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中小企業のグローバル化を考える

産業能率大学教授/経営学・戦略論・組織論 平田譲二

第1回アベノミクスとは何だったのか?

今後必要とされる中小企業のグローバル化について、4回にわたって執筆していこうと思います。初回は、2012年末に発表されたアベノミクスに言及することから始めましょう。

今年秋には新しい「三本の矢」が発表されましたが、12年末に安倍首相が打ち出したアベノミクスは、政府の発表とは裏腹にまだまだ当初の思い通りには成果が出ていないといえます。当時、三本の矢として示された(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略の現在の成果を見てみましょう。

図. アベノミクス「三本の矢」

金融緩和によって世の中に多くの現金を出回らせてインフレ気味にするというのが第一の矢の目的です。しかし、思ったほど現金が出回っていません。政府が現金を出回らせるには、市中銀行が販売する国債を日銀が買い取るという手段が一般的です。市中銀行が国債を売って得た現金を企業に貸し付けることで、世の中に現金が出回ることになるからです。ところが、銀行からの企業の借入れがそれほど活発化していないために、日銀が支払った現金は、市中銀行が日銀内に開設した自行口座に、預金として眠ったままになっていると思われます。

第二の矢である機動的な財政政策とは、国が公共事業を実施することによって、受注企業に直接現金を支払うことを示しています。企業に現金が直接支払われることから、世の中に現金が出回ることになるわけです。ただし、この事業の決定もようやく動きが活発化し始めたばかりで、まだまだ機動的に回りだしたとはいえないでしょう。

民間投資を喚起する成長戦略という第三の矢は、中小企業に最も関係がありそうです。ただし、これも今のところJA改革や最近発表された法人税率の引き下げぐらいで、まだまだ民間投資を喚起するまでには至っていないのが現状でしょう。

アベノミクスの政策ではそれほど市中に現金が出回っていませんから、円の過剰供給による円安にはならないはずです。しかし、2%のインフレターゲットの達成を目指す日銀が、意図的に円売りドル買いという為替への介入によって「円安を助長」させているようです。円安ならば輸入品の価格は上昇しますし、貿易赤字を助長することになります。

他方で、円安になると海外企業にとっては日本製品が安く購入できるわけですから、日本からの輸出が増加するはずです。しかし、それほどの増加は見られません。なぜなら、多くの大手輸出企業はすでに国内生産から海外生産へと移行しており、思ったほどには輸出額が伸びない状態が続いているからです。こうして政府にとっては想定外の状態が継続しているために、2011年以降日本の貿易赤字が増大し続けています。

次回は、日本の経済と比較する意味で、欧州の事情をみることにします。

プロフィール

産業能率大学教授/経営学・戦略論・組織論 平田譲二
[所属・役職]
産業能率大学教授
[略歴]
1976年東京大学法学部を卒業し、日産自動車(株)に入社。欧州地域向けの輸出営業や国内事業の販売・マーケティング等を担当し、1999年6月退社。2000年に一橋大学大学院に入学し、2005年に商学博士号を取得。2008年から産業能率大学教授。専門は経営学・戦略論・組織論。2013年4月からは同学グローバルマネジメント研究所長を兼務。

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