために、マイナンバー対応をする必要があります。具体的には、下記<参考資料>等を参照のうえ、対応しましょう。

*4JIPTEC:一般社団法人 日本情報経済社会推進協会

(4) マイナンバーとの付き合い方

JNSA*5の調査によると、2013年の1年間に日本で1333件の個人情報漏洩があり、1件あたりの損害賠償額は1億6千万円にも上ると試算されています。また、漏洩の原因をみてみると、「管理ミス」「誤操作」「紛失・置き忘れ」のヒューマンエラーが例年上位3位を占めています。このことは、万が一情報漏洩を起こしてしまった際に、企業経営に与える影響は計り知れず、その原因の多くはちょっとした「人のミス」によるものであるということです。つまり、ミスが生じても情報漏洩しない(あるいは漏洩しにくい)、管理システムや管理体制をつくることが、皆さんの企業を守ることになるということです。

「マイナンバー法」においては、事業規模や業種などにかかわらず、社員1人 のごく小規模な企業から大企業まで、個人事業も含めすべての企業が対象となっています。決して他人事ではなく、皆さん自身のことなのです。「もし、皆さんの会社からマイナンバーが漏洩してしまったら・・・・・・」場合によっては、会社の存続に関わる事態を招くかもしれません。そうならないように、会社の実情に合った「マイナンバー対策」を講じて、マイナンバーと上手に付き合っていただければ幸いです。

*5JNSA:NPO日本ネットワークセキュリティ協会

4回にわたりマイナンバー制度導入における対応について話をしてきました。この10月には通知カードの配布が始まり、今まさにこの「マイナンバー制度」がスタートを切ろうとしているこの時期に、通常業務を抱えながら、まだ誰も経験したことのない新制度への対応をされている中堅・中小企業の経営者とご担当者に少しでもお役立ていただけましたら幸いです。

参考資料

※上記1)2)の資料に示す事項は、今後国が示す指針等に応じて、見直される可能性があり、具体的な対応についても、国の指針等を踏まえながら、別途、段階的に示される予定です。

プロフィール

社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 特定社会保険労務士 金子 浩
[所属・役職]
社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 法人社員
[略歴]
1997年3月 筑波大学卒
1998年3月 財閥系不動産グループに入社。約2年半、各事業部での業務に従事。
2000年10月 総務・人事部門にて労務管理業務、採用業務、人事制度の企画・立案等に従事。
2004年10月 総務・人事課長に就任。
2005年1月 「人材募集センター(グループ会社5社の採用部門を統括)」を立ち上げ、チームリーダーとして統括業務に従事。
2005年12月 社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所に入所。
労務リスクを回避する社内規程の作成。解雇や希望退職のサポート、賃金制度や人事評価制度の構築など人事・労務のコンサルティング業務に従事。
2013年8月 社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所 法人社員に就任。
[書籍]
「退職金切り下げの理論と実務 –つまずかない労務管理-」 信山社
第二東京弁護士会 労務社会保険法研究会 共著(2010.3)
「企業のうつ病対策ハンドブック -つまずかない労務管理2-」 信山社
第二東京弁護士会 労務社会保険法研究会 共著(2011.7)
[講師]
「企業のためのうつ病対策」 第二東京弁護士会 研修会(2011.11)
「経営者・社員をリスクから守る!!企業のうつ病対策」
東京中小企業投資育成株式会社 主催 (2011.12)
「突如会社を襲う!労務トラブルの回避策」(経営者・人事責任者向けセミナー)
開東社会保険労務事務所 (2012.10~多数開催)
[URL]
社会保険労務士法人 開東社会保険労務事務所

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