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中小企業のグローバル化を考える

産業能率大学教授/経営学・戦略論・組織論 平田譲二

第2回中小企業のグローバル化を、ドイツ企業に学ぶ

欧州には債務危機に苦しむギリシャのような国もありますが、一方でドイツのように健全な国家財政を維持している国もあります。日本でバブル経済の崩壊が始まったのは1990年ですが、同じ年に当時の西ドイツは社会主義経済の国であった東ドイツを統一したことで、統一ドイツとしての国家経済は最悪の状態を迎えます。ただし、東欧圏が社会主義経済から資本主義経済に転換する時期でもあったため、ドイツ企業はこの地域に潜在市場を発見することになりました。ただし、東欧市場はまだまだ小さかったために、旧西ドイツの大企業以上に中堅・中小企業が先行して進出することになります。東西ドイツの統一から25年を経た現在、日本や他の国の企業と比較してもいかにドイツ企業が国外へ進出しているかが分ります(表は、2014年データ)。

各国の直接投資残高と輸出額

仮にドイツの企業活動を参考にしてみた場合、日本企業の今後はどうあるべきなのでしょうか?様々な製品、特に家電の製品構造がアナログからデジタルへと変化したことで、多くの日本メーカーが韓国・台湾・中国メーカーに押されて苦境に立たされています。1980年代は飛ぶ鳥落とす勢いの日本企業の多くが苦戦しているのが現状です。ただし、日本企業の技術力がなくなった訳ではありません。素晴らしい技術力を利益に繋げる方法を間違っただけなのでしょう。

明治維新以降、海外から様々な技術を取り入れてきた日本企業は、輸入した技術をその生真面目さから独自のものへと変化させてきました。その行き過ぎたものは最近「ガラパゴス化」と揶揄されますが、第二次大戦以降も米国から多くの技術を学び、現在の日本企業の技術が成立しています。これを1992年以降の中国社会主義市場経済の歴史と重ね合わせてみましょう。改革開放以降発展してきた中国は、2001年にWTOに加盟して一気に経済発展を加速しました。ただし、戦後日本の地道な技術導入とは違って、世界最先端の技術を様々な税制の優遇措置などによって、強引に獲得しているように見えます。それ故に、個別技術の間に「ひずみ」が存在することも事実です。つまり、最先端の技術を持ちながら実はその先端技術を下支えする中間技術や基礎技術の裾野が狭い、というひずみの存在です。

日本は、1970年代の二度のオイルショック、90年からのバブル経済の崩壊、2008年のリーマン・ショック、そして2011年の大震災などを経験して、省エネ、環境技術、省電力技術などが世界でも飛び抜けています。こうした技術は、大企業のみならず、中堅・中小企業の中に分散して存在します。しかも、これらの技術は先進諸国でも必要とされているだけでなく、これから発展していく国々でも当然必要とされるものです。

日本の中小企業が、こうした技術の海外への移転に重点を置くならば、大企業のみならず海外進出の機会が大幅に増えるでしょう。ドイツの多くの中小企業が東欧圏に進出したように、日本の中小企業も東アジア市場を中心にしながら、グローバル化する時がきたといえるでしょう。

プロフィール

産業能率大学教授/経営学・戦略論・組織論 平田譲二
[所属・役職]
産業能率大学教授
[略歴]
1976年東京大学法学部を卒業し、日産自動車(株)に入社。欧州地域向けの輸出営業や国内事業の販売・マーケティング等を担当し、1999年6月退社。2000年に一橋大学大学院に入学し、2005年に商学博士号を取得。2008年から産業能率大学教授。専門は経営学・戦略論・組織論。2013年4月からは同学グローバルマネジメント研究所長を兼務。

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