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中小企業のグローバル化を考える

産業能率大学教授/経営学・戦略論・組織論 平田譲二

第3回中小企業の技術とネットワークの重要性

今年6月30日に政府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2015」、いわゆる「骨太の政策」について今回は言及したいと思います。

図. 経済財政運営と改革の基本方針2015〜骨太の政策〜

私は経営学の研究者ですので、「骨太の政策」の中から企業活動に関係がありそうな部分のみをかいつまんでみたいと思います。政策の重点課題としてランダムではありますが、サービス業の生産性向上、農林水産業の成長産業化、観光の促進、IT・ロボットによる産業構造の改革、医療等分野のICT(Information and Communication Technology)化、女性が働きやすい制度等への見直し、外国の高度人材や留学生等が活躍しやすい環境を整備、といった項目が並んでいます。

生産性とは、投入した労働力に対する生産量の多寡で測られることが一般的です。生産活動の多くの部分を機械化している製造業に比較して、サービス業はどうしても人の仕事に依存しがちです。こうした理由から、サービス業の生産性向上という課題が出てきているのでしょう。レストランやホテル等がお客様を待っていても、開店休業状態なら生産性はゼロということになります。一方で上海から巨大なクルーズ船がやって来て、3,000~4,000人の中国人観光客が大金を落してくれたなら、少なくともその日のサービス業の生産性は非常に大きなものになるでしょう。これから人口の減少が確実な日本にとって、自助努力によるサービス業の生産性向上以外にも、観光(観光業そのものがサービス業)の促進の果たす役割がそれほど小さいものでないことが分ります。

一方、やっとTPPが大筋合意し、政府も農林水産業の成長産業化をTPPと関連付けています。事業規模が小さくても経営を維持できるように保護されてきた日本の農業も、今後は「規模の経済」を享受できるような形態へと変化する必要があるはずです。

IT・ロボットによる産業構造の改革や医療等分野のICT化などは、従来から日本企業が得意とする分野ですから、大企業のみならず多くのベンチャー企業も参加しながらその産業分野の裾野が広がっていくものと思われます。このような先端産業の成長過程では、固有技術を持った中小企業と、そのネットワーク内にいる関連技術をもつ他の中小企業も必要となるでしょう。さらには、外国企業との提携、必要であればM&Aの実行も考えられます。

今回の「骨太の政策」に盛り込まれた重点課題は、女性の社会進出や留学生が活躍できる環境の整備なども含めて、全てダイバーシティー(多様性)の問題に行きつきます。日本企業にとって、本格的なダイバーシティー・マネジメントは緒に就いたばかりなのですが、このダイバーシティー・マネジメントとは、「人種・宗教・言語・性別・健常者や障がい者・年齢などの区別なく、すべての労働者が生産性高く働くことができる環境を築き上げる統合的な管理」ということができます。

その中でも多くの中小企業にとって課題となるのが、ネットワークを活用しながらのグローバル化のマネジメントではないでしょうか。次回はこのグローバル化に言及したいと思います。

プロフィール

産業能率大学教授/経営学・戦略論・組織論 平田譲二
[所属・役職]
産業能率大学教授
[略歴]
1976年東京大学法学部を卒業し、日産自動車(株)に入社。欧州地域向けの輸出営業や国内事業の販売・マーケティング等を担当し、1999年6月退社。2000年に一橋大学大学院に入学し、2005年に商学博士号を取得。2008年から産業能率大学教授。専門は経営学・戦略論・組織論。2013年4月からは同学グローバルマネジメント研究所長を兼務。

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