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「働きかた」とICTが武器となる新・在宅医療ビジネス

インキュベクス株式会社 代表取締役 上村隆幸

第6回会社は、従業員は、いったいどうすれば動くのか?

組織はなぜ動かないのか?どうすれば動くのか?

これまで様々な戦略や教育について伝えてきましたが、どんなに良い戦略を立てても、どんなに高度な教育を施しても、それだけでは組織がまったく動かない、ということがあります。

これは戦略や教育に力を入れた経営者様にとってはつらい話ですよね。

「あんなに頑張って戦略を立てたのに、あんなに教育に時間をかけたのに、どうして従業員は動いてくれないんだ? どうすれば動くんだ?」という思いを体験した経営者様は多くいらっしゃるのではないでしょうか?

これは従業員が戦略の良さを理解していないわけでも、経営者の頑張りが伝わっていないわけでも、教育の効果がないわけでもありません。

実は従業員が理解しておらず、戦略を行動に移せない理由になっていたモノとは、「役割」と「手順」なのです。

言い換えれば、「業務内容の標準化」ができていないことが行動できない理由といえます。つまり、従業員が動かない状態というのは、業務の質と量の定義、そして業務フローが明確でない状態といえるのです。

たとえば当社が支援している訪問看護ステーションの例で言えば、病院勤務しか経験のない看護師さんにケアマネとの連携や営業をただ命じても簡単には実践できません。

実践するには、非常に細分化された評価基準を与えなければならないのです。

例えば「利用者獲得の目標値は?」「利用者のニーズは?」「契約までの期間は?」「担当者は?」「業務フローは?」「営業ツールは?」「スケジュールは?」「管理手法は?」「問題発生時の対応は?」「評価基準は?」「マニュアルは?」「定着方法は?」といった項目を準備して、それらが逐一達成できているかを確認してあげる必要があります。

これらの項目を準備せずに、ただ「利用者のために頑張ってください」とだけ言っていても、なにか疑問にぶつかった時、当然ながら仕事が止まったりトラブルが発生したりするでしょう。その状態が続けば、看護師さんのやる気も損なってしまいかねません。

でも、「何を」「どのように」「いつまでに」「どの順番で」「何件」やるのか? それらを明確に伝えたならば、看護師さんは驚くほどスムーズに業務を遂行してくれるようになるのです。

もし、それでも組織が動かないようであれば、その時は、さらにその内容を細かく落とし込んでいくことで解決できます。

「手順」はどこまでも細かく定義していくことで効果が出ますし、「役割」も"やること"だけでなく"やらないこと"も細かく定義することが効果的です。

さらに、単なる箇条書きではなく、フローチャートなどわかりやすい図表にすることで、円滑に組織を動かすことができます。

インキュベクスが提示している訪問看護開業120日間のスケジュールインキュベクスが提示している訪問看護開業120日間のスケジュール

組織を動かす秘訣は"管理会計"の考え方と同じ!

こうした内容を先日、会計・財務畑の経営者にお話ししたところ、彼は非常に大きな衝撃を受けたと言っていました。そして、こんなことを私に言ったのです。

「上村さん、この考え方は"管理会計"の考え方と一緒ですね!」

私も衝撃でした。確かに"管理会計"と、「戦略」のために「役割」「手順」を明確化・細分化する手法とは似ています。

"管理会計"とは、外部に情報提供する財務会計とは違い、経営や事業をより良くするために内部で役立てるための会計です。業績の測定や評価、そしてそれに基づく意思決定のために会計情報を活用する会計ですね。

この"管理会計"と"業務内容"の標準化は、特に「見えていない部分を見えるようにする」という考え方の面で共通しているのではないでしょうか。

例えば"管理会計"を語る上で「機会損失」という視点は非常に重要です。「機会損失」の多くは人件費に係わるものですが、通常の場合、あまり意識されずにいます。

読者のみなさんの業務において、従業員が1時間「何もしなかったら」、どのくらいのキャッシュが流れ出てしまうでしょう。

人件費は従業員がその時間動いていてくれなければ、丸々損失になります。必要な売り上げを出さなければ赤字となり、それは「機会損失」となるのです。

こうした "管理会計"の考え方と、"業務の標準化"で「役割」「手順」を明確化・細分化する方法は、どちらも「見えていない部分を見えるようにする」ことで、組織に進むべき道筋をはっきりと示す役割を持っています。

戦略目標達成に向けた行動

明確化された「事業計画」こそが組織を動かす原動力

このような管理会計にも似た、「戦略」実践のための「役割」「手順」の明確化は、実は特別なことではなく、皆さんも聞いたことのある言葉でその本質が言い表されています。その言葉とは「事業計画」です。

つまり、言い方を変えれば「事業計画」も、「役割」と「手順」を細かく明確にしなければ意味をなさないということです。「役割」「手順」が明確な「事業計画」こそが組織を動かす原動力となるのです。

「役割」「手順」が明確だということは、「管理」や「改善」のプロセスが備わっているということとイコールです。

事業には「PDCA+S」(Plan:計画、Do:実施、Check:評価、Action:改善 + Standard:標準化)、あるいは「SECI」(Socialization:共同化、Externalization:表出化、Combination:連結化、Internalization:内面化)といったプロセスがあり、それが明確になっているからこそ事業の「管理」や「改善」、「情報共有」が実践できます。

つまり、「役割」「手順」が明確である会社は、組織が動きやすい、従業員が働きやすいというだけでなく、経営者にとっても管理や改善がしやすい会社でもあるわけです。

次回はいよいよ最終回。今回触れた「管理会計」などの考え方をさらに詳しく掘り下げていきます。お楽しみに。

プロフィール

株式会社インキュベクス 代表取締役 上村隆幸
[所属・役職]
株式会社インキュベクス 代表取締役
[略歴]
1965年神奈川県横浜市生まれ、産業技術大学院大学在籍。
この3年で500箇所以上の「訪問看護ステーション」の開業・運営業支援を手掛けており、こうしたビジネスの研究、開発、拡張を通じて、超高齢社会における幸福な将来ビジョンを描くことを目指している。

1998年、起業コンサルタント業を開始し、以来2500社を超える起業支援を手がける。日本の医療が在宅へと大きく変化することに従い、「子供からお年寄りまで」すべての生活者が安心と幸福を実感できる地域社会づくりの必要性から、「訪問看護ステーション開業運営支援」を開始。その支援先は民間企業から介護事業者まで全国500社以上に広がる。また「年金の範囲内でも安心して住まえ、良質な生活を実現する医療介護サービス提供と空間づくり」も全国で支援する。
著書に「営業マンよ出かけるな!」(出版文化社)、連載に「新極真空手に学ぶリーダーシップ」(『月刊人材ビジネス』オピニオン)、「地域を支え未来を切り拓くチェンジ戦略」(『経営活力ビジネスIT活用index』日本経済新聞社)、「経営ができる看護師になろう!」(『日経メディカルAナーシング』日経BP)など。
[URL]
インキュベクス株式会社

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