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「働きかた」とICTが武器となる新・在宅医療ビジネス

インキュベクス株式会社 代表取締役 上村隆幸

第4回プラットフォームリーダーを目指すためのアセスメントプロトコル

医療介護ビジネスのプラットフォームリーダーを目指そう!

業界の中で多大な影響力を発揮する存在に、「プラットフォームリーダー」があります。

業界の中で自社のサービスを多くの他社に利用してもらい、そのサービスが他社のビジネスにとって欠かせない基盤となることで影響力を発揮するという存在です。

例えば、GoogleやLINEなどは顕著な「プラットフォームリーダー」の事例です。この2社は特定の業界にとどまらず、世の中全体に影響力を発揮する「プラットフォームリーダー」といえるでしょう。

いまやネット上の検索の多くがGoogleによるものとなっていますし、多くの企業のビジネスにGoogleは影響しています。(具体社名を最小限に)LINEも多くの個人ユーザーを抱え、その通話やメッセージの機能をビジネスに使う企業もありますし、公式アカウントには多くの企業が名を連ねています。

こうした「プラットフォーム」の中心となる存在である「プラットフォームリーダー」を目指そうということが、今回お伝えしたいことです。

医療介護ビジネスでの「プラットフォームリーダー」を、これまでは病院や大規模な老人ホームなどが務めてきました。しかし今、病院や施設から在宅へと比重が変わりつつあり、誰が「プラットフォームリーダー」を務めるかに注目が集まっていることから、チャンスは大きいといえます。

特に当社が開業と運営を支援している「訪問看護ステーション」は「地域医療介護の中核を担う」といわれているため、より「プラットフォームリーダー」に近いビジネスといえます。

まずはサービス設計、システム設計、オープン・クローズ戦略

「プラットフォームリーダー」を目指すには、「プラットフォーム」となるサービスを供給して、他社にも活用してもらわなければなりませんが、その時に必要になるものが「オープン・クローズ戦略」です。

「プラットフォーム」を供給する他社は競合でもあるため、どの情報やサービスを積極的に提供し、どれを提供せずに守るのかという戦略が重要になるのです。

まず、誰に供給するのか、「プラットフォーム」の供給先から考えなければなりません。次に、どのようなものを、どういった形で提供するのか「サービス設計」を行い、そのサービスが円滑に機能するための「システム設計」を行います。

供給先に情報やサービスを供給した場合、どういった効果や影響を与えるか、その結果を想定し、その結果から「何を見せるのか」「何を隠すのか」、その範囲を決定していくことになります。ここには「できる限りたくさんの方に使ってもらいたい」という思いとのジレンマがあります。

できる限りたくさんの方に使ってもらうためには、価格はなるべく安く抑え、場合によっては無料にすべきです。

上記で例に挙げたGoogleやLINEなども、個人の使用はもちろん、企業も検索などの基本サービスを利用する分には無料です。広告や公式アカウントの利用で初めて有料になります。

無料のサービス、安いサービスを多くの人に供給するわけですから、「どこで利益をつくるか」も含めた事前のビジネス設計がとても重要なことがお分かりいただけると思います。

「オープン・クローズ戦略」とは、単に情報の公開・非公開だけでなく、こうした利益の事前設計まで含むビジネス戦略なのです。

訪問看護のプラットフォームとなるアセスメントプロトコル

実際に当社の例では、訪問看護用に独自に開発した「アセスメントプロトコル」を「プラットフォーム」として提供し始めています。

「アセスメントプロトコル」とは、患者(利用者)の状態を様々な情報から分析(アセスメント)するための手順(プロトコル)です。一人で訪問し、一人で利用者の状態をチェックしなければならない訪問看護師にとって、その重要な判断基準となるものです。

当社のものは、進んだ看護理論を持つ米国での就業経験を持つ看護師と共に当社が開発したもので、米国で実際に用いられていた「アセスメントプロトコル」の項目から訪問看護用に抜粋して作成した極めて実践的な内容となっていて、初めて訪問看護を行う看護師でも安心できるようになっています。

これまでハードルが高い印象があった訪問看護の社内OJTを標準化によってどのステーションでもできるようにし、さらに時間を定義して短縮を図ることで訪問の効率を飛躍的に高める効果を持っています。

標準化アセスメントプロトコル(看護診断の流れ)

アセスメントプロトコルで用いるシートのサンプル

訪問看護専用の「アセスメントプロトコル」は、その先進性から他の訪問看護ステーションへの波及も見込めますが、それ以上に居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)との意識の共有を図る上で重要となります。

平成27年の報酬改定で、居宅介護支援事業所から訪問看護ステーションなどに行う、訪問看護計画書などの書類提出の要請がより厳しくなりました。そこでステーション側から「アセスメントプロトコル」を活用した病状別の詳しい報告を行うことで居宅介護支援事業所をアシストでき、訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所双方にまたがる「プラットフォーム」として機能します。

訪問看護専用の「アセスメントプロトコル」を波及させるための取り組みは、当社が「プラットフォームリーダー」を目指すためではありません。

当社も支援先の全国の訪問看護ステーションをリードしていく使命を持っていますが、それよりも、支援先の訪問看護ステーションが明確な「アセスメントプロトコル」などによって、地域の医療介護ビジネスの「プラットフォームリーダー」として成長・活躍することを願うからこそ、こうした活動に力を入れているのです。

「プラットフォームリーダー」となる取り組みは、先見の明だけでなく非常に速い取り組みの速度が要求されますが、次回は、在宅ケア組織における「世界のプラットフォームリーダー」として、その名をとどろかす組織の秘密に迫ってみましょう。お楽しみに。

プロフィール

株式会社インキュベクス 代表取締役 上村隆幸
[所属・役職]
株式会社インキュベクス 代表取締役
[略歴]
1965年神奈川県横浜市生まれ、産業技術大学院大学在籍。
この3年で500箇所以上の「訪問看護ステーション」の開業・運営業支援を手掛けており、こうしたビジネスの研究、開発、拡張を通じて、超高齢社会における幸福な将来ビジョンを描くことを目指している。

1998年、起業コンサルタント業を開始し、以来2500社を超える起業支援を手がける。日本の医療が在宅へと大きく変化することに従い、「子供からお年寄りまで」すべての生活者が安心と幸福を実感できる地域社会づくりの必要性から、「訪問看護ステーション開業運営支援」を開始。その支援先は民間企業から介護事業者まで全国500社以上に広がる。また「年金の範囲内でも安心して住まえ、良質な生活を実現する医療介護サービス提供と空間づくり」も全国で支援する。
著書に「営業マンよ出かけるな!」(出版文化社)、連載に「新極真空手に学ぶリーダーシップ」(『月刊人材ビジネス』オピニオン)、「地域を支え未来を切り拓くチェンジ戦略」(『経営活力ビジネスIT活用index』日本経済新聞社)、「経営ができる看護師になろう!」(『日経メディカルAナーシング』日経BP)など。
[URL]
インキュベクス株式会社

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