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中堅・中小企業経営の未来を担う、これからの採用

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役
小笠原 隆夫

第2回移りゆく採用・人材確保における課題

第1回のコラムから続いて、今回は最近取り上げられることが多い採用、人材確保に関するいくつかの課題について、その実情を見ていきたいと思います。

1. なぜ多くの新入社員が辞めていくのか

新卒で就職した人のうち、中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が3年以内に離職してしまうことを「七五三現象」などと呼び、売り手市場で採用が難しくなったここ数年では、課題として挙げられることが増えました。

離職率の推移を資料でみると、これは決して最近始まったことではなく、"七・五・三"が"六・四・三"になる程度の変化はあるものの、20年以上前から比率自体は大きく変わっていないことがわかります。

図1 学歴別卒業後3年以内離職率の推移

その時の経済状況に多少左右されている感はありますが、時代とともに変化しているはずの社会状況や人間の気質が反映されている様子はありません。

そう考えると、よほど大きな環境変化でもない限り、この比率が大きく変わることはなく、初期段階のミスマッチとしては、やむを得ないのかもしれません。

ただ、そうは言っても、「七五三現象」と無縁の会社は確実に存在します。もちろん企業規模や業界、仕事内容による違いはありますが、それだけでは説明できません。

定着率が低い会社で典型的なのは、長時間労働や厳しい上下関係が当たり前だった「年長者の価値観」の押しつけです。自分たちは自力で学んだといい、手取り足取り教えるのは甘やかしなどと言いますが、今の新入社員にはかなり苦痛なことです。

最近の若者は、会社や上司からの強制や押しつけ(パワハラ)に敏感で、長時間労働への拒否感が強く、このあたりに鈍感な会社は、すぐにブラック企業と見られます。

ここ数年、自社へ入社させるために就活の終了を強要する「オワハラ」が問題になりましたが、これもお互いの信頼関係を壊し、ミスマッチを増幅させています。

理想の上司像というのは、今も昔もあまり変わらず、「責任をとる」「部下をかばう」「背中を見せる(率先)」「丁寧に教える」「親身になる」などですが、定着率が高い会社に共通しているのは、このような「若手の価値観」をうまくくみ取って対応しているということです。

ミスマッチを減らし、一人一人をケアする地味な努力の積み重ねが必要になっています。

2. 採用に必要なマーケティングの視点

もう一つ意識しなければならないのは、採用活動は企業のマーケティングの一環であるということです。マーケティングは、「商品やサービスを作る」「そのための情報収集や発信」など、顧客への価値提供に関わる活動すべてと定義されますが、採用活動しか見ていないと、この視点が希薄になります。

最近、募集をかけても応募者が来ないという声をよく聞きますが、それは市場原理で考えれば当然のことです。最近の新規求人数と求職者数の推移をみると、その差が徐々に広がる傾向であることがわかります。

図2 新規求人数・新規求職申込件数の推移

ここから言えるのは、今までの採用手法で通用するのは、競争力があるごく一部の会社だけだということです。

従来からの手法は、主にマスマーケティングといわれる多人数に向けた活動ですが、これは市場に応募者が大勢いることが前提であり、労働人口が減ってきている昨今では機能しづらいものです。

これからは、ダイレクトやパーソナルといわれる個別対応の手法や、ニッチやターゲットなどといわれる狙いを定めた手法が必要になっており、実際にそういう動きは増えてきています。

今までの手法にとらわれない動き方が必要になっています。

3. 採用は投資であるということ

最後に、これは改めて言うまでもないかもしれませんが、「採用は投資である」ということは意識しておく必要があります。新卒で入社して定年まで勤める際の生涯賃金が2億円ともいわれますから、社員を一人採用することは、2億円の物件を40年ローンで買ったことになります。

会社からの途中解約(解雇)は原則としてできませんし、売ってお金に替えることもできませんから、人材というのは、常に投資と回収のバランスを取らなければならない難しい投資物件といえます。そして失敗の損害は、資金も代替人材も少ない中堅・中小企業ほど大きくなります。

採用に関して、「どうせ採れない」「どうせ辞めてしまう」などという安易な姿勢では成り立たないということは、理解しておくべきだと思います。

このように、採用、人材確保という活動は、工夫次第でできることがまだまだあります。次回は参考になりそうな考え方や事例をいくつか見ていきたいと思います。

プロフィール

小笠原隆夫
[所属・役職]
ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役
[略歴]
IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、 数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、 人事マネージャー職に従事する。
2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を 担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名〜1000名規模程度まで)を中心に、 豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、 人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の 課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。
パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

2012年3月より「ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社」にパートナーコンサルタントとして参画し、 2013年3月より同社取締役。
2016年4月より「BIP株式会社」に社名変更
[URL]
ユニティ・サポート
BIP株式会社
ブログ:会社と社員を円満につなげる人事の話

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