NIKKEI

トップ>企業マネジメント最新トレンド>中堅・中小企業経営の未来を担う、これからの採用

中堅・中小企業経営の未来を担う、これからの採用

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役
小笠原 隆夫

第3回採用のための打ち手を考える

今回は、採用、人材確保に関して、参考になりそうな考え方や取り組みをいくつか見ていきたいと思います。

1. 「大手志向だから」とあきらめていないか

このところ、特に新卒の大手志向が強まっているといわれています。調査結果を見ると、おおむね4~5割が大手志向で推移しており、直近は前年比で5%ほど比率が上がっているので、いわれている傾向は存在するのでしょう。

図1 学生の規模別志望先の推移

そのせいもあってか、中堅・中小企業の経営者や採用担当者の中には、「どうせ大手には勝てない」というたぐいの発言をする人がいます。しかしこれは、中堅・中小企業の採用では非常に悪い影響があります。

 そもそも中堅・中小企業の採用活動で、欲しい人材を大手にさらわれたような経験は、実際にはあまりないと思います。大手に採用されない多くの人は、現実的な選択の中で中堅・中小企業に目を向けていきますから、そもそも大手企業とかち合うことが少ないのだと思います。

にもかかわらず、大手に劣等感を持つ人は、例えば採用面接や質疑の中で、「大手ほどの給料は払えない」「大手のような研修はできない」など、自社と比較したネガティブ発言が頻繁に出ます。

確かに4割は大手志向でも、残り6割はそうではありません。この人たちにとって、会社からのネガティブ発言は気持ちが冷めるだけで、会社にもメリットはありません。

採用活動をうまく進めている中堅・中小企業は、大手との比較のような無益なことはせず、自社なりの強みをしっかりアピールしています。

例えば、大企業の方が大きい仕事に関わるチャンスがありますが、全体を見るには経験を積まなければなりません。これに対して中堅・中小企業は、仕事は小さくても、全体を見るチャンスは多くなります。

また大企業のように分業化された組織では、一定期間に経験できる範囲に限りがありますが、中堅・中小企業であれば、一人の守備範囲が広いので、幅広い経験を積む機会は増えます。他にも経営者と接する機会や成長実感は、大手に劣ってばかりではないでしょう。

このように、「大手志向だから」とあきらめることには、ほとんど意味がありません。

当初は大手に人材が集まるのは事実ですが、それを踏まえた上で、その人の志向を見極めていけばよいと思います。

2. キーマンを要した体制づくりの大切さ

学生が就職活動をする中で、企業の志望度が下がった理由を調べた結果があり、それによると、労働条件など予想通りの項目がある中で、「人事担当者に魅力を感じなかった」という理由が3位になっています。

図2 志望度が下がった理由

採用活動において、「誰がやるか」というのは、実は非常に大きな要素です。大手のように担当者が何人もいて、他にも多くの社員が関われば、誰か一人の印象に引きずられることは少ないですが、中堅・中小企業ではそうはいきません。「誰がやるか」ということがなおさら重要になります。

ある会社では、営業部門の中心メンバーの社員を、新卒採用の間だけ担当に抜擢しました。社内の抵抗は大きかったですが、話がうまく現場を良く知る者が担当したことで、辞退者が減って入社後の定着も上がるという効果がありました。また、現場との強いつながりで、説明会や面接時に社内の協力体制が格段に良くなりました。

その一方、ある会社では、新卒の会社説明会に社長を担ぎ出したものの、人前で話すことが得意でない社長があまりにも淡々と説明したために、選考に進む者が激減してしまったことがありました。

採用担当には、自社を代表する相応の能力と適性を持つ者に当たらせることが望ましいです。

3. マスからパーソナルへ

最後に、以前も少し触れましたが、採用環境の変化に伴い、応募者が大勢いる前提のマスマーケティングの手法では、労働人口が減りつつある中では機能しづらくなっています。

そんな中、ある会社では、社長と役員全員が、自社で採用したい人材リストを作っています。露骨な引き抜きにならない注意が必要ですが、例えば内定辞退者とその後も個人的な交流を続けていたり、偶然出会った優秀な人との付き合いを続けながら、誘う機会を待っていたりします。誰にでもキャリアの転機はあり、その時に声を掛けられる距離を保つことで良い人材が来る可能性が増え、実際に入社した人も何人かいます。

このような個別対応の動きは増えてきています。人脈やコミュニティー作りも、採用活動の一環になります。 

今までの方法だけにとらわれない、新しい視点が必要になっています。

次回はまとめとして、人材確保からその周辺の人事戦略まで観点を広げ、これから取り組んでいくべき課題を考えたいと思います。

プロフィール

小笠原隆夫
[所属・役職]
ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役
[略歴]
IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、 数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、 人事マネージャー職に従事する。
2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を 担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名〜1000名規模程度まで)を中心に、 豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、 人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の 課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。
パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

2012年3月より「ビジネスインテグレーションパートナーズ株式会社」にパートナーコンサルタントとして参画し、 2013年3月より同社取締役。
2016年4月より「BIP株式会社」に社名変更
[URL]
ユニティ・サポート
BIP株式会社
ブログ:会社と社員を円満につなげる人事の話

[バックナンバー]中堅・中小企業経営の未来を担う、これからの採用

企業マネジメント最新トレンド 一覧へ

日経産業新聞 ビジネス動画 動画で見る、話題の新製品・先端技術 詳しくはこちら

日本大学 通信教育部

月間アクセスランキング

  1. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の具体的な改正内容とその対応のスケジュール
  2. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正における具体的な取組み方法
  3. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正を契機としたISOの活用方法
  4. 企業マネジメント最新トレンド
    正しい売上・利益計画の立て方
  5. 企業マネジメント最新トレンド
    ISO9001及びISO14001の2015年改正の背景と意図

日経産業新聞ピックアップ

2017年10月20日付
  • 米ツナミ、VRで部品組み立て研修
  • サイバーブル、電子看板にネット動画広告配信
  • モフィリア、指先1つで静脈認証
  • 何でもつかむぞ万能ロボハンド 東北大、柔軟に変形
  • フジクラ、伸縮・曲げ自在な電子回路

経営喝!力 ビジネスIT活用index